175話 海戦の終結
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この作品は 私ソルトが書いたもので小説家になろうにのみ投稿しアルファポリス・ツギクルにリンクが張ってある以外は無断転載になります。
日本本土 戦略情報本部
ハワイでの大規模な戦闘が終わり局面は掃討戦に移っている。
キンメル直卒の艦隊の敗北でその後は大きな戦闘は起きなかった。結局彼の艦隊は主力の殆どが失われる事となった。
旗艦ノースカロライナとワシントンが殿で残り他の戦艦を逃がす事には成功した。テネシーとコロラドは動きがほぼ封じられた為後は的となり沈んだ。ワシントンは大和の主砲弾が再度後部第三砲塔を直撃したときに弾薬庫に誘爆して最後を遂げた。生存者は絶望的だろうと言われている。ノースカロライナは味方を逃がす為に奮戦し、武蔵の主砲弾を6発食らったところで動けなくなり降伏した。
降伏後やはりキングストン弁を抜いて自沈したのは言うまでもない。キンメル司令長官は負傷していたが脱出して捕虜になったそうだ。
一連の戦闘で戦艦4隻、巡洋艦10隻、駆逐艦18隻が沈んだ。残りも沈みはしていないが破損していない艦は居らず正に満身創痍の状態である。
「此れは日本海海戦に並ぶ大勝利なのでは無いでしょうか?」
陸奥は大破したが辛うじて沈没は免れたし、海戦の最後で土佐が魚雷を二本食らったが、こちらも沈むような損傷ではなく、後方に控えていた工作艦の応急修理を受けている。巡洋艦・駆逐艦も大小破損はしていても沈むところまでは行っていない。大和もワシントンとノースカロライナの主砲弾を11発も受けていたが中破判定で主砲は使える状態である。
「此方の沈没艦は無いのでそうとも言えますね」
そう答えると伊藤少将は怪訝な顔をした。
「まだ、攻撃は終わっていないのですよ」
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敗走の列がハワイを目指していた。どの艦も傷を受けて居ない物は無くひたすらハワイへの進路を進んでいた時にそれは起こった。
戦艦メリーランドの舷側に4本の巨大な水柱が立った。それが合図では無いのだろうが、他の艦にもその柱は次々に立っていった。
「魚雷だ! 潜水艦がいるぞ。待ち伏せだ!」
彼らは全力で回避を命じた。だが見張り員の非情な報告が指揮官たちを揺るがす。
「魚雷が進路を変えて追尾しています!」
「自動追尾魚雷か!」
「こっちに来る、かわせ!」
回避行動も空しく魚雷は戦艦や巡洋艦等の大物を血祭りに上げていった。
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巡洋艦 ノーザンプトン
スプルーアンスの元にキンメル長官の直卒艦隊の敗報が入ったのは全てが終わってからであった。
「では、残存艦は巡洋艦6隻駆逐艦他12隻か」
「はい、キンメル長官はノースカロライナに残られたまま……」
「判った、ありがとう」
スプルーアンスはため息をついた。最悪の事態は予想していた。だが現実に訪れるとそれは酷く精神にダメージを与える。
「彼らとの合流する航路を取る、敵潜水艦がまだ居るかもしれん、対潜哨戒を厳と為せ」
今の所彼らのところには航空機も潜水艦の攻撃も無かった。だが逆に其の事が不安を掻き立てていた。
(日本軍はやる事がちぐはぐだ、戦果の拡大を狙うのなら今襲撃があるはずなのに)
気を抜く事が出来ぬままハワイを目指して進んで行った。
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日本本土 戦略情報本部
潜水艦から襲撃成功の報が入るとそこかしこで歓声が上がった。出撃してきた敵戦艦を全て太平洋に沈めることが出来たのだからだろう。
「てっきり機動部隊を使って止めを刺すと思いましたよ」
伊藤少将が聞いてきたので答える。
「独逸海軍が使っていた群狼戦術の習得の成果も見たかったですしね。それでも撃ち漏らしがあれば出てもらいましたよ」
「これで残存部隊も真珠湾の目の前でお陀仏ですか?」
「さて、其処は現地の連合艦隊司令長官の腹一つでしょう、ですが彼がやりそうな事は想像は付きますが」
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巡洋艦ノーザンプトン
「そうか、キンメル閣下の生死は不明か」
「申し訳ありません」
「貴官のせいではない、貴官がベストを尽くしたのは知っている。彼らに一太刀浴びせられたのは貴官の指揮があってこそだ」
スプルーアンスは、キンメル艦隊残存部隊を率いてきたバークと会っていた。残存艦隊で無事だった指揮官の最高位が彼で在った事が艦隊の人的損害を如実に表している。
彼らはハワイまで後僅かの所で合流が出来たのであった。
「とりあえず真珠湾に帰還するつもりだが……」
表情に暗い翳りを見せているスプルーアンスにバークが怪訝な顔をする。
「何か懸念でも?」
「未だにハワイの司令部と連絡が取れないのだ。此方の呼び掛けにも無しのつぶてなのだよ」
「そんな! あちらも攻撃を受けているのですか?」
「我々を襲った機動部隊は少なくとも2個艦隊8隻の空母を擁しているのに攻撃は一次攻撃のみだった。ハワイへ向かったのかもしれん」
「では空襲で基地が損害を受けていると?」
「軍港がやられているのかもしれん」
「では急がないと」
そして部隊はやっと真珠湾の見える所まで辿り着いた。
「見たところ空襲を受けたようではありませんね、煙一つ上がっていません」
バークが双眼鏡で見ていると見張り員から報告が入る。
「向かってくる艦艇群が居ます。我が軍の艦艇ではありません! 日本海軍です!」
「何だと! どういう事だ!」
「通信が入って居ります。{此方は連合艦隊旗艦斐伊、ハワイ諸島は国連決議に基づき合衆国からの支配から開放した、この上での抵抗は無益である、降伏されたし}以上です」
「何だと! まさか、そんな」
驚愕するバークにスプルーアンスは「そうか、そう言う事か」と呟いた。
「我々は誘き出されたというわけか、敵ながら見事な策だ」
「どういたします?」
バークに尋ねられたスプルーアンスが答えようとした時、通信士官が叫ぶ。
「追伸が入っています。{降伏が受け入れ難いときは撤退されたし。追撃はしない}以上です」
「!」
「そうか、追撃はしないか……」
「司令! このような屈辱受けられません、攻撃しましょう!」
「そうです、見たところ戦艦も居ません、精々巡洋艦と駆逐艦のみの小艦隊です。蹴散らせましょう」
参謀たちが口々に叫ぶがじっとしたまま眼を閉じたスプルーアンスはやがて口を開いた。
「我々は撤退する。西海岸へ向かう」
「司令!」
「我々はもう戦える状態ではない。此の侭文字通り全滅するか捕虜となるかそして逃げろというのであれば選ぶのは最後だ。別に恥でも何でも無い。皆を生きて故郷に帰す事が出来るのだから」
「スプルーアンス司令!」
うなだれる参謀たちを見回してスプルーアンスは言った。
「全ての責任は私が取る。日本軍に通信を頼む」
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