201話 舞台裏と本命迎撃
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※9月3日話数修正
日本 戦略本部
「今回の仕掛人が判ったぞ」
本郷中将が部屋に入ってきた。
「及川軍令部長に入れ知恵した奴が居た。豊田副武軍令次長が第八艦隊を演習目的で編成して出撃させるようにそそのかし、書類を偽造して防衛省と統帥本部に嘘の報告をさせたのは彼だ」
やはりそうか、及川が一人で考えるとは思わなかったけどやはり実行役がいたか。
「更に豊田に直接作戦を提案した奴も判明した。現在第八艦隊司令部に居る神作戦参謀だ」
「成程、作戦を立ててそれを自分で実行して功を挙げるつもりだったか」
「いやそれがな、本人は本土で吉報を待つつもりだったらしいんだが第八艦隊司令長官に任じられた三川中将の希望だそうだ。作戦を立案した人物に立ち会ってもらわないと困ると言ってな」
それなら理解できる。本来神参謀は後方では大きなことを言うが前線では小さくなっているとの評だった。前世でだが。
「では目論見違いだったわけだ、しかも失敗して大敗という結果ではな」
「被害はそんなに酷いのか?」
「ああ、これは想像以上だったよ」
そう言って第二艦隊から届いたばかりの電文を本郷中将に渡す。
「これは……酷いな」
被害の内訳はこうだった。
沈没 戦艦 伊勢、摂津
巡洋艦 古鷹、妙高、由良
駆逐艦 朝雲、夏雲、長波、大波、清波、百合、紫陽、樅、柿、欅
護衛空母 箕輪、鉢型、大洲
防空艦、打撃艦 13隻
大破 戦艦 山城、日向
巡洋艦 青葉、那智
駆逐艦 刈萱、峯雲、白波
防空艦、打撃艦 3隻
中小破
護衛空母 竹田
駆逐艦 桂
その他 2隻
「全滅判定じゃないか?乗員の被害は?」
「第二艦隊が駆け付けた時に敵が引いたからな。救助活動が功を奏して艦船の被害の割には救助された人数は多い」
総員退艦した艦も多かったようだしな。だが轟沈した艦の乗員は殆ど救助されて無いし、
戦死者は4千人近くになると報告されている。
「いま百武防衛副大臣が及川と豊田を呼びつけている。こっぴどく絞られるだろうさ」
そう本郷中将が吐き捨てるように言う。こちらも同じ思いだ。せめてもの慰みは堀大佐が立てた作戦で太平洋艦隊司令部に痛撃を与えたくらいだろう。
「問題は、本命の対応がうまく行っているかなんだが」
ほんとそれに尽きるよ。
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場所は変わって防衛省副大臣室
「君たちには君たちの思惑があった事なのだろうが、これはれっきとした服務規程違反だ。艦隊を訓練と偽り出撃させ防衛大臣の許可も報告も無しに戦端を開いた。その上での大敗北だ。なにか言いたいことはあるのかね?」
百武副大臣はこの事件の報告を受けた時に非常に立腹しており現在も収まらず非常に腹立たしい思いでいた。
その百武の前で及川は下を向き何も言えない体であったが豊田はそれでも弁明を行った。
「確かに、報告が十分でなかったことは申し訳なく思います。ですが、新編の部隊の演習であったのは事実であります。敵地の近くで行ううち戦闘になったとしてそれは臨機応変な対応が必要で、上級司令部の返答を待っていては戦機を逃すことになります」
「その結果が大敗北か」
「それは現地司令官の判断ミスと言うものでしょう、そもそも…」
「もう良い!」
百武の言葉は大きくはなかった物のその鋭い声に豊田も隣で俯いていた及川もびくりと震えるほどの気迫であった。
「今回の事既に調べがついておる、及川君が黙認し、君(豊田)が神の甘言に踊らされて各部に根回ししたのをな。既に大臣は陛下に奏上されておる、東条首相は机を叩いて激怒されたそうだ」
「なっ!」
「いずれ軍法会議ですべてが明らかになるだろう、首を洗って待つのだな」
その言葉に両名は力を失い下を向いた。
彼らが連れて行かれてから、最後のそして、本命の米軍の攻撃の結果が明らかとなった。
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