20話 海軍卿の驚愕とGWF
※3/14修正
第三者視点
1910年イギリス
ジョージ・サーストンは日本から受注した巡洋戦艦の建造プランを考えていた、尤も基本的には戦艦レシャド5世(オスマン・トルコ発注)を原型としているので、後は巡洋戦艦として改修を行う予定であった。
「譲の奴が送ってきた計画書の内容は…まず砲の最大仰角の変更艦首部の変更ふむふむ、面白いな、あと装甲か…弾火薬庫と主砲周りの装甲強化、ふむこれは判るが水平装甲の強化?戦艦でも75ミリのところを倍以上にしろだと?」
彼は首を傾げるがその後に書かれたことを読んで青褪めた。
「何だと!」
そして直に出かけるのであった。
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「サーストン君、どうしたのだね?君らしくも無い、紳士はいつも落ち着いている者だよ」
「フィッシャー卿、落ち着いていられる状態ではありません!まずはこれをご覧ください」
第一海軍卿(日本で言えば海軍のトップ)であるフィッシャーは髪を振り乱したいつもと様子の違うサーストンを嗜めながら、彼の差し出した書類に目を通した。
「な、なんだって!」
その書面に書かれていることを理解したフィッシャーは大声を出した。先ほどの落ち着きのある英国紳士とはまるで違う態度である。
「サーストン君、ユズル・ヒラガのこのレポートは間違いないのかね?」
「はい!計算しただけですが概ね間違いありません」
「なんてこった!おおっ神よ!」
彼らの驚いた理由は譲が海軍大学を卒業する時に書いたレポートであった。その題は「巡洋戦艦の有効性と弱点、今後の運用と対策」であった。
その後ライオン級4番艦として計画されたタイガーは設計の差し戻しをされ大幅な変更点を持って全く別の艦になってしまった。
そして就役している艦も改装の為にドック入りを進めていたのだが結局間に合わず後に悲劇を招くこととなる。
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「なになに?海軍卿があそこまで慌てた姿を見たのは初めて?なぜあのレポートを見せなかったのかと大学の教授が叱られた?思ったよりも大変なことになってるな」
譲はサーストンからの返書を読みながらお茶を飲んでいる、現在は新型戦艦の建造プランの作成を命じられているところである、それは「山城」になる予定の艦であった。
「山城も主砲が連装6基12門はどうなんだろう?斉発(全部の主砲を一斉に発射する)すると爆炎と煙で視界が取れなくなるしな、あと装甲に重量取られるから排水量がかなりなレベルになりそうだな」
「それに鉄鋼業への梃入れが必要だな、日本製の鋼板では防御力に問題が出そうだ」
譲は問題点を書き記し解決へ向けての資料としていた、彼の目から見るとこの国の基礎工業力の低さが目に付くのである。
「やはり急がなくてはいけないか、時間もそう無いことだし」
彼はそう言って一綴りの書類の束を取り出した。その表紙には「新工廠設置案」と書かれており、二つの場所が設定されていた。
二つの場所が設定されていた。
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第三者視点
アメリカ バージニア州 ハンプトン・ローズ
同じころここを旅立つ大艦隊があった、タフト大統領の見送る中出て行く艦は白く塗られその規模と威容に見送りに来た多くの人々はこの艦隊をGreat White Fleet と呼んだ。
彼らの目指すのは世界一周、その進路上には日本があるのであった。それを知った日本側では歓迎の意を表し日本への寄航を要請し新聞も一面を飾って歓迎する記事を書いた。
だが、一抹の不安もなかった訳でなく、譲が呼ばれたのはそのためである。
「本当にあの艦隊は大丈夫なのかね?」
「大丈夫ですよ、アメリカほどの国がそんな攻め方はしてこないでしょう、まあ来ても返り討ちですが」
「返り討ちか、言うのお」
伊藤博文が言うと譲が答える。
「数は多いですが前弩級戦艦ばかりです、しかも20ノットも出ない艦ばかりですからね、新型艦と水雷艇部隊との連携でどうにかなりますよ、それに彼らが来るのは確かに恫喝目的かもしれませんが、我が国向けではありませんから」
「まあな、馬鹿な事をするからああ言う事になるんじゃな」
「まあ、そうですね」
譲は本当は伊藤がその馬鹿な事に巻き込まれるはずだった。と言うことは口にしなかった、相手も知っていることだからだ。
GWFの目的地は前年国務長官をテロで殺害した犯人の故国、大韓民国であった。
日本で歓待された艦隊はフィリピンから来た陸軍の輸送部隊と合流し、仁川沖に集結、その威容を見せ付けたのであった。
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