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平賀譲は譲らない  作者: ソルト
1章 明治編
23/231

21話  種蒔きと暗躍

6/25日 誤字訂正しました。

追加 表現が適切でない部分を修正しました。


※3/14修正

 第3者視点です


 防衛省総力戦研究所は地味な部署である、世間でもその様な組織があることを知る者は少なく、

同じ防衛省でも「何する部署?」という扱いである、日露戦争の教訓から作られた部署という触れ込みだが行っている内容が非常に地味なのである、戦争が起こった時の人の流れや物の流れの統計を取ったり戦費の使い道や流れを調べて次回の戦争の参考にするという、いかにも地味で暇な部署、というイメージがあった。ゆえに、ここに配属になることは左遷であるという認識が軍の中にはあって、病気療養中とかの理由で配属になっているものさえ居るのである。


 だが、その昼行灯の寄り集まりの部署にある者達が密かに呼び集められていたのであった。


 ある日、多田野益雄は呼び出しの通知を受けた、軍からの物だったのですわ徴兵かと驚いたのだが行き先が総研となっていて困惑した、彼くらいでもそこが暇な部署であると言う認識があるくらい人々にその名は知られていたからだ。


 受付に呼び出しの票を出すと直に小部屋に通された、ドアがものすごく厚くて重いのに驚く益雄、すると後ろから「ようこそ、総研へ。」の声に驚き振り向いた。

そこにはおよそ軍人らしく見えない人物が軍服を着て立っていた。


「あんまり、軍人らしく見えないだろう?良くそう言われるんだ、まあ、技術職なんだからね、職人みたいなもんさ」


「は、はあ?で何故私が呼び出されたんでしょう?」


「うん、君が色々新しい技術の習得に熱心だと聞いてね、実はある技術を研究して欲しいのさ」


「どういう物でしょうか?」


「まあ、これを見てよ」


 そう言って総研の職員は益雄に表紙に{極秘}という赤い判子が大きく見えるように押してある分厚い冊子を渡した。


「じゅ、重要機密ではないですか?」


「まあ、重要だね、情報部から回ってきたものだから」


 そう言いながら益雄に読むことを勧める男であった。益雄は内心でため息をつきながらもページをめくる、しばらく読むとその目は引き付けられてしまった。


「これは? 凄い!」


「だろう?」


「こ、これを私が研究?」


「そうだよ、完成したら軍で採用するから頑張ってね」


 研究の為の資金援助も受けることになり、益雄はこの後クレーン車の開発に没頭することになる。


>>>>>>>>>>>>>>>


 その後密かに市井の技術者や企業が研究所に密かに呼ばれた、山岡孫吉、石川島造船所、豊田佐吉、鈴木道雄、川崎造船所 大隈鉄工所、日本精工、小松製作所、等々である。


 その中で訪れたある人物はある一風変わった物を見せられていた。


「これは発動機エンジンですか?」


「そうだよ、プロイセン(ドイツ)の倒産したメーカーが開発していたエンジンでね、試作まで行っていたんだが資金難でね」


「現在のレシプロエンジンよりもコンパクトで高出力が出せるんですか!」


「面白いだろ、尤も開発に時間が掛かるかも知れないがねえ」


「是非!うちでやらせてください!」


 そう言って設計図を持って帰った人物は苦心惨憺してついに世に送り出すことに成功する。


 そのエンジンの名前はロータリーエンジン、人物は松田重次郎後に東洋工業(MAZDA)を興すのであった。


>>>>>>>>>>>>>>


 児玉源太郎が台湾総督時代に台湾民政長官を務め腹心とされた後藤新平は児玉内閣から引き継いだ伊藤博文の内閣時にも大臣に留任していた、衛生大臣を1年勤めたあと災害対策大臣に横滑りして後任は中村是公になった。後藤は計画をぶち上げるのが得意で「大風呂敷」などと呼ばれたが、後任の中村は台湾時代からの彼の腹心で実務的な人物で、後藤の政策を着実に軌道に載せていく。

 

 児玉内閣から伊藤内閣に代わって1年後に今度は運輸建設大臣となった、もちろん中村がその後に横滑りして仕上げをしていくのであった。


 そして運輸建設大臣になって直に彼はある人物を呼び出した。


「大臣、お呼びと聞きましたが」


「おお、来てくれたか、是非君に研究して欲しい物があるんだよ」


 そうして渡された2種類の書類を見て彼は顔色を変えた。


「鉄道車両の自動連結器化と標準軌化ですか!」


「そうだ、満州と朝鮮半島はアメリカの資本参加で鉄道で繋がった、そしてシベリア鉄道を経由して欧州への道が出来たんだ、だが我が国は狭軌(1067ミリ)であちらは標準軌(1432ミリ)だ。これでは鉄道連絡船で車両を積み込んでもそのまま走らせることはできない」


 後藤の構想は欧州から乗り換え無しで日本まで鉄道で乗り入れると言う構想だったのだ。


「それだけではありませんな、軌間が広くなればより列車は安定し高速で走ることが出来るでしょう」


「うむ、そして自動連結器は今のねじ式のように危険な作業も無くなるし強度も高くなって長い編成の列車も走らせられると聞いたぞ」


 後藤の言葉にうなずく彼に後藤は告げる。


「島安次郎工作課長、君にこの二つの実施に向けての研究を命じる、なるべく早く実現するように」


「はっ」

 

 そして島安次郎の下に連結器の試作品や軌間改変の機材などの情報が集まっていくが当然その裏には総力戦研究所からの情報提供があったのである。

ご意見・感想とか歓迎です。

あくまで娯楽的なものでありますので政治論とかはご返事できないかも…

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