173話 ハワイ沖海戦その11
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ワシントンに大和からの砲撃が命中した頃後方の状況はやや日本が不利であった。
陸奥の脱落で戦艦は5隻となり7隻いる米海軍に対して数で押されつつあった。
武蔵の後ろにいた加賀は2隻の戦艦に狙われて命中弾を数発受けていた。
致命傷では無いがこのまま行けば陸奥の二の舞である。その後ろの土佐は狙われておらず無事であったが加賀を援護しようとして敵4番鑑に向けて砲撃を掛けていた。
長門は陸奥が脱落した事で新たに3隻の戦艦より狙われる事となった。既に数発の命中弾を出しており、陸奥の後を追うことになりそうであった。
だがその状況は一気に覆る。
他の戦艦も大和が両用砲で三式弾を使いワシントンの眼を潰したのを知り同じく反撃を開始したのであった。
そしてそれを知りやっと出番を得た者たちもいた。
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重巡洋艦 鳥海
第四戦隊旗艦を努める鳥海に将旗を掲げる栗田健男少将は無力感に苛まれていた。他の巡洋艦・駆逐艦が米軍の同種の艦と戦って居る時、陸奥の脱落を知り僚艦の摩耶と共に長門の後ろに占位して敵六番艦・七番艦に砲撃を浴びせていたが8インチ砲(203ミリ)砲では戦艦の重要防御区画に通用する筈も無い。
目の前を黒煙を上げて戦線離脱していく陸奥を眺めて嘆く。
「くそ! 此の侭ではどうにもならん!」
其の彼に声を掛ける者が居た。
「司令官! 埒が明きません、この距離では駄目です! もっと寄せましょう」
艦長の早川幹夫大佐が声を上げる。
「寄せればまだ手はあります」
「判った。 鳥海は敵戦艦に向け突撃する。面舵一杯!」
距離を詰めている時に大和の両用砲の三式弾による攻撃を見て早川艦長は直ちに主砲の弾種変更を命じる。
一式二十糎速射砲は重巡洋艦用に開発された砲で従来の連装砲ではなく単装砲である。砲の数は減っているが装弾がカートリッジ式で七十発の即応弾が用意されており発射速度は従来砲の三倍以上を誇って居る。そして三式弾に換装して敵六番艦に連続して叩き込み艦上を廃材置き場にしていった。
「距離6千!」
「二式短魚雷 雷撃用意!」
「まさか、対潜兵器が役に立つとはな」
栗田が言うと早川が首を振りつつ答える。
「嘗て積んでいた水上艦用と比べれば豆鉄砲ですよ。潜水艦なら一発で沈められますがね」
会話中に「魚雷発射! 」と復唱する声がした。
「うまく急所に命中してくれと願うしかないか」
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アメリカ戦艦部隊の一番最後方には第三砲塔を損傷したコロラドがおり其の前には艦橋にダメージをうけたテネシーがいた。彼らは優位に戦が進んでいた事もあって鳥海の接近を見落としていた。
気が付いた時には砲撃を受けており途中からの砲撃で艦上構造物に大きな被害を受けてしまう。
しかも旗艦からは敵の一番艦と二番艦を集中して狙うように命令が来た為主砲を巡洋艦に向けることが出来ず、其の間に両用砲はことごとく破壊されて沈黙し敵の更なる接近を許してしまう。
そしてそれは突然起こった。着弾の衝撃と爆音、そして其の後に起こる不気味な振動。
「状況を報告せよ!」
コロラドのCIC(中央作戦室)に其の答えが返ってきた時彼らは絶望に囚われた。
推進器4基のうち、3基が破壊され、舵も効かなくなったとダメージコントロール班からの報告があがってきたのであった。
そして前方のテネシーも同じ状況に陥った事を知らされるのであった。
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ノースラロライナ CIC
「ワシントン敵主砲弾3発命中、重要防御区画を貫通されました。3番主砲塔破損使用不能」
「コロラド・テネシー、敵重巡の攻撃を受けつつあり、推進器破損、脱落します!」
「本艦に敵二番艦からの両用砲の砲撃が多数飛来、爆炎と弾片により艦上構造物に損害多数、左舷両用砲、機銃座使用不能。ダメージコントロール班に多数の死傷者が出ています」
上がってくる報告にキンメルは顔を顰めていた。
「巡洋艦・駆逐艦部隊はどうなっている?」
「敵部隊と交戦中ですが状況は芳しくありません、数の上では勝っているのですが敵の艦隊運動に翻弄されています」
「これまでか……」
うつむいてそう呟くと次の瞬間には屹度顔を上げて命令を下す。
「撤退する」
「司令!」
参謀長が声を掛ける。
「この状態では撤退は至難かと」
「判っている。だが此の侭では敵に艦隊はすり潰される。少しでも多くの将兵を帰さねばならぬ」
「どういたします?」
「先ずは駆逐艦部隊の指揮官を呼び出せ」
キンメルは撤退を決断したが其の実行には困難が待っているのであった。
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