190話 ハリケーン発動 その1
※何とか出来ました。お待たせして申し訳ありません。
千島列島 幌筵島 幌筵航空基地 第五航空団
「全員揃ったな。では始めるぞ。我々は中央司令部の命により新田原基地より此方に急に異動となった。何故北辺の基地に異動したのか不審に思う向きもあると思う、よってこれよりその説明と我々に下された特別命令を伝える」
航空団の司令を務める源田實少将が居並ぶ隊員たちを見回しながら告げる。いつもと違った雰囲気に彼らは身じろぎもしなかった。
「アリューシャン列島伝いに米軍が新型の大型爆撃機を使い攻撃をしてくる可能性が高まったとの情報が入った。既にアダック島やアッツ島に長大な滑走路を持つ飛行場が完成しているとの偵察情報が入っている。米軍の新型爆撃機が工場からロールアウトして訓練をしているとの情報もある」
源田の説明に隊員たちは声も無かった。
「では、その迎撃任務が我々に下ったのでありますか?」
第一中隊長の黒江保彦大尉が尋ねると源田は頷き彼が口にした次の言葉は隊員達に衝撃を与えた。
「この任務は唯の一機も敵の爆撃機を侵入させてはならない。理由は出発前に見たあの映画だ」
「まさか! 米国は原子爆弾を使用するつもりですか?」
「そのまさかだ。爆弾が作られて実験が行われたとの情報も入っている。何としても落とせ。その為に新型機の優先配備が行われたのだからな」
源田の言葉に動揺する隊員たち。「それであの訓練だったのか…」と小声で会話する隊員たちもいた。
「判りました。我々は祖国を守る為に飛行兵になったのです。この身に代えても敵機を我が方へ侵入させはしません」
黒江大尉の言葉に源田は言葉を返す。
「簡単に命と引き換えにするなどど考えるな。敵は物量で攻めてくるのだ。その事もあるから新兵器の投入もしているのだからな」
守りを固める日本に対し米軍の反攻作戦が始まる。
>>>>>
太平洋 ハワイ東方沖
真珠湾を出撃した第八艦隊はアメリカ西海岸へ向かっていた。連合艦隊司令部に宛てた作戦目的には新編部隊であるので訓練を兼ねた哨戒と敵海上兵力に対する威力偵察とされていたが本当の目的は違っていた。
「西海岸へは無補給で往復は出来ますがやはり往路で補給は必要でしょう」
大西新蔵参謀長が発言すると神作戦参謀が続けて発言する。
「そこでタンカーに護衛をつけてこのZ地点で会合し補給を受け西海岸へ向かいます。目標は米軍根拠地サンディエゴ軍港、まず遠距離より噴進弾による攻撃を行い、然る後艦砲を以って敵基地を撃滅します」
自信満々の神に対し大西は若干疑いを持っていた。そんなに敵が都合良く動くだろうか?
「私は状況を鑑み噴進弾攻撃のみにする事も考えるべきかと思います。とにかく太平洋における米国の最後の砦というべき場所、索敵は幾重にも行い慎重を期するべきかと」
「それでは中途半端な成果しか得られません! {虎穴に入らずんば虎子を得ず}増して我ら第八艦隊はそれが出来る編成になっております」
大西の慎重論を神は笑い飛ばした。
「うむ、我らに預けられた兵力は一艦隊としては大きい、それは軍令部の尽力に依るものだ。彼らの期待に応えなければならない」
三川の言葉には二人も頷かねばならなかった。第八艦隊は統帥本部の目をかいくぐる形で編成されておりその規模は国内最大の第二艦隊を数の上では凌駕していた。
第八艦隊司令部
司令部直属
第2戦隊 山城 摂津 日向 伊勢 (司令部旗艦山城)
第5戦隊 妙高 那智
第6戦隊 青葉 古鷹
第5水雷戦隊 旗艦 由良
水雷戦隊麾下部隊
第24駆逐隊 朝雲 夏雲 白雲 峯雲
第28駆逐隊 長波 大波 白波 清波
第115駆逐隊 柿 樅 桂 欅
第125駆逐隊 刈萱 百合 杜若 紫陽 (司令部部隊に一時的に編入)
第200打撃戦隊 200号 201号 202号 203号 204号 205号 206号 207号 208号
209号 (打撃艦200型)
第10航空戦隊 箕輪 鉢形 竹田 大洲 (小田原級護衛空母)
第102防空戦隊 1200号 1201号 1202号 1203号 1204号 1205号 1206号 1207号
1208号 1209号 (防空艦1000型)
別に補給部隊としてタンカー10隻 護衛の哨戒艇部隊が付属
戦艦・重巡は欧州から帰還後補修整備を受けていた物のうち配備されていなかった物を当て水雷戦隊は同じく未配備であった物を掻き集めて新編した物で3桁の部隊は新造された物で欧州戦に間に合わなかった物、護衛空母や防空戦隊も同じであった。
建前上はハワイ攻略に伴い補修等で日本本土に麾下の艦艇を戻している連合艦隊の援護の為とされており、新編の部隊の実戦を伴う錬度向上が謳われているが、指揮系統が連合艦隊麾下で無く軍令部直属の独立艦隊である。それでも連合艦隊側から異議を唱えられれば、統帥本部で問題になるところであったが都合よく木村司令長官が認めたため予てからの作戦を行ったのである。実態を戦略情報本部に知られ統帥本部から横槍が入る事を畏れていたのもあった。
こうして第八艦隊は第6戦隊と水雷戦隊を先行させ、司令部が座乗する旗艦山城と第2戦隊、第5戦隊、打撃戦隊が後を追い。防空戦隊に護られた航空戦隊が後方から支援する形になっていた。
「では、作戦を開始する。麾下の部隊に伝達、{戦機熟し、敵目標を撃滅せんとす、各員の奮闘努力に期待する}以上だ」
再びハワイ近海で戦端が開かれようとしていた。
御意見・感想ありがとうございます。
ブックマーク・評価の方もしていただき感謝です。
あくまで娯楽的なものでありますので政治論とかはご返事できないかも…
読んでいただくと励みになります。
※投稿と感想返しが遅れております、申し訳ございません。