幕間話18話 魔弾の狙撃手~AKとSVD~
※ 本作品は山口多聞氏の主催する架空戦記創作大会2018秋 投稿作品 (遅刻枠)として投稿しています。
御題の2となります。
お断り 昨今小説家になろうにて無断転載される事例が発生しております。
其の為此処にてお断りしておきます。
この作品は 私ソルトが書いたもので小説家になろうにのみ投稿しアルファポリス・ツギクルにリンクが張ってある以外は無断転載になります。
第二次世界大戦以降最も生産された小銃は何かと聞かれたら大概の軍事関係者はAKファミリーであると答える。これはソビエト連邦から亡命したミハイル・カラシニコフが開発主任となり日本・再興されたロシアで共同開発された一連のアサルトライフルシリーズとなる。
彼の発案したライフルは過酷ともいえる戦場での使用、戦時増産による劣悪な生産体制下でも{使える}事に特化した物であり、実際に戦場での使用実績から、最も兵士に支持された銃と言えよう。
日本では1938年に最初のモデルが作られ三十八式自動小銃(三十八式歩兵銃と混同しない為に三十八自動銃とも呼ばれていた)として正式採用されている。この事に関してある軍事専門家は弱冠19歳のカラシニコフが開発に携わっていたのか疑問視しており、彼の関与は後の改良型からなのではないかとも指摘されている。当時新興国であった新生ロシアに日本政府が配慮して新型銃の開発実績を譲ったのではないかとの説があるが決定的な証拠に欠ける。専門家は未だ公開されていない総力戦研究所通称{総研}の期限付き未公開資料に其の辺りの記述があるのではないかとの指摘がある。(参考までに、次の公開資料は2020年公開となっている)カラシニコフが亡命後一時期日本に居り、総研に出向いたとの資料が存在するからである。
総研については関与した人物が後に歴史上の発明や画期的な商品を開発するというのがこれまで公開された資料から明らかになっている為、カラシニコフが本田宗一郎や井深大のように何からの働きかけを受けていたのではないかと言うのが専門家の意見であり、それに対する異論もあるが大方はその説が有力となっている。
カラシニコフの自動小銃ということでAK38と呼ばれた銃は瞬く間に各国の軍に採用された。フィンランドではサコ社がライセンス生産を行いRK38という名前で自軍で採用したのを皮切りにオーストリア・ポーランド等でも制式小銃として採用され、英軍でもコマンド部隊などで一部採用されてている。中でもフィンランドは生産した物の中で精度の高い物を狙撃銃として使い日本の東京光学(現TOPCON)の高倍率光学照準器を付けてソビエトとの戦争(冬戦争・継続戦争)で使用された。この使い手の一人が後述するフィンランドの英雄シモ・ハウハ(ヘイヘ)である。
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シモ・ハウハは元々猟師であり、ケワタガモを獲る事で生計を立てていた。非常に優秀で多くの獲物を獲って来るので有名であったとされる。
祖国がソビエトに侵略されると判った時には多くのフィンランド人と同じように軍に志願し、其の職業柄狙撃手部隊に配属となった事が彼の才能を開花させた。
彼に関しては御伽噺のようなエピソードが沢山あるが其の事如くが事実であるのが彼を知る者たちを魅了する。曰く、たった一人で敵手ソビエトの12人の狙撃手部隊を返り討ちにしたとか、戦車を繰り出した所砲口を狙撃され破壊されたとか、小高い丘に拠っての防衛戦でフルオートにした銃で瞬く間に数十人の敵兵を薙ぎ倒したとか彼のことを調べた者はにわかに信じがたい話が出てくるが全て証人もいる事実である。
証人の中には当時フィンランド軍に同行していた日本の欧州派遣軍所属の狙撃兵も居りハウハと同じ猟師出身であることから戦闘の合間に一緒に猟に出たりして親交を深めたりした。ハウハの詳しい戦果については専門書を読む事をお勧めする。
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ソビエトとの停戦後再度の戦争(継続戦争)時に投入されたのがSVDである。此れはAKの機構を参考として開発された狙撃銃で(AKとの部品の共通性はないが)カラシニコフと同様にソ連より亡命したドラグノフが設計したのでドラグノフ狙撃銃とも呼ばれている。
狙撃銃として精度を追求したこの銃はこれまでの狙撃可能距離を大幅に伸ばしこれもフィンランドのサコ社でライセンス生産されて欧州各国に供給された。当然ハウハにも渡されこれを駆使する事によって更なる戦果を上げる事となる。
21世紀になった今日でもAKファミリーは改良を重ねて第一線にあり続けている。初期型も世界各地でデッドコピーされた物を含めると5~700万丁が世界に出回っており、特に反政府ゲリラなどが好んで使っていた。
SVDも改良モデルが作られ現在でも狩猟やスポーツ用等にも使われており眼に触れる事の多い銃である。日本の漫画の主人公の愛銃として紹介された為、日本で狙撃銃といえばこの銃の事だと言って良いだろう。
(月刊 世界の軍事 2019年 1月特大号より)
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フィンランド 国防軍本部 会議室
「シモ・ハウハ君だね、私はジェームス・ブラッカリィ、君の狙撃の腕を見込んで仕事を頼みたい」
「……誰を狙撃んだ?」
「こいつだよ」
「こいつは! 本気なのか?」
「ああ・君でないとこの仕事は出来ないな、祖国の為にもなる、引き受けてくれんか?」
「詳細を教えてくれ」
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「SVDを使ってもこの距離は無理だ。半分の距離ならどうにかなるが」
「それでは君が逃げ切れまい」
「祖国の為に成るのなら命を捨てる価値もあるだろうさ」
「判った、それならこいつを使ってみないか? こいつなら最初の場所から狙えるはずだ」
「こいつは……わかった引き受けよう」
「頼む、世界を変える為に、魔弾の狙撃手よ」
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