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平賀譲は譲らない  作者: ソルト
3章 昭和編
193/231

174話 ハワイ沖海戦その12

お断り 昨今小説家になろうにて無断転載される事例が発生しております。





其の為此処にてお断りしておきます。




 この作品は 私ソルトが書いたもので小説家になろうにのみ投稿しアルファポリス・ツギクルにリンクが張ってある以外は無断転載になります。





 アメリカ太平洋艦隊第43駆逐隊 旗艦 ウエィンライト


「撤退だと!」


 駆逐隊司令を勤めるアーレイ・バーク中佐は思わず大声を上げた。それを伝える士官は思わず首を竦めて続きを話す。


「はっ、キンメル司令長官は駆逐隊各隊には撤退の援護を命令してきております。具体的には戦艦部隊の撤退を援ける為に敵の足止めをせよと」


「なるほど、我が方の戦艦の速力は敵よりも遅いからな。妨害は必要だろう」


「なお、ワシントンとノースカロライナはテネシーとコロラドと共に撤退を援護するそうです」


「何だと! 司令長官自ら殿を務めるというのか!」


「其の間に巡洋艦・駆逐艦各隊は離脱する戦艦を援護してハワイに向かえと」


「そこまでお考えなのか……」


「どうします?」


「撤退援護はする。だが向かう先はあちらではない、此方だ」


 そう言って指した指の先を見た先任参謀が絶句する。


「攻撃は最大の防御と言うからな、麾下の艦艇に伝えろ、仕掛けるぞ」


「何の為に魚雷を温存してきたんだ? 戦艦に撃ち込む為だろう今やらずしていつやるのか!」


 其の叱咤に彼の部隊は士気を高めて敵戦艦へと向かっていった。


>>>>>>>


日本海軍 第二水雷戦隊 第二駆逐隊 夕立


 第二水雷戦隊は駆逐艦部隊の常に精鋭として戦場に臨んでいた。艦船・人員共に精鋭部隊の誉れも高い。平時は四個駆逐隊が麾下にあり軽巡洋艦が旗艦を勤める。だが今回の作戦では五個駆逐隊が必要とされ第二駆逐隊が増強部隊として付けられている。


 ここまでは数の上では優位な米軍と互角に渡り合っていた。


「司令! 敵部隊の一部が離れました。撤退するつもりでしょうか?」


 双眼鏡で確認していた見張り担当の士官が叫ぶ。確かに隊を組んで砲撃をしている米駆逐艦の一部が離れて行っている。


「ふむ、あのコースならハワイに向かっているとも思えるが……」


第二駆逐隊司令の吉川潔大佐は敵の動向を観察していたが或る事に気が付き大声を上げる。


「第二駆逐隊はあの分離した駆逐艦部隊を追うぞ!」


「撤退する部隊を追撃するのですか?」


「違う! あいつらは狙っている。此の侭では拙い事になるぞ、水雷戦隊司令部に繋げ!」


「はっ!」


 夕立率いる第二駆逐隊は僚艦の村雨、春雨、五月雨を従えて進路を変更した。


>>>>>>>


 ノースカロライナでは参謀長がキンメルに翻意を迫っていた。


「まだ勝負は付いていません、ここで畳み掛ければ敵戦艦を沈めることも可能なのでは?」


「無駄だ、数の優位があればこその勝ち筋だったのだ。向こうの2隻は化物モンスターなのだ。16インチ砲を受け付けぬ装甲と我々の戦艦の装甲を容易に貫く砲、安全距離よりも近づけばそれでも仕留める事が出来るかも知れない。だが其の前に我々の艦が持たない。其の犠牲を織り込んでの数の優位なのだ。数が並ばれた時点で我々の勝ちは無い。君たちは日本海海戦でのロシア艦隊のようになりたいのかね。それよりも今は少しでも兵たちを本国に帰すほうがこの先の為になる」


「はっ!申し訳ありません」


「うむ、ワシントンに連絡せよ、我等で敵戦艦部隊をひきつけるとな。テネシーとコロラドには可能な限りの援護を頼め。いよいよとなったら総員退艦させよ」


 キンメルの覚悟に司令部の皆は敬礼で応じた。


>>>>>>>>


 バークの駆逐隊は戦線離脱すると見せかけて回り込み、日本海軍の戦艦部隊への接近に成功していた。ワシントンとノースカロライナに気を取られていた日本軍の反応は遅れ、理想的な攻撃位置へと着こうとしていた。


「もう少しだ、雷撃戦用意!」 「司令! 左舷より敵駆逐艦デストロイヤー突っ込んできます!」


 見張りの声に双眼鏡を向けたバークはすかさず指示を出す。


「雷撃始めだ!」 「ですが、まだ射程が遠すぎます。命中するかどうか」


「構わん! 魚雷を背負った状態で接近戦は危険だ、撃て!」


 ウエィンライトは魚雷を発射し、僚艦もそれに倣ったが、最後尾の艦が発射する前に敵艦隊からの砲撃が命中し魚雷の誘爆で船体が真っ二つに折れて沈んでいった。


「言わん事ではない、砲戦用意、追いすがる敵艦を打ち払いつつ戦線を離脱する」


 生き残る為のバークの戦いが始まった。


>>>>>>>>>>


 第二駆逐隊 旗艦 夕立


「どんどん撃て! 敵を逃がすな!」


 艦橋では吉川司令が仁王立ちになり指揮を執っていた。


 白露型駆逐艦の一艦として作られた夕立は大和型が両用砲として運用している十二糎速射砲を二基搭載している。其の発射速度は凄まじく、最後尾に居た敵艦をあっという間に魚雷を誘爆させて沈め、追い縋っている。


「敵艦との差が縮まりません、最大戦速を出している物と思われます」


「逃げ足の速い奴らだ、ん? 何だ!」


 吉川の視線の先には進路を代える艦の姿が見えた。


「最後尾の奴……そうか、そう言う事か」


 その艦は追い縋る吉川たちに向けて迎え撃つ体勢を見せていたのだ。


>>>>>>>


アメリカ太平洋艦隊第43駆逐隊 旗艦 ウエィンライト


「ウォーク、敵艦隊に向かっていきます!」


「!」


 バークは顔を歪めた。彼はウォークの艦長が自分たちを逃がす為に殿を買って出た事が判ったからだ。勇敢なインディアン出身の彼ならば行いそうな事であった。


「司令!」


「進路其のままだ」


「了解しました……」


 バークはウォークに向け敬礼した。


 其の時。


「時間です!」 ストップウォッチを持った兵士が叫んだ。


 振り返ったバークは見た。徐々に離れていく敵の戦艦。其の舷側に立ち上がる水柱を。



ご意見・感想ありがとうございます。




ブックマーク・評価の方もしていただき感謝です。




あくまで娯楽的なものでありますので政治論とかはご返事できないかも…




読んでいただくと励みになります。




※感想返しが遅れております、申し訳ございません。




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