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平賀譲は譲らない  作者: ソルト
3章 昭和編
219/231

198話 ハリケーン作戦その9

※9月3日話数修正しました

日本 戦略本部


「スールー海での海戦が終了したようだ。敵の本隊がバリクパパンから北上した英国東洋艦隊と第四艦隊の戦艦部隊に挟まれて降伏を申し出てきたそうだ、最も降伏したのは本隊の護衛部隊のみで兵員輸送艦等はミンダナオ島に向かったそうだ」


「時間稼ぎか」


「そう言うことになるな、降伏を受け入れ武装解除が終わった時にはミンダナオ島へ上陸を終えていたようだ」


 本郷中将が報告書を捲りながら記事の内容を教えてくれる。


「こちらの目的はほぼ達成できたか」


「少しばかり被害が出ているが戦争だからな、こちらの都合良くはいかないだろうさ」


 米軍は囮の別動隊は全滅といってよいほどの被害を受けている。戦艦と巡洋戦艦は沈み、他の艦も大半が沈んだ。一隻いた空母は反転してバタンガスへ逃げこもうとした。かなり後ろにいたようで一部の艦艇が追っかけたが追いつけなかった。その前に第四艦隊の救援を求める電文で向かってきていた潜水艦の魚雷で仕留めたそうだ。


「こちらの損害は四駆の駆逐艦四隻が全滅し、空母飛鷹がほぼ大破判定で内地へ回漕、大鷹が飛行甲板をやられて中破、後は巡洋艦一隻と駆逐艦三隻が小破か」


「今回は敵の囮部隊が良い働きをしたようだ、キャラハンとスコット、両提督共戦死したようだが小澤中将がずいぶん肝を冷やしたようだな」


 報告書を畳んだ本郷中将が俺の顔を見る。


「この戦いは囮部隊がこちらの予測を上回る行動を取ったことが被害の主たるところだ、もっとどうにかできたなんて考えるんじゃないぞ」


「判ってるさ、万が一を考えて配置していた虎の子の潜水艦の秘匿兵器まで投入したんだからな」


未だ量産化の目途が立っていない誘導装置を積んだ新型重噴進弾まで使うことになるとは思わなかった。いかに俺の能力チートを以てしても基礎工業力が追い付いていないのが問題だ。


正直合衆国アメリカの対応の早さには驚いている。報告には現行の誘導噴進弾の弱点を突く妨害装置まで出してきていたからな、どうもお前さんが危惧してたあの連中が絡んでいるようだ。東機関が探り出したところ奴らフィラデルフィアからカリフォルニアに来ているからな。こちらも対策を取りたかったが原爆の件で合衆国にいる機関の人員が足りないんだ」


「まあ、こちらは片付いたが正直な所こっちの方が問題だな。まさかここまで酷いとはな」


「全くだな」


 俺は合衆国西海岸の戦況報告を見てため息をついた。


>>>>>>


 時間は少し遡る。スールー海で海戦が行われていたころの太平洋カリフォルニア州沖では第八艦隊が窮地に追い込まれようとしていた。最もその当事者はいまだその意識は希薄であった。


「敵艦隊を発見、前方11時の方向、距離6万メートル、空母の姿は見えず、戦艦2、重巡洋艦4駆逐艦12隻以上」


 偵察機の報告に第八艦隊は戦闘準備を進めていた。


「長官、戦艦の数の上では我が方が有利です、戦いを有利に進められますな」


 神参謀が三川に進言し三川も頷いた。


「いや、向こうには無傷の機動部隊がいるのだ、それに対してこちらの機動部隊は損害を出している。砲戦中に襲撃を受けたら戦況が逆転しかねないぞ、長官、ここは戦闘は避けるべきでは?」


「いや、ここに来て戦闘を避けるという選択肢はあり得ない、我々が戦果も無しに帰ればどうなるか参謀長は分かっているのか?」


 こう言われてはさすがの大西も反論することはできず、戦端が開かれた。


 双方の距離が5万メートルを切ったところで日本側が先制する。


 打撃艦を中心に対艦噴進弾が発射されていき敵艦隊に向かった。


「着弾の爆発を確認!」


「良し! 主砲有効射程に入り次第、射撃開始!」


 双方の距離が3万メートルに達したところで日本側が砲撃を開始した。この時点ではアメリカ艦隊は全く発砲してこず、第八艦隊司令部は噴進弾による被害が出ているものと思っていた。そして徐々に照準が合っていき主砲の命中を確認する。


