第178話 再編と罠
お断り 昨今小説家になろうにて無断転載される事例が発生しております。
其の為此処にてお断りしておきます。
この作品は 私ソルトが書いたもので小説家になろうにのみ投稿しアルファポリス・ツギクルにリンクが張ってある以外は無断転載になります。
カリフォルニア州 サンディエゴ
合衆国海軍太平洋艦隊は現在此処に司令部を置き再編に勤めていた。
キンメルに代わって司令長官に付いたのはチェスター・ニミッツである。任命された時に幾つかの条件を受けて彼は就任を快諾した。その一つが彼の前にいる男たちであった。
「長官、我々の留任を作戦部長にねじ込んだというのは本当ですか?」
「ああ、そうだ、貴官たちを手放すのは太平洋艦隊の損失だからな」
「ですが我々は敗軍の将です、お立場が悪くなるのでは?」
そう言ってレイモンド・スプルーアンスは首を振った。
「入院しているハルゼーを含め、君たちは査問会の後閑職に廻すというのが最初のプランだったよ、だがそんな事をしたら貴重な水兵たちを生きて連れて帰って来た優秀な指揮官を失う事になる。すでにショート司令官もキンメル長官も敵の虜囚となっている今、罰する者は存在しない」
「再戦の機会を与えていただいた事感謝いたします。この後我々はどうすればよろしいのですか?」
バークの問いにニミッツは視線を海上に向けた。其処には太平洋艦隊の中核を担う新たな艦が集結していた。
「暫くは守勢に回り艦隊の錬度を上げる。スプルーアンス、君は再編した第5艦隊の指揮を任せる。ハルゼーも退院したら艦隊を率いてもらう。バーク、君は第5艦隊の参謀長としてスプルーアンスを支えてくれ」
「承知いたしました」 「お任せください」
彼らの返答を聞き満足そうな顔をしていたニミッツだが彼らが下がった後の顔は険しくなっていた。
(艦隊の錬度が上がる前に出動する事が無ければ良いが。大統領の腹一つだろうが其処が不安だ)
彼はホワイトハウスが拙速な判断をしないように願っていた。
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ホワイトハウス
「大統領、カナダ・オーストラリア両政府からの返答は我が国が国連の勧告に従ってハワイの独立を認めるならば敵対はしないと言っております」
「それではイギリスが、チャーチルが言っている事の写しではないか! なんとかならんのか?」
補佐官の報告に顰め面をして言葉を吐き捨てるルーズベルト大統領。其処に答える一人の人物がいた。
「それならばカナダ国境に陸軍を展開し、圧力をかければよろしい、オーストラリアには海軍が展開するのです。そうすれば大した兵力も無い両国は言う事を聞くはずです」
ヘンリー・スティムソン陸軍長官の発言にルーズベルトが賛意を示そうとすると国務長官が反対する。
「いけません! 圧力を掛ければ両国は感情を悪化させるでしょう、みすみすチャーチル卿の策に嵌ることになります」
「だが此の侭行けばフィリピンが陥落する。マッカーサーは事前の作戦案に沿ってコレヒドール要塞に軍を集結させて上陸するであろう日本軍に備えている。それらに対しての補給や増援を送る必要がある。それに満州もだ、ソ連の支援があればあちらは問題ないが早期に旅順を落とす必要がある。あちらにも援軍を送りたい。太平洋の航行の安全の為にもハワイを早く奪還する必要があるのだ」
「太平洋艦隊は現在再編中で使えないとニミッツ司令官が言っていたと作戦部長から聞きましたが?」
「キングがそう言っていたのは知っているが太平洋艦隊指揮下の艦隊の内南太平洋部隊はゴームレー中将が指揮しており無傷で存在している。これを用いてハワイへの敵の補給を断つ。グアムまで進出させてそこを拠点として作戦行動を取らせる」
ルーズベルトの発言に海軍長官が追従する。
「ハワイを孤立化させて追い込むのとフィリピンとインドシナの我が軍への補給を兼ねてですな」
「満州はソビエトが支援してくれるでしょうか? 国内にいたコミンテルンの連中を一掃したのですぞ、向こうは良く思っていますまい」
国務長官の反対にもルーズベルトは意に介していなかった。
「支援といっても我々の物資の輸送を黙認してもらうだけだ。それに彼らもそろそろロマノフの残党共を片付けたいと思っているのだろう」
ソ連とロシア国境に集結しつつあるソビエト軍の情報はルーズベルトにも届いていた。だが宿敵といっても良いロシアとの決戦を企図しているのだと考えていた。
(本当にそうなのだろうか?もし違っていたら大変な事に……)
こうして国務長官の憂慮も空しく今後の対応は決まったのであった。
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満州国 海拉爾駐満米軍基地
「どうしても動かないのか?」
「ああ、今ここを離れる訳にはいかん」
「本国からは{南下し旅順要塞攻略に参加されたし}となっているのだが?」
「ソビエトの脅威がある以上ここの守りを疎かにはできん、それに機甲部隊が要塞攻略の役にたたないのは欧州で証明されただろう?」
「確かにそうだが……大統領に逆らうと軍にはいられなくなるぞ」
「くそったれな命令を出す大統領なんぞくたばってしまえ!」
「はぁ、しょうのない奴だな。取り合えず本国には適当に報告しておくが、持って一ヶ月位だぞ」
「持つべき物は寛容な上司だな。其の間にコミーの奴らがかかって来れば問題は無い」
「随分分の悪い賭けのようだが棺は担いでやるさ」
「それはありがたい」
そうして陸軍参謀本部作戦部長のドワイト・D・アイゼンハワーは海拉爾を後にした。
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