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平賀譲は譲らない  作者: ソルト
2章 大正編
29/231

27話 八八艦隊と欧州行き

※ 3/18修正

大分県 大神工廠


 大戦が始まって工廠げんばはてんやわんやの騒ぎになった。派遣艦隊に出す艦船を仕上げなくてはいけないからだ。俺も大神で送り出す艦の仕上げをチェックしている。大神工廠作らせといて良かった…

 

 尤もまだこの工廠計画の半分も設備が出来ていない、船渠も船台も半分以下である。現在も呉の水野組が急ピッチで施設の工事をしている。山城クラスの戦艦が余裕で作れる大きさの船渠では派遣艦隊で使う駆逐艦を同時に5隻作っている。


 船台では軽巡洋艦を建造中だ、3500トン級のではなく、最初から5500トン級を作らせている、使い勝手の良くないと分かっているものは最初から作らないよ。最初からあんな艦やこんな艦を作りたいのだが、技術の蓄積がまだなのと今手の内を晒してもしょうがないので前世の物に近くなっている、もちろん見えないところにいくつかの手を加えたけどね。


 とりあえず受け持ちの部分が予定以上の速さで進行してるのを確認して、工廠の外れの区画へ行く、そこにはフェンスで分けられており看板に{総研技術研究所}となっている、表向きには大した研究はされてないことになっていて艦船のスクリューの軽量化(肉抜きによる省資源化)とか船体に付く藤壺の効率の良い落とし方などが公表されている、もちろん評判が悪い物ばかりで肉抜きしすぎで壊れたり、藤壺の付かない塗料を発表した直後に有害物質を使っていることが環境省に見つかってお蔵入りの技術になったりと最近は昼行灯どころかガラクタ屋扱いである。


 あんまり韜晦しすぎると廃止の声が上がりそうなのでそろそろ高性能な物でも発表しようかと考えているがもちろんその代償として生産性が非常に低い仕様にするけどね。


「どうだ? うまく行ってるか?」


 俺は工場の中で溶接作業をしている工員に声を掛ける。


「まあまあです、既存の溶接より強度がはるかに増します、ですがまだ実機に使用するのは早いかと」


「まあそうだろうな、さらに強度と生産性を追及してみてくれ」


「判りました」


 そして、向こう側で発動機エンジンを動かしている一団のところに行く。


「どうだ、丁度いいエンジンはあったか?」


「はあ、あったのですが、三菱や石川島よりも個人の小さな会社のエンジンが一番良いとの結果がでて驚いているところです」


「ほう?どんなところがいいんだ?」


「まず、コンペで出していた条件の小型軽量であること、次に頑丈で壊れない信頼性、最後に馬力で見たのですがともかく軽量の上信頼性の高さがいいですな」


「判った、ではこの会社に頼むとしよう」


 後は量産出来るように金の手当てをしてやるべきだな。研究所で色々指示を出して、俺は東京に戻ることになった。大分から鉄道でものすごく時間が掛かる……


「鉄道も早いところ動いてもらわないとな」


 俺はそう言って溜息をつくのであった。


>>>>>>>>>>>>>>>>


 東京に戻った俺が艦政本部に呼ばれたのは予想した通り{八八艦隊}の計画開始とその第一弾となる戦艦の設計であった、後の「長門」「陸奥」になる予定の艦である。その後に巡洋戦艦を4隻、戦艦を2隻作る予定である、最終的に戦艦8隻、巡洋戦艦8隻を主力に5500トン巡洋艦と駆逐艦を多数作るのが{八八艦隊}計画なのだ。


 こんな数、予算が全然足りないのに如何するのかね?まあ、設計はするけどね、命令だし。


 そんなこんなで最初の戦艦と巡洋戦艦の基本設計が出来たところで呼び出しを受けた、何事かと行って見ると。


「貴様には今度出発する金剛を旗艦とする第二欧州派遣艦隊に乗ってもらうことになる」


「はぁ?」


「海戦の一つでも見れば構想も浮かぶのではないかと言うことだ」


「……」


 嘘だろうと思ったら本当に辞令が出ていた、自分は技術者だと言ったら「お前が設計したんだから面倒見ろ」との事だった、設計したの俺じゃねーし。


 凹みながら横須賀工廠に向かう列車に乗る、ホームで待ってると客車を入替用機関車が押してきて、前から機関車がバックで入構して連結する、おお、いつの間にか自動連結器になっていた。


 島安次郎仕事早いな。


 発車した車窓から沿線で3線軌条の工事をしているのを見かけた、標準軌化も進んでいるようだな。そう思いながら欧州に向かうまでに取り掛からねばならない仕事を考えるのであった。

ご意見・感想とか歓迎です。

あくまで娯楽的なものでありますので政治論とかはご返事できないかも…

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