第180話 裏切りの進撃
お断り 昨今小説家になろうにて無断転載される事例が発生しております。
其の為此処にてお断りしておきます。
この作品は 私ソルトが書いたもので小説家になろうにのみ投稿しアルファポリス・ツギクルにリンクが張ってある以外は無断転載になります。
満州国 満州里 満州国国境守備隊
「報告! モンゴルとの国境沿いに武装勢力が出現、装備などからソ連軍と思われます」
「なんだと!そんな筈は無い、我が国とアメリカは同盟国、そしてソ連はアメリカの友好国なのだぞ」
「ですが装備はソビエト軍の物です、それに通信には{突撃}を意味するロシア語が飛び交っております!」
「謀ったな! コミュニスト共め! 司令部に連絡だ、在満米軍にも知らせろ! 其の為に奴らはいるんだろう!」
国境守備隊の戦力では全く歯が立たないソ連軍の進撃であった。
☆
其の頃、満州国に駐留していた米軍の主だった部隊は遼東半島にいた。其の先端部にある旅順要塞の攻略をしていたのだが意図に反して攻略は進んでいなかった。
当初砲兵部隊を配置して山々にあるコンクリート製の堡塁を狙い砲弾の雨を降らせた。日露戦争の時代と違い格段に向上した性能を持つ砲の前にさしもの旅順要塞は丸裸にされ落ちるだろうと思われていたがそれも攻略部隊を前進させたとき間違いだと気がついた。
何処から判らない場所からの砲撃があり、なぎ倒されて行く兵士たち。前進して配置していた155ミリ砲が爆発で横倒しになり兵士を巻き込んだ。慌てて応射するも何処から撃ってきているか判らず命中は期待できない。
「いったい何処から撃ってきてるんだ? 観測班からの知らせはまだか?」
前衛部隊の前進に伴い在満米軍司令部も要塞に近づいていた。
其処へ伝令が駆け込んでくる。
「観測班より通信です。{敵の砲撃は当初の堡塁の位置からではなく偽装された岩の間から出ている。我々は謀られた}と来ています」
「では、あれは全て囮だというのか」
山々に見える破壊された堡塁を指差して指揮官は絶叫する。
「それよりもこの司令部の位置も危険です。奴らは我々よりも遠くまで届く砲を隠し持っていたのです、直ちに後退を……」
その直後激しい砲弾の着弾の音が至近で始まり、やがて司令部を吹き飛ばした。
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日本本土 戦略情報本部
ハワイ開放後の諸々の作業が終わった後ハワイから又本郷中将の操縦する飛行機で帰ってきた。飛行場には本田宗一郎が来ていて無事に帰ってきた機体を見て喜んでいた。同じく同行していた藤沢君に話を聞くと既に空軍や海軍にこの機体をベースにした量産機の売込みをするそうだ。哨戒機・連絡機等使い道は色々ありそうだな。後、中島飛行機がこの機体のターボジェットエンジンに興味を持っているらしい。超大型爆撃機に採用したいそうだ。そう言えばそういう機体の話が来てたな。名前はまだ付いていないが{富嶽}とか付けそうだな。エンジンは中島が自主開発しているレシプロの筈だったが、この先の事を考えると自社でのジェットエンジンの開発では遅れを取ると考えての事だろう。
「戦況のおさらいでもするか」
「はっ、現在連合艦隊は損傷艦を本国へ戻し修理を行っております。陸奥は真珠湾の工廠での応急修理が終わり次第横須賀に回航し本格修理に入ります。連合艦隊司令部は真珠湾にて米軍の動きを監視中ですがサンディエゴに残存艦が帰還した後は此方に対しての動きは見られないとのことです、但し偵察任務に付いていると思われる小艦艇や潜水艦、航空機の活動はあるとの事です」
「帰還した部隊の代わりは本国に待機していた部隊を集成した第三艦隊がハワイに着いて連合艦隊司令部の指揮下に入っております」
「長距離偵察任務についている第六艦隊麾下の潜水艦よりサンディエゴを出た艦隊があるとの報告が入っております。南太平洋艦隊で目的地はサモアを経由してグアムと推定されるとの事です」
「グアム防衛の強化かな?」
