30話 欧州派遣軍の戦い1
※ 3/18修正
第三者視点
時間は譲達が出撃するよりも遡る。
フランス
第三軍は無事にフランスに上陸した、1916年4月のことである。
彼らはイギリス軍と行動を共にすることになり、ある場所に向かうことになった、その地の名はピカルディという。
「日本軍はなかなかユニークな兵器を持って居られますな」
同行していたイギリスの将校が興味深々と言う体で質問してくる。
「高機動車と言います、中々便利ですよ」
日本軍の将校が乗っているのは本来ならばこの時代には存在すらしていない物であった、全長は3メートル足らずで高さが1.5メートル幅が1.3メートルの比較的大きくて太いタイヤが目立つ車であった。もしそこに譲の前世と同じ時代に生きた者であればこういうジープ型車を「ジ○ニー」と呼んだであろう。
もちろん総研が鈴木道雄にこっそりと教えた物でこの車の開発成功と同時に軍での採用が決まり、彼は鈴木自動車工業を立ち上げ量産化を始めて居る後に市販型も作られてまだ悪路の多い日本で重宝されることとなった。
上記に同上のモノ有り
もちろん技術的な問題でエンジンやタイヤなど元々の性能は出せてはいないがこの時点では致し方の無いことであった。
因みにタイヤは内外ゴムと言う会社が軍のタイヤを納品している、耐久性に優れるラジアルタイヤの試作も進めているがまだ十分な性能とコストが出せていないのでバイアスタイヤである。
この高機動車は「試製15年式高機動車(小)」と呼ばれており、軍の中では「小車」と呼ばれるようになった。
小があるということは大もあり欧州には送られてはいないが富士山麓の演習場で現在「試製16年式高機動車(大)」がテスト中である、こちらは豊田佐吉が開発したことになっており豊田自動織機の自動車部(のちのトヨタ自動車)で量産試作が進められており「大車」と呼ばれることになる。
また輜重用に石川島造船所でトラックが生産されており食料や武器弾薬の輸送はすべて機械化されていた。
そして第三軍はイギリス・フランス軍がドイツ軍と対峙している地に着いた。
そこはソンムと言う河の河畔であった。
そこでイギリス軍の後方の予備兵力に当てられることになる。
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1916年6月5日
対峙していた連合国軍と同盟国軍はついに砲火を開いた。
野戦重砲が間断なく打ち込まれその中を歩兵や騎兵が突撃していく、そうはさせじと塹壕から機関銃が撃ちかけられてばたばたと兵士が倒れていく、戦場はまさに地獄絵図となっていた。
消耗激しく予備の第三軍にも前線の一翼を任せることになった。
その第三軍だが他と違う動きを見せていた、自分の陣地より塹壕を敵に向けて掘っていき攻撃を仕掛ける、その掘る速度はどこよりも早かった。
「迫撃砲部隊前へ!」
塹壕の最先端部内から金属製の筒を持った部隊が敵の塹壕方向へ金属の筒を上に向けて構え2脚式の支持架を広げ底盤を地面につけて方向を調整する、調整が終わった物の上の筒に尾部に4枚羽のついた砲弾がセットされる。
「撃ち方始め!」
号令を受けた兵が砲弾を筒の中に落とすと発射音と共に砲弾が山なりの軌道を取って敵の塹壕に向けて飛んでいく、着弾と共に巨大な爆炎が立ち上った。
「チョイ後ろに落ちた!」
観測していた兵の報告に微調整を行い再度発射する、次弾は塹壕に落ち巨大な炎に機関銃陣地が包まれ弾薬が誘爆したのかパンパンと何かが爆ぜるような音がする。
「命中です、機銃沈黙!」
報告を受けた前線の指揮官は双眼鏡で観察しながらつぶやいた。
「焼夷弾の威力は凄いな、あんな目には逢いたくないもんだ」
この焼夷弾はナフサに増粘剤を混ぜてゲル状にした物でナパーム弾と呼ばれることになる兵器であった、この攻撃により三軍の前面のドイツ軍陣地は壊滅し後退することになる。
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敵の前線を抜いた第三軍であったがここでさらに味方も驚く行動に出る。
「敵戦線の綻びに割り込み突き破るぞ!」
司令官の命で金剛たち第2欧州派遣艦隊に護衛されてきた新型兵器がお目見えすることになった。
「戦車隊前に!」
轟音を上げて後方から来たのは無限軌道を付けた箱型の乗り物である、大きい箱の上に砲を装備した砲塔がついている。
「敵前線を突破する、歩兵部隊続け!」
歩兵を後ろに従えて野戦重砲や塹壕からの迫撃砲部隊の支援を受けながら前進するのであった。
対するドイツ軍は見たこともない兵器に完全にパニックに襲われた、本体なら防がなければいけない第2線の塹壕の兵は降り注ぐ砲弾と目の前に迫る戦車たちに戦意を奪われた。
「逃げろ!」
誰がそれを言ったか判らない、その声に弾かれるように皆武器を捨てて逃げ出した。上官の諫止の声も耳に入らずその上官すらも逃げていく。
こうして完全に防御線が崩壊したのであった。
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