31話 欧州派遣軍の戦い2
※ 3/19修正
第三者視点
敵前線を突破した第3軍であったがその勢いは止まらない、戦車が空けた穴に歩兵がついていくとその後に続くのは一風変わった部隊がついて行った。
それは工兵第10大隊である。
彼らは戦車の突破した塹壕を戦車の前につけた金属の板で土を落として埋めていく、そして埋めたところから戦闘指揮車や兵士や食料弾薬を積んだトラックが走っていった。そして歩兵たちは用意された自転車に乗ってその後を追っていく。暫く進むと前方で先ほどの戦車や歩兵が待っていた。
彼らは川の手前で止まっていたのであった。直ちに工兵が川に簡易な橋を架けていく、こうしてどんどんと先に進んでいくのであった。
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「前線を突破されただと!」
ソンム川方面のドイツ軍部隊の指揮官は部下の報告を聞いて青褪めた。
このままでは後ろに回られて包囲されてしまう、直ちに彼は突破した部隊を追尾するように予備部隊に伝えたがすでにその予備部隊よりさらに後方に進んでいて追いつくことが出来ないと返事をしてきたのだ。前面にはイギリスとフランス軍が展開していて部隊を下げれば追撃される、しかも偵察部隊の報告では突破した部隊のほうが追う部隊よりも数が多いことが判明しさらに待ち受けていた部隊に予備部隊は散々に打ち破られ逃げ戻ってきた、どうやら多数の新兵器(戦車)を連れてきている事が判明したくらいだ。
そして完全に浮き足立ったドイツ軍は逃げ場を失い降伏を余儀なくされるのであった。
更なる後方からドイツ軍増援部隊が着いた頃には新たに作られた塹壕の戦線が出来ておりそこに篭る日・英・仏の連合軍の前に絶望的な戦を強いられるのであった。
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「東部戦線でも消耗戦になっているのに此方でもか!」
あるドイツの将軍はこう言って嘆いた。
ロシア軍とタンネンベルクで戦ったドイツ軍は2倍以上のロシア軍を各個撃破しようとしたが、その裏をかかれて大きな損害を受けてしまった、その為東部戦線に本来イギリス・フランスに向けるはずだった兵力を向けねばならなくなったのだ。
「このままでは我が軍はすりつぶされてしまう」
「日本は新兵器を繰り出してきたのです、我々もあれを使うべきです」
参謀の進言に将軍は決断する。
「よし!毒ガス散布の準備をせよ!」
こうして毒ガスが使われることとなった。
毒ガスの種類は塩素ガス、その量は170トンに及ぶ。
そうして鉄道を用いて戦場近くまで毒ガスのタンクが運ばれて来た時、それは唐突に起こった。
塩素ガスのタンクが一つ爆発し、巻き込まれたタンクたちが破裂していく噴出したガスが周りを埋め尽くしそこに居た者たちは次々と斃れていった。
遠くからそれを見ていた兵たちはその原因を上空に見出していた。
「あれは何だ?」 「鳥?」 「いや!飛行機だ!爆撃されたんだ!」
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その上空では飛行機の一団が次々と爆弾を投下していた。
二枚の羽を持つ機体は高い爆音を響かせながら飛行している、
薄い灰色の気体に書かれた記章は日の丸、日本空軍の機体である。
「目標のタンクに命中確認、中身はやはり毒ガスか?」
戦果確認をしているのは指揮官機の後部座席に座っている男であった。
「大西中尉殿、情報どおりでしたね」
前席の操縦士が合いの手を入れる。
「全く、ハーグ陸戦条約無視だな、あのような非人道的兵器を使うなどドイツも焼きが回ってるな」
そう言っているのはこの航空機隊の指揮を執っている大西瀧治郎中尉である。
「ですがこの機体が間に合って良かったですな、去年まで試作機を飛ばすのがやっとでしたのに」
「この大戦に間に合わせるために工場も休まずに増加試作を続けたからな中島大尉…いや社長の不断の努力と指揮の賜物だな」
彼らの乗っている機体は15式軽爆撃機、その増加試作機である、製造数はまだ30機しかできておらず今頃は本国で必死で量産している。
現在30機の試作機をすべてこちらに持ってきて今日が初陣である。
製作したのは中島飛行機でもちろん図面は総研からこっそり航空技術本部経由で元海軍大尉の中島知久平社長に渡った物である、エンジンは大阪発動機がこれも倒産したスペインの会社から入手したと触れ込みの図面から起こしたコピー品である。
もちろん出所は譲のチート知識からなのだが。
譲にとっては戦争は様々な要因から技術が爆発的に加速することがあるため今まで小出しにしていた情報をここぞとばかりに流して強引に進めてしまおうとしており今のところはうまく行っているといってよい結果が出ている。
「ふむ?タンクの方はほぼ潰したか?2次攻撃の必要性は無い様だ、引き上げるぞ、又奴らがこんな非人道的な攻撃の準備をしないように偵察は頻繁に行う必要はあるな」
そう大西中尉は結論を出し、部隊は引き上げた。
尤も譲の知る歴史では彼は非人道的な攻撃法を後に推進するのであるがそれを知る者はここには居ない、果たして彼がこの世界でその様な思考に陥るのかは今のところ誰にもわからないのであった。
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