207話 大統領弾劾
非常にお待たせして申し訳ありません。
調子がまだ出ていませんが今後も書き続けていく所存です。
では良いお年を!
12/27 10:00 修正
合衆国カリフォルニア州 サンディエゴ軍港
戦艦モンタナとオハイオはドック入りせずに修理を受けていた。
ドック入りしているところへ日本軍の襲撃があった場合身動きも取れないままに一方的にやられてしまうというのを防ぐという名目であったがドックが修理の必要な艦で埋まっているという現実もあった。
現在はモンタナは工作艦メデューサとプロメテウスに両舷を挟まれた形で修理を受けており、オハイオは同じくデルタとブリアレウスが付けられていた。
「これが新兵器か」
スプルーアンスはモンタナの修理がほぼ終わったとの報告を受け来艦した。戦隊司令のリーやおまけで付いてきた第三艦隊司令長官のハルゼーも一緒である。
「一番砲の修理には時間が掛かるという事で砲塔ごと撤去し、蓋で塞ぎました。代わりにその上に搭載したのがこのテリアです」
説明役のロバート・A・ハインライン少佐が説明する傍らには艦隊防空ミサイルX-RIM2テリアがあった。
X-RIM2テリア(Xは試作品に付けられる記号)
全長 8.2m
翼幅 1.2m
直径 0.34m
弾体重量480kg
ブースター重量584kg
推進方式 固体燃料ロケット
誘導方式 ビームライディング
射程 19000m
射高 12200m
速度 マッハ1.8
「スペックを見ると中々な物だな。こいつがあれば日本軍に遅れはとるまい」
嬉しそうにハルゼーが言うとハインライン少佐がためらいがちに口を開いた。
「閣下、これは未だ試作段階の物でして有効射程は4000mが限界です。それ以上では目標をロストする確率が高いのです」
「なんだって!そんな物どうして採用したんだ?」
「私が推したのだ、現状完成を悠長に待っていられる状態ではない。このまま再度日本軍の侵攻があった場合我々は一矢も報いることなく敗れ去ることになるだろう」
スプルーアンスが答えるとハルゼーは天を仰ぎ、大きくため息をついた。
「閣下は戦艦同士の戦いはもう起こり得ないとお考えですか?」
リーが尋ねるとスプルーアンスは肩を竦めて答えの代わりとした。
「そうなると戦艦同士の砲戦での最後の勝利者は貴官だな、戦史に名前が残るな」
ハルゼーが揶揄うとリーは咳ばらいをして首を振った。戦術上の勝利が戦略上の結果に繋がらぬのであればそれが何の誉になると言うのか、そう言いたげであった。
「現在はこれの小型版に当たるターター(X-RIM24)を小型艦に搭載しております、まだ問題は山積みですが艦隊防空を強化することは出来ました」
ハインラインが指さす先には改装を受けドックから出たばかりのフレッチャー級駆逐艦ヘイゼルウッドが試験航海を兼ねて僚艦と哨戒に出ていくところだった。
「一応は態勢が整ったという所かな? 第三艦隊に回航中の新型空母が入れば一息付けるのだがなあ」
ハルゼーの言葉を最後に彼らは司令部へ戻るのだった。
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「パナマ運河を通過した増援部隊が潜水艦の攻撃を受け、空母タイコンデロガとランドルフが撃沈された。護衛空母のラングレーとカボットもだ。搭載機は空路で送って貰ったので被害は少ないが載せる空母が無くなってしまった。更にフロリダ沖でもバンカーヒルが雷撃を受けて沈んだ。恐らくはドイツのUボートの仕業だろうとのキング長官からの報せが入っている。もはや太平洋と大西洋の間は分断されたも同然だ。合衆国にとって安全な海はもはや存在しない」
司令部に戻ったスプルーアンスらはニミッツから告げられた。
「なんだって! 味方の護衛は何やってたんだ!最新の対潜哨戒部隊だったはずだが?」
「ピケットラインを構成する艦がミサイル攻撃を受けて撃破され、哨戒網に穴が開きそこから潜水艦に入り込まれた様だ。片舷に集中して魚雷を食らってはダメージコントロールも間に合わなかったようだな」
ハルゼーの叫びにニミッツは沈痛な顔をして答えた。
「これでは迂闊に出撃は出来ませんな。このサンディエゴの沖にも潜水艦が潜んでいるかもしれませんから」
スプルーアンスが指摘するとハルゼーはギョッとした顔で振り向いた。
「おい!幾らなんでもここは…」
「可能性はありますな」
ハルゼーの否定に被せるようにリーが応える。
「恐らく我らが探知出来ないだけで彼らは見ていると思います」
「では!何故攻撃してこないのだ!そうすればあっけなくけりが着くのではないか!」
「恐らく彼らはそのような事は望んでいないという事だろう」
ハルゼーの問いにスプルーアンスは答える。
「ニミッツ長官、彼らがここに来ないのはアイゼンハワー閣下が接触した英国特使の講和の打診がある物と思われます」
「レイ、君もそう思うかね、私もそうだと思う。チャーチル卿は我々を滅ぼす事が必ずしも世界の安定に繋がらないと思っているんだろう、そして日本も。知らされた講和の内容もアメリカを追い詰めるものではなかった。大統領が受け入れてくれれば…」
「しかし大統領は徹底抗戦を叫んでいます、どうするのでしょうか?」
「それについては興味深い話が来ている」
スプルーアンスの問いにニミッツは意味ありげな笑いで応えたのであった。
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ワシントンD.C 合衆国議会議事堂 上院
「では賛成多数で大統領の弾劾を承認する」
「弾劾の成立を受け大統領の罷免を決定する」
「続いて次期大統領だが現在の大統領は元々副大統領であった。よって議長の判断で大統領代行を決定する。大統領代行についてはこの時局に鑑みてドワイト・ディビット・アイゼンハワー氏を推薦する」
「賛成多数でアイゼンハワー氏を大統領代行に決定しました」
この地には共和党の議員とワシントンD・Cを退去することを良しとしなかった民主党の議員らが集まっていた。共和党の推薦によりアイゼンハワーが大統領代行に推薦されたが民主党の議員らと上下両院の議長たち(どちらも民主党出身)もアイゼンハワーを支持した。
これはアイゼンハワーが軍人出身で政治的には染まっていなかった事、満州国防衛戦でソ連から防衛を果たした英雄として国民の人気が高いことも判断材料になっていた。さらに英国特使から信じられないような好条件(に見えた)講和条件を持ち帰ったことも支持の主な原因になっている。国民は既に厭戦気分に陥っており(特に北部州)一日も早い講和が望まれていたのであった。
大統領代行就任演説でアイゼンハワーは冒頭こう語った。
「私の最初の仕事は国連軍との休戦協定を結ぶことであります」
こうして国連軍と合衆国は休戦した。
だがこれが終わりとはならなかった。
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あくまで娯楽的なものでありますので政治論とかはご返事できないかも…
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