200話 ハリケーン作戦その11
6/6一部修正
※9月3日話数修正
戦艦ミズーリ 第5艦隊司令部
司令部は重苦しい雰囲気に包まれていた。
「太平洋艦隊司令部より入電です!」
通信参謀が電文綴を持って駈け込んで来た。直ちに読むように言われ読み上げる。
「敵空襲2波にわたって襲来す、空襲の被害甚大!」
その反応は様々であったが少なくとも好意的な物は一つもなかった。
「機動部隊は?ハルゼー提督の第3艦隊の事は言って来ていないのか?」
スプール―アンスの問いに通信参謀は「いいえ」と答え首を振る。
「そうか、無事だと良いが…」
苦悶の表情を浮かべるスプルーアンスに参謀たちは掛ける言葉が見つからなかった。
>>>>>>>
時間を少し遡る
優位に戦闘を進めていた第5艦隊であったがそこに太平洋艦隊司令部からの至急電が入る。
「敵襲だと?」
「はっ! 敵艦載機の空襲です。襲撃規模から複数の空母が展開していると司令部は見ております」
「第3艦隊はどうしている?」
「サンディエゴへ近づいていますが彼らは敵艦隊を捕捉しておりません、敵は第3艦隊とは反対の方から襲撃したのでしょう」
「だろうな、我々もここでの戦闘を切り上げて向かうべきだろう」
「ですがこのまま行けば敵艦隊を完全に撃滅できます」
「主力艦にかなりダメージを与えたし戦果は十分だろう、このまま深追いしてサンディエゴに攻撃を受け続けるのは良くない」
スプルーアンスの主張が入れられ全軍に引き上げ命令が出されるその直前。
巨大な爆音が響いた。
「何があった!」
スプルーアンスの問いに見張り所と電話で話していた艦長が報告する。
「モンタナとオハイオが……」
>>>>>>
少し前
オハイオの見張り所に居た兵がそれを見つけた。
「ミサイル低空より侵入! 低い!」
レーダーも捕えて居り直ちにデコイが発射される。
「駄目だ! 全く進路が変わらない!」
兵士が叫んだ時そのミサイルは奇妙な動きをした。いきなり上空へ進路を変えたのだ。
「良かった、逸れたぞ」
兵士が思わず口にしたがそのミサイルは上に進んだ後急に下を向いて来た。
「あ…」
兵士が何か言う前にそれはオハイオの第一砲塔の真上に命中して貫通した。その中に装填前の弾薬があった為誘爆が起き、そして同時にモンタナでも同じことが起こっており、その爆発音が前を行くスプルーアンスが座乗するミズーリにも聞こえた。
>>>>>>
ミズーリ 第5艦隊司令部
「両艦共弾薬庫への誘爆は避けられましたが共に一番砲が使用不能になりました」
「そうか、不幸中の幸いだな。追跡を中止して極力ダメージコントロールに徹し、更なる敵襲に備えよと伝えてくれ」
その指示を出し終わった所でサンディエゴへの第2波襲来を聞いたスプルーアンスは僅かな逡巡の後決断した。
「追撃中止、直ちにサンディエゴに向かう、但し、敵襲に最大限注意しながらだ」
「あと一息だと言うのに」 「敵の新手を含めて今倒しておくべきでは?」
参謀たちからはそのような意見が出たがこの時の彼は強硬であった。
「これは我らへの警告だ。自分たちは我々をいとも易く攻撃できる。対抗策は役に立たないぞと言外に言っているのだ」
「それにサンディエゴが手薄なのは間違いない。我々は囮として十分にその任務は果たした、これ以上の損害は部隊の再建に大きな支障が出る」
こうして第5艦隊はその進路を変えたのであった。
>>>>>>>
連合艦隊所属 第二艦隊 旗艦 大和
「敵艦隊、反転していきます」
「どうにか追い払いましたな」
「試作の巡航型噴進弾がうまく動いてくれて良かった。虎の子の2発だったからな」
大和の噴進弾垂直格納発射機より発射されたのはまだ試作名も正式に決まっていない巡航型噴進弾であった。いまだ知識チートの譲を以てしても量産は愚か少量の試作もおぼつかない電子回路を搭載した正に職人の一品物。命中する前のポップアップをさせるのがものすごく難しく技術者泣かせな代物である。
「しかし、司令はやり合いたかったのではありませんか?大和型とモンタナ級、18インチ砲同士の戦いが?」
「松田君、本当は君がやりたかったんではないかね? 今回はあくまでも第八艦隊の救援任務だけだからね。司令長官はわざわざ電文で念押ししてきていたくらいだし、撃ち合うにせよ向こうにはアイオワ級も居るから随伴が駿河型では若干不利になるかもしれないね」
(本当は司令の方がやりたかったんだな…)
大和艦長松田千秋大佐は二艦隊司令角田中将の内心を吐露した発言に噴出しそうだったが表面は繕って発言する。
「では本艦は味方の救助の手伝いに入ります」
そして第八艦隊の救助活動を開始するのであった。
御意見・感想ありがとうございます。
ブックマーク・評価の方もしていただき感謝です。
あくまで娯楽的なものでありますので政治論とかはご返事できないかも…
読んでいただくと励みになります。
現在感想等にご返事するのが遅れております。
申し訳ありません。