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平賀譲は譲らない  作者: ソルト
3章 昭和編
199/231

第179話 ハリケーン

 お断り 昨今小説家になろうにて無断転載される事例が発生しております。






其の為此処にてお断りしておきます。





 この作品は 私ソルトが書いたもので小説家になろうにのみ投稿しアルファポリス・ツギクルにリンクが張ってある以外は無断転載になります。









 アメリカ合衆国 カリフォルニア州 サンディエゴ軍港


 眼前を艨艟たちが進んでいく。彼はそれを無言で見続けていた。


「長官。宜しいのですか?」


 その声に太平洋艦隊司令長官であるチェスター・ニミッツが振り返る。


「レイ、君も見送りか?」


 質問に答えぬ上司を思い第5艦隊司令長官に任じられているレイモンド・スプルーアンスが苦笑交じりで言葉を返す。


「うちに廻されるはずだった艦を見に来ただけですよ。あれがあれば艦隊の再編ももう少し進むんですが」


 それは艦隊の中心を進む真新しい鑑たちであった。


 エセックス級空母、アメリカがこれまでの空母製作のノウハウを凝縮して作られた正規空母である。戦争の足音が近づいてきた時に同時に数隻起工され、戦争開始と同時に量産を命じられたその空母の中で最初に進水したのがエセックスとヨークタウンである。ヨークタウンは先代がハワイ沖海戦で沈んだ後改めてその名を継承したのであった。現在艤装中の艦もそれに倣って失われた艦の名前を引き継いでいる。


 本来ならば竣工して慣熟訓練後第五艦隊に引き渡されるはずであったが南太平洋艦隊のゴームレー中将の元に送られた。更に空母に随伴できる速力を求めたアイオワ級戦艦のアイオワとニュージャージーも其の後に続いている。


「上のゴリ押しだよ、ゴームレーの部隊をグアムまで押し出させフィリピンとの補給線を維持せよとの命令だ。キング作戦部長に抗議したがどうやら大統領の強い意向に押し切られたらしい」


「補給の重大さは判りますがハワイが無い今無理して兵站に負担を掛けるよりフィリピン準州コモンウエルスは自治政府に委ね、軍を撤退させるのも一つの手かと思いますが」


「陸軍が、いやマッカーサーがそれを許さんのだよ、これは政策とかではなく利権の問題なんだ。マッカーサーの一族のフィリピン利権の為に軍を張り付けておかねばならんのだ」


「我が国はいつからそのような国になったのですか?」


「最初からさ、我が国が独立した原因の一つがボストン茶会事件であれも茶の利権が絡んでいるからな」


「何という事だ、その為に失われるのは国民の財産と命なのですぞ」


「我々が出来る事は一日でも早く艦隊を動かせるようにしてハワイに打って出るしかないのだよ」


 そう言いながらニミッツは内心では別の事を考えていた。


(ハワイの事は国連の勧告に従いこの戦時体制を解くべきではないか、まだまだ欧州の戦火はくすぶっているしそれが極東に飛び火しないとも限らないではないか)


 内心の憂いを抱えるニミッツの視線の先には離れていく艦隊の航跡が見えていた。


>>>>>>


南太平洋艦隊 重巡洋艦 サンフランシスコ


「ゴームレー長官、本気なのですか? このフィリピンへの輸送作戦{ハリケーン}は?」


 南太平洋艦隊の参謀長を務めるダニエル・J・キャラハン少将は司令官のゴームレー中将に渡された作戦書を片手に尋ねた。


「本当だ、作戦部長から直々の命令だ。 フィリピンからの要請は連日のごとく送られて来ている。我々はにほんの包囲網を突破してフィリピンへの物資と増援を送る作戦を実行する」


「ですが、2個機動部隊を持つ日本に対抗するには我々の艦隊だけでは危険ですぞ」


「判っている。 それらの対処は太平洋艦隊と、増援部隊が行う。我々はバターン半島とコレヒドール要塞に篭る在フィリピン軍に物資と増援を積んだ輸送部隊を送り込むのが仕事だ」


 疲れたように答えたゴームレーは弱々しい笑顔でキャラハンに言った。


「作戦開始は増援部隊が到着してから決まる。此方はいつでも行ける様に準備を進めてくれ」


 司令官の部屋より下ったキャラハンは考え込んでいた。


(此れは容易ならない作戦だ。ともかくにも艦隊の錬度をもっと上げなくては。ひとまず任務部隊を率いるスコットに相談してみよう)


 アナポリスの同期であるノーマン・スコット少将に会いに行くのであった。


>>>>>>>>


カリフォルニア州 サンディエゴ 太平洋艦隊司令部


「この作戦は危険です、南太平洋艦隊は全滅するかもしれませんぞ」


 ニミッツに普段冷静なスプルーアンスが詰め寄っている。


「判っている、其の為に我々も動く事になっている」


「我々がハワイ奪還をする動きをして陽動を行い其の間に輸送部隊をマニラに送るのですか」


 スプルーアンスに付いて来ていたバークが作戦概要を見て唸る。


「陽動を行うのは良いですがせっかく配属された新鋭空母や戦艦等を失う事に成りかねませんぞ、特に艦載機パイロットはベテランが少なく後半年は練成しないと使い物にならないと報告が入っております。ベテランは優先的に南太平洋艦隊に回されていますから」


 そのスプルーアンスに対してニミッツは心底苦りきった表情で答える。


「虎の子の機動部隊を出すつもりはない。今回は見せ金として使うつもりだ。それすらしたくはなかったが、上からの強い要望あつりょくではな」


作戦部長キングからですか?」


「違う、大統領プレジデントからだよ、海軍にはもう空母はないのか? 造船所に見に行ってみろと反対する作戦部長に言い放ったそうだ」


「それはまた……」


「本作戦でこいつを使う」


 ニミッツの手渡した資料を見てスプルーアンスは絶句する。


「長官、これは……」


「我々は負けるわけにはいかんのだ、だが多くの犠牲を許容できる状況でもない」


「承知しました。出撃準備をいたします」


「済まんが頼むぞ」


「はっ」


 こうして作戦は始められる事となったが、この作戦中に当初ニミッツが心配していた事が現実となる。


それは極東の地で起こった。


ご意見・感想ありがとうございます。





ブックマーク・評価の方もしていただき感謝です。





あくまで娯楽的なものでありますので政治論とかはご返事できないかも…





読んでいただくと励みになります。





※感想返しが遅れております、申し訳ございません。




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