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平賀譲は譲らない  作者: ソルト
2章 大正編
30/231

28話 欧州での戦い

※ 3/18修正

第三者視点


1915年4月


 第一欧州派遣艦隊はイギリスに到着した。第三軍はひとまず上陸して長旅の疲れを癒すことにした、はるばる日本から送られてきた援軍にイギリスは歓迎ムード一色であった。


 兵力は10万にも満たない数であったが連合国側としては宣伝の意味合いもあってかつて指揮を執った乃木将軍の勇名を喧伝して士気の向上を図っていたのであった、始まって1年にもならない現在は短期でこの戦争は終わると楽観的な観測もありいきなり最前線に送り出される心配はなさそうであった。


 海軍は駆逐艦部隊による船団護衛任務を担当することになった、ドイツのUボートによる襲撃で民間の貨客船が犠牲になっていたからである。



1915年5月 駆逐艦 桂


 第十駆逐隊を編成する桂、楓、楠、梅の4隻はアイルランド沖で哨戒行動をしていた、この海域でUボートの跳梁が激しいのでイギリスからの依頼を受けてのことであった。


「すでに、この海域で3隻もの船が沈められている、十分に見張りを行いUボートを見つけねばならんな」


 桂の先任将校である小沢治三郎は部下に注意する。


水中探信儀ソナーの方ですが役に立つのですか?」


「技術部が最優先で派遣艦隊の駆逐艦すべてにつけてくれたのだ、佐久間中佐が自ら潜水艦を使ってその有効性を証明してくれておる頼もしい限りだ、まだ英・仏海軍も持っておらんのだからな」


「なるほど、それは心強いですな」


 会話している向こうで 水中探信儀の前でレシーバーをつけたソナー手が何かを見つけたようだ。


「潜水艦らしき物感あり、距離近い!」


 その報告を受けて傍にいた少尉は小沢に報告する。


「対潜攻撃! 対潜迫撃砲用意!」


 小沢から報告を受けた艦長の命で直ちに艦首近くに据え付けられた十三式二十四連装対潜迫撃砲が動き出す。


「方位、距離入力完了、発射よし」


「撃ち方始め!」


「撃て!」


 発射を命じると迫撃砲は一定間隔で発射されて行く、発射の範囲は数十メートルになっていた。全弾着水してしばらくして連続してくぐもった爆発音がして水中が盛り上がる、水中で砲弾が次々と爆発しているようだ。


「水上に油が見えます、あと浮遊物も確認!」


「艦長、撃沈確実です」


 少尉の報告に小沢が補足する。


「うむ、初戦果だな、良くやった」


 艦長の言葉に小沢も厳つい顔を綻ばせて少尉に声を掛ける。


「山口君良くやった、これで護衛任務に目処が立ったよ」


 褒められた山口多聞少尉もにこやかに笑っている。


 こうして護衛任務に就いた駆逐隊は初戦果をあげた。後に沈んだのはU-20と判明するのは大戦が終了してからであった、当時この近くの海域を航行していたイギリス船籍の旅客船ルシタニア号の船長は日記にこう書き記していた。


「……もし遠く日本からの駆逐艦たちが来ていなかったら、間違いなくルシタニアはUボートの餌食となっただろう、彼らのお陰で多くのイギリス人とアメリカ人の命が救われたのだ私はこの事はずっと忘れないであろう」


>>>>>>>>>>>>>>


 暫くして第三軍にも出撃命令が出た。


イギリスからフランスに上陸作戦を行うこととなりその準備に追われていた。


「急に上陸とは英国イギリスさんは焦ってるんですかね?」


 第三軍に所属する第一騎兵旅団長の質問に指揮官が答える。


「士気を上げるためだろう、俺たちが上陸するのは後方もいいところだ」


 地図を指し示して答える。


「この位置では我々は一番後ろもいい所だ、まあ彼らにとっては遠く日本から来てくれたことが重要なんだろう」


「じゃあ後方で観戦ですか?」


「今回は第三軍が乃木閣下の勇名に恥じない部隊であることを英国や仏国に披露する場なんだからな永沼君」


 司令官にそう言われたかつて日露戦争で「敵中横断三千里」を成した永沼秀文少将は当時の旅団長だった指揮官ににこやかに答える。


「なるほど、では派手にやらせてもらいますか」


「うむ、頼んだぞ」


 そう言って第三軍指揮官の一戸兵衛大将は口の端を上げたのであった。


 そして出撃が決まった部隊は続々と輸送船団に乗り込んでいく、それを見た英国イギリスの市民たちは声援を送るのであった。


ご意見・感想とか歓迎です。

あくまで娯楽的なものでありますので政治論とかはご返事できないかも…

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