19話 金剛はやはりヴィッカースでお願いします
もしもアームストロングで金剛が建造されていたら…
某ゲームや某漫画の金剛も「ワガハイ君」になるのだろうか?
個人的にはあまり見たくないですね。
※ 3/14修正
1910年
二足のわらじ状態で忙しい中、色々な事件や問題に直面した、まず第六潜水艦遭難事件だ、本来なら救出に手間取り佐久間艦長以下全員が殉職するところであった、もちろん手は打ったよ。
試験航海に付き添うのを新造の潜水艦救助母艦「千早」にさせたのだ、もちろん千早のテストも兼ねてたんだが、無事に全員救出できたのは幸運だった。これで潜水艦救助母艦の存在意義も高まったし、訓練に従事する兵の士気も高まるだろう。ちなみに今回は救助した潜水艦が小さかったのでクレーンで吊り上げたが、大型化するのは必至なので深海救難艇の母艦としても使えるようにしてある、最もその救難艇の完成までまだ時間がかかりそうだ。
さらに建造中だった装甲巡洋艦(巡洋戦艦に種別変更された)も竣工し順次就役している、ドレッドノートに準じた艦として認識されているが、実際は水平装甲を強化して特に弾薬庫周りは舷側装甲も厚くしてある改良型だ。
小型の装甲巡洋艦(一等巡洋艦に種別変更)利根も現在海上公試の真っ最中である、何故か俺も乗せられている、もう諦めている、どうせ「お前が設計したんだから」と言われるからだ。現在は公試全力試験中である、最大速力が27.5ノットも出たよ、嬉しい誤算だな、球状艦首にした結果だな。
密かに船舶海洋試験水槽を作らせて試験した甲斐があったよ。ちなみに水槽があるのは海洋工学研究所というところで、これも国が作った物だが軍・学・産共同研究所となっており各種実験の成果は各方面に満遍なく共有することになっている。もちろん裏では総研の下部組織であり、各種実験水槽もチート知識で再現した物である。
利根・筑摩とつけられたこの2隻は主砲配置などは後に出てくる予定の金剛級と同じ配置であり艦首形状以外はミニ金剛と言う艦に仕上がっている、もちろん最終型ではない為艦橋はまだそこまで高くなく、石炭・重油混燃なので煙突も多い。だがこの時代のレベルからすればかなりの高性能艦に仕上がっている。方位盤射撃指揮装置も備えており、先に完成した巡洋戦艦よりも完成度は高い、だがまだ日本は技術的には欧州に及ばないものとされ技術の習得のためにイギリスに巡洋戦艦を一隻発注することになった。
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「最終候補に残ったのはアームストロング社とヴィッカース社か、妥当な所だろうが、君はどちらを推すのかね?」
山本権兵衛は艦政本部長に質問した。
「アームストロングも良い条件を出してきておりますが、ヴィッカースの条件は破格です、是非こちらにされますよう」
「私も現地で好印象を受けました、造船所長も好意的で大変良い条件だと思います」
現地に調査に行った艦政本部の機関大佐も同意見か。まあ、想定内だな。
「ほう、良い条件と言うのは君たちにとってじゃあないのかね?」
権兵衛さんの顔が怖いよ。
「ど・どういう事ですか?」
「調べはすでについておる、ヴィッカースより賄賂を受けたこともな」
それを告げられた2人は紙のように蒼白になった。
「連れて行け!」
憲兵に拘束された2人は「何かの間違いです!」などど叫びながら連れて行かれた。
「全く!我が国の恥を世界中に晒すところだったぞ!」
権兵衛さん怒り心頭だな。
これは実は1914年に起こったドイツのシーメンス社による収賄事件で発覚した案件である、丁度権兵衛さんが総理大臣だったので責任をとって総辞職した「シーメンス事件」の捜査で明らかになった
艦船の発注に関わる収賄事件である、シーメンス事件が発覚して芋づるで見つかったので大きくは書かれていないが○ikiにもちゃんと記されている。
この後仲介した商社の責任者も呼び出されこってり絞られ、ヴィッカース側もこの件での賄賂を返却する代わりに建造代金の大幅な値引き、追加の手直しの無償化など表ざたになる信用失墜の隠蔽の代わりに対価を飲ませることに成功したのであった。
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「計算通りに旨くいったか?」
「まあな、日本は安く最新装備を持った艦を手に入れられて、さらに艦の図面を提供されて同型艦の製作も許す、製作中に技師を派遣して技術習得も許すときた、旨い話しすぎて笑いが止まらないな、権兵衛さんは」
本郷少佐の質問に笑いながら答える、全く簡単に証拠も集まったしな、本郷少佐の組織が探してきたんだが。
「シーメンスにも釘は刺したしな、あれなら収賄は仕掛けてこないだろう、あの方へのメッセージになったろうしな」
本郷少佐の言うあの方とはドイツの皇帝のことである、シーメンスの事件はイギリスの同盟国である日本が海軍力を増すのを嫌ったドイツ皇帝が謀略として仕掛けてきたのだ。
「とりあえずヴィッカースへの仕様書はお前が作れとさ」
「マジかよ?人使いが荒いなあ」
まあ、どうせならこの時代の先端を行く仕様にしてみよう。俺はヴィッカースの主任設計者のジョージ・サーストンが驚くであろうと想像しながら仕様書を書くのであった。
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