176話 ハワイの栄光
お断り 昨今小説家になろうにて無断転載される事例が発生しております。
其の為此処にてお断りしておきます。
この作品は 私ソルトが書いたもので小説家になろうにのみ投稿しアルファポリス・ツギクルにリンクが張ってある以外は無断転載になります。
連合艦隊旗艦 斐伊
「巡洋艦ノーザンプトンより通信、{貴艦の提案を受け撤退する}です」
其の言葉を聞いた作戦室の皆の緊張が弛緩した。
「麾下の艦艇に通達、{撃つな、撃っちゃいかんぞ}だ」
「はっ!」
木村提督の言葉に飛びあがるようにして通信士官が飛び出していく。
入れ替わりに草鹿参謀長が入室して木村の横に並んだ。
「いいのか? 空軍基地に待機している母艦航空隊はいつでも出られるが」
「我々の目的は{ハワイ島の開放}だ。目的を達したのに戦いを続けるのは単なる虐殺に過ぎん」
「お前さんらしいな。手配を頼まれていた物は準備できている」
「そうか、済まんな」
「いや、連合艦隊司令長官、貴方にしか出来ない事だ」
そう言って参謀長は長官へ敬礼をした。
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巡洋艦 ノーザンプトン
「そうか、俺も貴官の判断に賛成だ、良い判断だった」
臨時の病室で傷を癒しているハルゼーはスプルーアンスの報告を受けてそう答えた。
「勝手に返答して申し訳ありません」
「指揮権は貴官が持っているんだ、当然の事だ。問題は西海岸まで燃料が持つかどうかだが」
「航海参謀の話では幾つかの艦は燃料切れになるそうです。迎えを頼まなくてはなりません」
「そうか……」
「失礼します!」
其処へ通信参謀が入ってきた。
「どうした?」
「はっ! 実は……」
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デッキに出てきたスプルーアンスは既に水平線に消え行くハワイ島の方を見た。其処には幾つもの艦影が見えていた。
「給油艦ネオショーにプラット、病院船もか!」
出撃前真珠湾に待機していた艦艇がこちらに向かってくる。報告では燃料は満タンで、病院船にはハワイ島での負傷者が乗せられているとの事であった。
「アドミラル・キムラ、敵手なれど見事な振る舞いだ。これが武士道というものか」
バーク中佐がそう言うと、スプルーアンスが答える。
「次は彼に勝ちたいものだな、もう一度戦う機会があればだが」
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日本本土 戦略情報本部
「良いんですか? 敵に塩を送るような事をして」
「現地の判断は尊重しなくてはね。無論同情とか慈悲とかだけで行っているんじゃないよ。捕虜が多いという事は彼らを食わせる為の食料等が要る、それだけで我々の輜重に負担が掛かる。まして負傷者ともなれば病院のベッドも必要だ。そういうのはなるべく向こうに負担してもらわないとね」
「なるほど、ですがこの事をつつく奴が国内に出てきそうですね」
「まあ平出君の所(広報部)に頼んでるから美談に仕立ててくれるだろうよ」
「ああ、彼ですか」
「うん、色々やらかしてくれたからしっかり扱き使って絞らなくちゃね」
伊藤君と話しながら作戦が予定通り終わった事で思わず息を吐いた。これでハワイの開放は成った。後は国連での話に成る。
これでアメリカ、いやルーズベルトはどう出るかな?
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ハワイ開放を受けて国際連盟は直ちに常任理事国による会議を開催、全会一致でハワイ王国の再興と国際連盟への加盟を認めた。そして直ぐに開かれた臨時総会でも賛成多数で認められハワイ王国は国際社会から再興を担保された。
アメリカによる併合時の最後の女王リリウオカラニの縁戚であるカワナナコア家より王が立てられてハワイ王国は王の下、2院政を敷く立憲君主制を敷き憲法を発布した。
更にアメリカ併合を植民地支配の一種として非難しアメリカ合衆国に対して謝罪と賠償を求めた。又真珠湾等の軍施設の過去から遡った使用料を請求した。
そして日本とイギリスとの間に安全保障条約を結び真珠湾の軍港施設を有償で日本に貸し出す事となった。自前の軍が編成できるまでは両国の軍が防衛を代行する事も決められた。
太平洋のパワーバランスは日・英に傾きアメリカは今後不利な状況に追い込まれていくのであった。
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あくまで娯楽的なものでありますので政治論とかはご返事できないかも…
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※感想返しが遅れております、申し訳ございません。
作中の平出君のやらかしとは幕間話 11話 紀元二千六百年特別観艦式 に関してです。