「フィリピンへの増援の可能性もありますな、そのフィリピンですが佐伯湾に集めた部隊が上陸してくると思ったようで兵力をバターン半島に集中しています。ほぼ篭城と同じですな。代わりにマニラを無防備都市宣言させて自治政府はそちらに残っているようです」
「此方からは仕掛けていない?」
「此方からは台湾の基地より散発的な爆撃と周辺海域の潜水艦による封鎖をしております」
「早い話が干し殺しさ、食料は自治政府から得られても武器弾薬は消耗していき補給は受けられないんだからな。本国政府が国連との和平交渉に応じていない今はさぞ不安だろうさ」
隣にいる本郷中将が教えてくれた。まあ佐伯湾に居た部隊は一部が台湾へ向かい残りは旅順要塞への増援だった訳で米軍の目をハワイ攻略部隊から逸らす囮役を十分に勤めてくれた。
その後も戦況の話を聞いていると部屋に入って来た若手将校が本郷中将に耳打ちをした。
「ソビエトがロシアに攻撃を開始した。それと満州国にもモンゴルを通って攻め込んだ」
「満州国に? アメリカとは友好関係だったはずだが」
その問に本郷中将はかぶりを振り答えた。
「ソビエトのいや、スターリンは最初からこうする積りだったようだ。アメリカが日本と戦端を開き後戻りできなくなった所で満州国とロシアに侵攻する。日本もアメリカも両国への支援は出来なくなり自分の野望を満たすことが出来ると考えたようだな」
「そんな奴の為に支援をするなんて大統領もいい面の皮だな」
「これで大統領も終わりだろう。蜜月と思われていたソ連が裏切ったのだからな」
ソ連ゲートと言うわけか。
「弾劾裁判でも起こされるかね?」
「まあな、この機を野党となっている共和党が逃すはずもない。それにこの失態だ、与党の中からも大統領を見限る者達が出てくるだろう。其の前に辞任するのが普通だ」
「とはいえソ連は放置は出来んな、欧州側はどうなっている?」
「モロトフ外相がのらりくらりと停戦を引き伸ばしているよ、極東が片付いたら又出てくるつもりだろう」
「では、何とか食い止めなくてはいけないな」
「ま、そっちの方は任せてくれ、取り敢えずは満州とロシアの方の手当てをしておかなくてはな」
「判った、そちらの方は総研の方でやっておくよ」
全く、あの迷惑配管工髭親父は此方の迷惑しか掛けないな。この際だから遠慮は無用でやらなくてはならんようだ。
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満州国 海拉爾駐満米軍基地
「やはり来やがった、共産主義者共め! 待った甲斐があったぞ」
ソ連軍来る!との情報で浮き足立つ者の多い中で逆に喜んでいたのはジョージ・パットン中将であった。彼は事前に陸軍参謀本部作戦部長のドワイト・D・アイゼンハワーから満州有事の際は自由裁量で動いて良いとの言質を得ており早速麾下の軍団に出撃命令を下した。
「閣下、ソ連軍の兵力は総数20万、戦車の数は500両を超える数です」
「落ち着け、数だけでは戦争は勝てんと奴等に教えてやる絶好の機会だ」
パットンの指揮する第三軍団は総兵力13万 戦闘車両600両を持つがそのうち戦車は300両程である。
「とはいえ真正面から戦うつもりもないぞ」
海拉爾を出発した部隊は急進し敵の先鋒をやり過ごして更に進んだ、其の進撃速度は恐ろしく速く、ソ連軍は捉えきれずに後方に回りこまれてしまう。
「よし、やっつけろ、地上から共産主義者どもを追い出してやる!」
パットンの果敢な攻撃によりソ連軍は勢いを挫かれた。
だが、それは局地戦における一つの勝利に過ぎなかった。
其の後、米軍は苦戦の連続に追い込まれるのであった。
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あくまで娯楽的なものでありますので政治論とかはご返事できないかも…
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