211話 青と黄色
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再開いたします。
ウクライナ・ソビエト社会主義国 首都 キエフ
キエフ市民にとってそれはいきなり降って湧いた騒ぎであった。
市内の大通りには戦車が配置され政府の建物では激しい銃撃の音が響いた。
しばらくしてラジオからウクライナはソビエト連邦からの離脱と独立を伝える放送が流れたのであった。
建物に掲げられていたソビエト連邦時代の国旗は降ろされ黄色と青の新しい国旗が掲げられる。
「今後はウクライナ語を我が国の正式な国語とする。首都はキーウと呼ぶように」
抑圧されていた市民たちは独立した喜びで大通りを埋め尽くしたのであった。
そしてその波は全土へ広がって行った。
ソビエト連邦 モスクワ 書記長執務室
「なんだと!キエフで反乱だと!どういうことかね?ベリア君?」
「捕虜となっていた帰還兵が中心となってクーデターが発生し行政府を制圧、現在も周辺都市を{侵略}しております」
「なんということだ…」
「同志書記長、このまま反乱がドネツクやハリコフに及べば我が国の工業力が削がれてしまうでしょう」
スターリンの傍に侍る幕僚たちの中から指摘を受ける通りハリコフには戦車を生産しているハリコフ機関車工場があり、ドネツクは石炭の鉱山があり重工業が盛んな都市である。
「同志書記長、直ちに軍を派遣し反乱軍を粛清するべきです。このまま手を拱いていると他の地域も反乱が起きかねません」
「すぐに派遣できる軍はいるのか?」
「極東に派遣する予定だった部隊がモスクワ近郊におります、これを転用しましょう」
「うむ、そうしてくれ」
派兵を主張した幕僚が連絡するために退出すると別の幕僚が口を開いた。
「同志書記長、出撃前に閲兵式を行ってはいかがでしょう、軍の士気も上がり、人民たちの不安も無くなるでしょう」
「ふむ、良い考えだな。準備をしてくれ」
「は!」
閲兵式を提案した幕僚は準備をするために執務室より退出して自分の席に座り電話を掛ける。数回して出た相手に手短に用件を伝える。
「首尾はどうか?」
聞かれて幕僚は短く答える。
「閲兵式を行うこととなった。同志書記長が閲兵される、失敗は許されないぞ」
「承知した、十分な準備を行う、細かいすり合わせはまた行おう」
そうして電話を切った幕僚は口の端に笑みを浮かべながら席を立った。
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ハルキウ州 州都ハルキウ
つい先日まではハリコフと呼ばれていた町はウクライナ語読みのハルキウに改められ表示が順次入れ替えられている。街角には治安維持のためにか戦車が止まっておりソ連の赤い星を塗りつぶし青と黄色に塗り分けたウクライナの国旗がペイントされている。
「接収したハルキウ機関車工場の被害は軽微です、すぐにでも生産を再開できます」
「それは朗報だ、我々にはまだ戦車も砲も少ないからね」
「そうですね、支援の方は大丈夫でしょうか?」
「ポーランド側からとオデーサに物資の方は届くようになっている。クリミアの平定も時間の問題だ。問題は黒海の制海権を維持できるかだ」
「トルコはソ連との関係上こちらに好意的なのが助かりますな」
「早く防衛体制を整えねば、ソ連本国からの出征軍が来ないうちに」
「急ぐように指示を出しておきます」
彼らの机の上にはモスクワで遠征軍の閲兵式が行われるとの記事のあるソ連の機関紙プラウダが置いてあった。
クーデター発生から1か月旧ウクライナ地方はほぼクーデーター勢力が支配し、彼らはウクライナの建国を宣言した。
国連は直ちにウクライナを承認し、国連加盟国も次々と国交を樹立するのであった。
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大分県 大神工廠 総研研究部
大神工廠の端、総研研究部との間の長らく空き地だったところが掘削されている。
「まさか新造戦艦が作られることになろうとは」
譲が首を振りつつ話すと本郷大将がにやにやとしながら話す。
「大和型以来の戦艦建造だ、嬉しいだろう?」
「いやあ、東条首相が苦虫を噛んでいると思うと喜べんなあ」
戦艦は金を食うからなあ、財政が危険域に達して来ているから気が気じゃないだろう。
「まあ、反対は多かったがな、唯これは終戦後を見越した話だから建造は急がない、だからこのドックの完成後に起工することが決まってるんだ。急ぐんなら隣のドッグを開けるか長崎や横須賀でも良い訳だし」
まあそうなんだが22インチ砲(56糎)搭載ってまるであの仮想戦記の戦艦じゃないか。俺はこの話はした事無いんだがなあ。あの故藤本少将が私的に作っていた計画書にあった仕様を見てびっくりしたよ。20万トンクラスの戦艦なんて前代未聞だが、まあ作れるんだろうな。牧野君たちが設計を行っているらしい。
「播磨か…」
「なんか言ったか?」
「いや、何でもない」
名前まで一緒なんて考えないほうがいいな。
「それとウクライナだが無事に独立に成功したそうだ」
「それは良かったな、後は髭親父か?」
「その対策も進んでいる、これから俺も向こうへ行く」
「そうか、いよいよか」
「うむ、これで一段落になればいいな」
「そうだな、そろそろ終わりにしないとな」
いよいよ大詰めだ。
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