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平賀譲は譲らない  作者: ソルト
3章 昭和編
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171話 ハワイ沖海戦その9

お断り 昨今小説家になろうにて無断転載される事例が発生しております。







其の為此処にてお断りしておきます。






この作品は 私ソルトが書いたもので小説家になろうにのみ投稿しアルファポリス・ツギクルにリンクが張ってある以外は無断転載になります。







「敵艦発砲!」


 キンメルの元に見張り員からの報告が届くや否やノースカロライナの艦長は振り返りキンメルを見た。キンメルが頷くのを見た彼は直ちに下命する。


「砲撃開始! 全兵器自由使用オールウエポンズ・フリー!」


 伝達された命令の元先ず主砲が火を噴く。


「敵弾来ます!」


其の声と同時に巨大な水柱が上がる。


「全弾遠弾です!」


「こちらの砲撃はどうか?」


「着弾まであと10秒……時間です!」


 双眼鏡を構えている士官が答えると同時に敵一番艦の周りに水柱が立つ。


「全弾近弾でした!」


「いきなり挟叉は無いか……」


 キンメルの呟きを聞きながら艦長は声を張り上げる。


「続けて撃て、必ず命中する! 何故なら……」


>>>>>>>>


 大和の艦橋基部にある司令塔は艦の中枢と言うべき場所であり、重要防御区画バイタルパートの中で一番重要な場所に相応しく最上の防御性能を持たされている。


 そこに入った報告は其の中に居た第二艦隊司令部の皆を青褪めさせるものであった。


「敵二番艦が本艦を砲撃しているだと!」


「はっ、我が艦は二隻の艦に狙われていることになります」


「馬鹿な、敵二番艦は武蔵に一方的に撃たれるつもりか?」


「其のようですな、敵も必死と見えます」


 宇垣の呟きに黛参謀が答える。


「彼らにはもう後が無いのです、機動部隊が破れたのは知っているはずですから。自分たちが負けるわけにはいかないとの思いがあれに結びついているのかと」


「だとすれば彼らは{窮鼠}と言うわけだ、天敵である猫すら噛む。そして彼らは鼠ではなく獅子だ。厳しい戦いになるな」


 会話中も砲撃の応酬は続いていた。味方は今だ敵に対して挟叉を出していない。


「大和、敵二番艦に挟叉されました!」


「!」


 顔を見合わせる司令部要員達に更に凶報が入ってくる。


「陸奥に命中弾数発! 速度が低下!」


 声無き悲鳴が司令部に響いた。


>>>>>>


大和両用砲指揮所


「むう、いかんな」


 双眼鏡を構えた老境に入った士官がうなり声を上げる。


「奥田砲長、大和が挟叉されました。砲員を艦内に避難させますか?」


「それどころではない、陸奥がまずいぞ」


 奥田の視線の先には黒煙を上げながら艦列から離れていく陸奥の姿があった。


 この時陸奥は五番目を進んでいたがアメリカ艦隊は其の陸奥に対して五から七番艦までの三隻が砲撃してきていたのだ。


 これはキンメルが事前の打ち合わせで敵の奇数の並びの艦を二隻が狙い撃つというものであったが余った最後尾の七番艦は前の二隻に合わせて撃つ事になり陸奥に三隻の砲撃が集中したのであった。六番艦の長門は陸奥を援護しようと敵六番艦へ猛射を仕掛けていたが間に合わなかった。


 陸奥は挟叉を受けた直後に一番主砲天蓋に命中弾を受けた。対40センチ砲装甲厚は其の砲弾を防いだが主砲の旋回を受け持つバーベットにダメージを受けて旋回できなくなった。


 更に両用砲や機銃座のある艦橋側面に命中しそれらを薙ぎ払われ、三番砲と四番砲の間の甲板に命中し爆圧で三番砲が浮き上がり使用不能にされた。それからは降り注ぐ砲弾に切り刻まれていき弾薬庫直撃の致命傷は無いものの満身創痍となり遂に舵機故障で戦列から脱落していった。


「巡洋艦は何をしているのか? 向こうも苦戦しているのか?」


 巡洋艦部隊は最初戦艦部隊の後ろを付いていっていたが、敵巡洋艦隊との交戦で引き離されていた。駆逐艦部隊の二水戦(第二水雷戦隊)も数で勝る駆逐艦を相手に戦っており此方への援護は期待できない。


(両用砲で砲撃しても敵の装甲を撃ち抜く所か浅い傷しか与えられないだろう、どうすればいい)


 奥田は天を仰ぐ、大和の主砲が火を噴くのが見えた。


(村田も必死に狙っているのだが今だ挟叉に持っていけておらん)


 彼の後輩である村田特務中尉を持ってしてもこの状態である。


 奥田は三等水兵から特務少佐にまで進級した叩き上げで{水兵の元帥}と言われる程の猛者である。第二艦隊では一番長い戦歴を持っており艦砲一筋の海軍生活を送っていた。大和が竣工した時には第二主砲長に命じられ兵を指揮していたが航空機の脅威が言われるようになった為、防空を担う両用砲の指揮官に任ぜられた。砲撃の腕を買われての事であったが今は何も出来ない自分が恨めしい。


 其処に上空に単発の水上機の姿が見えた。敵の弾着観測機の様である。


「両用砲砲撃用意! 弾種三式目標上空の敵水上機」


 砲座に命じたときに頭の中で閃いた。


「……」


「奥田砲長? どうされました?」


「そうか、其の手があった」


「砲長!」


「目標を変更する、いいか目標は……」


 其の命令を受けた兵は耳を疑う事となったのだった。





ご意見・感想ありがとうございます。





ブックマーク・評価の方もしていただき感謝です。





あくまで娯楽的なものでありますので政治論とかはご返事できないかも…





読んでいただくと励みになります。





※感想返しが遅れております、申し訳ございません。


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― 新着の感想 ―
[良い点] ほほう、対空弾で戦艦相手に飽和攻撃ですか! 光学式測距儀や対水上レーダー及び空中線効果の無効化狙いでしょうか? [気になる点] 嘗て日本海海戦の対バルチック艦隊戦では、徹甲弾が敵艦の装甲を…
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