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平賀譲は譲らない  作者: ソルト
3章 昭和編
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186話 非情の決意

カリフォルニア州 サンディエゴ海軍基地


 三人の男たちがデスクに座りミーティングをしていた。


 そこにノックをしてスプルーアンスが入室すると三人は立ち上がり敬礼する。答礼したスプルーアンスは口を開いた。


「座ってくれ、君たちも知ってのとおり太平洋艦隊は出撃する事となった。まだ道半ばだが君たちの研究を生かすことになる」


「残念です、もう少し時間が有ればもう少し物になったのですが」


「相手のあることだ、止むを得んのだよ、ハインライン少佐、それでも幾らかの成果は得られた。後は我々が何とかするしかない」


 スプルーアンスはハワイ沖海戦の後、日本海軍の米軍を凌駕する兵器群について疑問を持ち対策を立てることとした、そこで集められたのがこの部屋に居た三人である。彼らに共通するのはSFサイエンス・フィクション作家であるというところであった。ロバート・A・ハインライン、アイザック・アシモフ、L・スプレイグ・デイ・キャンプ達はスプルーアンスの要請を受けたキング作戦部長の引きでフィラデルフィア海軍工廠から移籍してきたのであった。


「最後に君たちに尋ねたいのは日本は何故あのような兵器の開発に成功していったのかだ。何でもいい、気になった所を教えて欲しい」


 スプルーアンスの問いに対して目を合わせた三人であったがやがてハインラインが口を開いた。


「閣下が我々を連れてきた理由はあの国の兵器が我が国に対して相当進んだ物であるからでしたな。我々も検証した結果、日本には未来から訪れたタイムマシンが存在し、未来の日本人が進んだ技術をもたらしたのではないかという仮説にたどり着きました」


「それは……」


「はい、そうでないと説明がつかないほどあの国の技術は進んでおります、一例を挙げますとこれを見ていただければ」


 そう言ってハインラインはポケットから小型のラジオを取り出す。


「このラジオは従来の物と違い真空管を使っておりません。其の為このように小型で省電力、常識を覆しました」


「SONYというメーカーですがこれは我が国のメーカーではありません、日本のメーカーなのです」


「! 何だと、それは本当なのか?」


「はい、それを知ったときの驚きはいかばかりであったか。この中にはトランジスタと呼ばれる半導体素子が入っております。我が国ではベル研究所が研究していますが未だ量産できていないのですから」


「そして駆逐艦に命中した不発弾の残骸を調べたところ回路には真空管は使われて居りませんでした。もし真空管で作れば回路が重くなりすぎて実用化出来なかった筈です。恐らくはトランジスタを始めとした我々の知らない素子が使われていると我々は結論付けました。噴進弾ミサイルは赤外線探知型で魚雷は音響探知型であることも判りましたがそれ以外の探知方法を持っていても不思議では無いと我々は感じています」


「それはどの様なものかね?」


「画像探知型、カメラに映った画像を検索し目標と判定した物に突っ込む物と電波探知型、これはレーダーと連動して追尾する物ですな」


「その様な物が実現するというのかね?」


「カメラにしても既に存在しておりますし、レーダーも実用化されています。後はそれを組み合わせ、小型軽量化して組み込めるようにするだけなのです。勿論それが一番大変なのですが」


 アイザック・アシモフが口を挟む。


「彼らは通信や偵察にも我々の知らない物を使っている可能性があります」


 そう言って取り出した新聞には{犬、宇宙へ行く}という見出しの新聞であった。


「日本は既に宇宙へ行くロケットを完成させて居ります。このロケットを使い地球を回る人工の星、{人工衛星}を作れば長距離の通信も遥か宇宙から地表を睨む目も作れるという事なのです」


「そうか、ハワイでは上陸部隊と複数の艦隊がうまく連携していた。それは其の技術があってのことだったのか」


 スプルーアンスは海戦の時に感じた、まるで自分たちの行動が遥か上空からまるで俯瞰されているような感じの正体に気付かされた。


「成る程……興味深い話だ。我々には考えもつかない視点からの気付きだな。君たちに来てもらって正解だった。もう少し時間が有れば兵の錬度も対抗策も充実したのだが……」


 スプルーアンスの悔しさを押し殺した言葉に三人は言葉を失った。


「だがやるしかない、現状で我々の役目を果たしてみせる。君たちの働きに報いる為に」


 後にスプレイグは著書の中で語っている。


「私の作品にはタイムトラベル物が多くあるがそれは確実にこの経験が関与している。そして提督スプルーアンスは絶望的な戦場へ赴くファンタジイ作品の勇者のように感じられたのだ」


>>>>>>>>

日本本土 戦略情報本部


 ハワイより堀栄三大佐が戻ってきた。太平洋艦隊迎撃作戦を行う連合艦隊の作戦案を持ってきたのだ。


「状況はあまり良くは有りません」


 冒頭彼はこう切り出した。


「ハワイ開放作戦時の部隊の大半はその後艦の修理や部隊の休養や再編で日本本土に戻っております。代わりに本土に居た再編の終わった部隊と新編の部隊を送っているのですが其方が問題なのです」


「それは錬度が不足しているとかだろうか?」


 俺がそう聞くと彼はかぶりを振って答えた。


「そうでは有りません、その指揮官の中に連合艦隊司令長官を軽んじる向きが見られたことです」


「まさか? きむらの見事な指揮ぶりには皆驚いていたではないか」


「殆どの者たちはそうです、ですが兵学校の上のクラス、特に近い歳の者たちはどうでしょうか? 彼らの中にこう思う者達がいたのです。{俺がやればもっとやれる}とね」


「馬鹿な! 正気なのか?」


 思わず腰を浮かせた俺を本郷中将が制した。


「そんなに熱くなるなよ。問題のある奴らは一掃したがそれはまだ極一部だ。未だに年功序列、学校の席次優先は無くなって居ないのさ」


 言われて冷静になれた。確かによほどの事が無いと今まで続いてきた事は変わらない。随分と変えるために動いてきたが未だ道半ばだと感じさせられる。


「堀大佐、君の事だから何らかの対策はして置いたんじゃないか?」


 本郷中将が気を取り直して明るく言うと、堀大佐も明るく答える。


「ええ、艦隊司令部には策を出しておきました。あちらは主攻・・では有りませんし無理しないようにお願いしてきました」


 流石、安定の堀大佐だった。笑顔も黒く感じるな。


 此方はフィリピンとあいつ(・・・)の問題に注視する事にしよう。



御意見・感想ありがとうございます。


ブックマーク・評価の方もしていただき感謝です。


あくまで娯楽的なものでありますので政治論とかはご返事できないかも…


読んでいただくと励みになります。


※ただいま体調不良の為、投稿と感想返しが遅れております、申し訳ございません。


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