34話 ユトランド沖海戦 2
※11/21日修正しました
金剛から敵艦を眺めていると2色の水柱が立っているのが見えた。あれは旗艦リユッツオウか?と思っていると第2射目が着弾してカラフルな水柱と閃光が見えた、命中したらしいが2射目で命中出すとはかなり訓練してるなと思ったら敵艦から爆炎が上がりV字型に折れてあっという間に沈んでいった。
どうやら新型徹甲弾の秘匿性能である水中弾効果があったようだ、敵艦の前で水柱を上げたうちのいくつかの弾が着弾の時に砲弾の頭につけた被帽が衝撃で取れて弾体部が水中を直進して水中装甲に命中したようだ。流石に堅牢なドイツの巡洋戦艦も水中部までは重装甲は出来なかったみたいだ。
前世での91式徹甲弾の改良型である1式徹甲弾を元に作った、14式徹甲弾は役に立っているようだ。俺は詰めている後部指揮所から艦橋を見る、あちらではどんな感想を持っただろうか?
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第3者視点
金剛の艦橋では言葉の一つも発せられなかった。皆目の前の光景が信じられなかったのだ。
「金剛・榛名の統制射撃訓練は内地で十分にしたつもりでしたが…」
艦長の言葉は信じられない物を見たという顔をしていた。
「猛訓練を運命の女神が認めてくれたのだろうよ、関係各位に『ただいまの射撃見事なり』と伝えてくれ」
山下の言葉に我に返った艦橋要員たちは在る者は伝声管で、在る者は僚艦榛名に知らせるために信号を送った。そして、次なる目標を定め攻撃を開始するのであった。
金剛・榛名に従うのは矢矧・阿賀野・利根・筑摩の装甲巡洋艦である、これらの艦も主砲の仰角を上げることで射程を延ばしており、現在はドイツ艦隊の3番手の艦を狙って統制射撃(同じ射撃データで同じタイミングで砲撃することである)をしており、すでに数発以上の命中弾を出している、流石に撃沈させるまでには行っていないが艦上は瓦礫の山のようになっており戦闘力を奪い取るのも時間の問題であった。
そして新たに金剛たちの目標となったのはモルトケであったがこれも沈むのは時間の問題となったのであった。
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ライオン艦橋
艦橋ではビーティ提督たちが目の前で起こっていることが信じられないのであった。
「まさかあんなに簡単に沈められるなんて、日本海軍はどんな魔法を使ったのだ?」
艦長がうめくように言うとその言葉をさえぎるように提督が口を開いた。
「大艦隊がこのままで終わる気か?全艦撃ちまくれ、遅れを取るな!」
この激に奮い立った艦隊はドイツ艦隊に突撃を開始する、その光景は後にライオンに同乗していた記者が記事に載せた。
「ここに来て我が騎士たちは一斉に突撃を開始した、それは風車に挑む老騎士の様でもあり我々も無謀であるように感じられたが一つだけ希望はあった、それはパンドラの持つ小箱ではなくトウゴウの弟子たちが連れてきた『コンゴウ』と『ハルナ』であった、一人は我が大英帝国から日本に渡った令嬢で、もう一人は日本で生まれた妹だがこの姉妹の働きのお陰で大艦隊の名誉は守られたのであった」
この記事はイギリスだけでなく世界中に伝えられたのであった。
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ドイツ大海艦隊 旗艦 フリードリヒ・デア・グローセ
艦隊司令長官ラインハルト・シェア提督は報告を聞いて呆然としていた。
「ヒッパー提督は脱出していないのか?」
「リユッツオウの生存者は2名のみです、生存者に提督は居られません」
副官の報告は淡々としていてそれがシェア提督を苛立たせた、だが副官がそうなったのもあまりの衝撃情報の続きのために完全に感情が抜け落ちてしまったのであった。
「残存艦に退避を伝えろ」
「残念ですが逃げ切れないでしょう、せめて我らの撤退の時間稼ぎにしかなりますまい、ジェリコーの艦隊が近づいています、このままではこちらもやられてしまいます」
「なんてことだ、大艦隊の戦艦部隊も近くに来ているとは…」
「報告します!」
そこに見張りを指揮している士官が報告に来る、シェアは悪い予感がした。
「どうした?」
「駆逐艦部隊が接近しております、距離約1万、数は12隻以上です」
「何だと、直ちに迎撃せよ、艦隊は直ちに反転帰投する全艦に伝達せよ、巡洋艦部隊と駆逐艦部隊にも伝達、『我に続け』そして巡洋戦艦部隊だが・・・本隊撤退の盾になってもらう、いよいよとなったら降伏せよと伝えるのだ」
この命令を受けて本隊は反転しつつ近づく駆逐艦の迎撃に当たり、ヒッパー提督を失った巡洋戦艦隊は敵艦隊に対し突撃を敢行いわゆる『死の騎行』を開始したのであった。
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