「敵一番艦に命中弾!」


「幸先がいいな、先頭の2隻の戦艦を沈めれば我々が完全に有利になる、我が方の戦艦は2隻に集中砲火を浴びせろ」


「敵1番・2番艦、その後の艦も発砲始めました」


「やっと撃ち始めたか、だが数では我々が有利、負けずに打ち返せ」


 そうしていると敵の砲弾が着弾した。艦には命中しなかったがその水柱は大きく第八艦隊の司令部を驚かすには充分であった。


「なんだ! あの着弾の水柱は! なんて大きさだ」


「あれは16インチ砲の物とは到底思えんぞ」


 そう言い合っていると、参謀の一人が血相を変えてやってきた。


「長官、見張り所から報告です。敵の重巡洋艦は戦艦アイオワ級! 前の戦艦二隻は識別表に無い艦で新型と思われるそうです。あの戦艦が大きくてアイオワ級が巡洋艦に見えるとのことです」


「なんだと! そんな馬鹿な! アイオワ級以上の大きい戦艦は作れないはずだ。パナマ運河を通ることができないのだからな」


「ですがアイオワ級よりも艦が一回り大きいのは間違いありません、であればあれの主砲は18インチでも可笑しくはありません」


「先の噴進弾があれだけ命中したんだ! 被害が出ているはずだ! その確認はどうした!」


 血相を変えた神参謀が報告した参謀に噛みついた。


「見張り所からは戦艦の被害を確認できておりません。陣形も乱れておらず影響はなかったものと思わざるをえません」


「なんてことだ、大和と同等の艦2隻とアイオワ級4隻も相手しなくてはいけないのか」


 三川がうめくように言うと大西参謀長が三川に進言する。


「長官! 今からでも遅くありません、反転して離脱すべきです」


「馬鹿言っちゃいかん! 今更敵に背を向けられるか! 後ろから好きなだけ撃たれるわ! 長官、あれだけの噴進弾が命中したのです、向こうは万全ではありますまい。このまま受けて立つべきです」


 神参謀が三川に進言すると三川は頷き、そこにいる皆に言った。


「転進はあり得ない! 我々の力があれば敵を必ず撃破出来る! 全艦にさらなる砲撃を命じたまえ」


 こうして戦闘は激しさを増していくのであった。


>>>>>>>>


太平洋艦隊 戦艦モンタナ


「敵戦艦、こちらに向かってきます。距離は2万5千になります」


「敵はT字砲戦を狙ってくるはず、敵の進路を注視せよ、こちらは同航戦に持ち込む」


 見張り員の報告に静かに答えるのは戦艦部隊の指揮を執るウイリス・オーガスタス・リー少将である。


「ですが、フレアとチャフがあれ程ミサイルに通用するとは思いませんでしたな」


 参謀長が声を掛けると、リーは眼鏡を掛けた顔を上げて答えた。


「スプルーアンスが奔走してくれたお陰だな。我々は万全な状態で敵と相対することができるのだから」


 フレアとチャフを使ったことでリーの部隊は駆逐艦1隻が沈み、軽巡と駆逐艦1隻ずつが戦線を離脱した。だが主力の戦艦には一発も被弾していない。


「司令、ミズーリのデヨ提督より{増速し先陣を務める}と入っております」


「返信しろ、{アイオワ級は先行し敵と同航戦を挑まれたし}とな」


 アイオワ級4隻を指揮するモートン・デヨ提督がモンタナを追い抜き前に出る。


 やがて取り舵を取った日本艦隊に対して、面舵を取ったアメリカ艦隊はさらなる砲撃を交わすこととなる。




モンタナ級戦艦


排水量 基準6万5千トン

全長  281.2m

全幅  38.2m

速力  28ノット

兵装  18インチ47口径3連装 3基9門

    5インチ 38口径 連装 20基

    40mm機関砲 4連装 76門


同型艦  モンタナ

     オハイオ

     メイン

     ニューハンプシャー (建造中止)

     ルイジアナ  (中断後 ルイジアナ級戦艦へ)

 

 

御意見・感想ありがとうございます。


ブックマーク・評価の方もしていただき感謝です。


あくまで娯楽的なものでありますので政治論とかはご返事できないかも…


読んでいただくと励みになります。


現在感想等にご返事するのが遅れております。


申し訳ありません。

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― 新着の感想 ―
[良い点] モンタナ級・・・作ったんだ。それも、18インチ砲タイプ!!!。 いいなぁ。 俳優はミフネ、いつかは戦艦。 味方が勝ち過ぎないのが良いですねぇ。 戦闘に緊張感があります。 新兵器開発の動機…
[一言] あちゃー、史実で米海軍がやったお約束をここでは、帝国海軍がしちゃったかー
[一言] 更新ありがとうございます。 お返事などの、気遣いは無用です。
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