18話 ハルビン駅襲撃事件
※3/14修正
第三者視点です
1906年10月26日
満州 ハルビン駅
今日ここではロシア・アメリカ・日本で会談が行われることになっていた。議題は満州・朝鮮半島の問題について非公式ながら話し合うこととなり南満州鉄道を共同経営しているアメリカ・日本側が特別列車を仕立てロシアの蔵相ココツェフに会いに行ったのである。
事件は、ハルビン駅構内のホームで起きた。到着した特別列車にココツェフが挨拶に赴き、
両国の代表に同じホームに居るロシア側の列車で歓迎の宴席を用意している旨を伝え誘った。
当時ハルビン市内は治安が悪く、ロシアの管理下にあった、東清鉄道のハルビン駅に止まっている列車が一番安全と思われていたのだった。
案内されて列車を出てきた両代表が警備するロシア兵の列を横目に移動を始めた時だった。「パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!」乾いた、だが耳に響く音がホームで響いた。それは警備の兵たちの間より突き出した拳銃から発したものだった、直後、構内は阿鼻叫喚の坩堝となった。
撃たれたのはアメリカ国務省長官 フィランダー・ノックス長官と伊藤内閣で外務大臣を務めていた伊東巳代治である。ノックス長官は3発の銃弾を受け30分後に死亡、犯人の素性を知ると、「馬鹿が、報復だ。」と言ったのが最後の言葉であった。伊東も銃弾を受けたが随行していた護衛が身を挺してかばったので腕にかすり傷だけで済んだ。
直ちに犯人は捕まったが大韓民国の活動家であることが判ると大変な騒ぎになった。
アメリカでは「リメンバー・ハルビン(ハルビン駅を忘れるな!)」との見出しで新聞が号外を出し、国民を憤慨させた。また同年ルーズベルト大統領から代わったタフト大統領は「ドル外交」と呼ばれる武力より経済力を重視した外交を目指していたのだが、民衆の突き上げに苦慮することになる、後任の国務長官になったヘンリー・スティムソンは、大韓民国政府に統治の資格なしとして更なる干渉を主張する、それに対してイギリスは同情はするもののこれ以上の干渉は保護国に対するものを超えるとして自重を説き、日本も、大臣が撃たれた事に対して遺憾の意を表しているが、韓国への干渉は控えたいと発言した。
だが、日増しに高まる国民の声に耐え切れず、タフト大統領は韓国政府に軍の進駐を宣言する、
イギリスも日本もやむなく合意して、仁川に海軍が駐留し、陸軍部隊も駐留した。
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「今回の事件はきな臭いな」
総研の俺の部屋に来た本郷少佐は開口一番そう言った。
「犯人は韓国人だと聞いたが」
俺は前世と同じ日に同じ人物が暗殺を謀ったのに驚いていた、歴史の修正力なのか?だが伊藤博文は護れた、死亡フラグは折れたようだ。
「いや、あの撃ち方じゃ当たらないよ」
「やはりそうか、別の奴の仕業か」
ケネディもそうだがこの手の暗殺劇は真犯人が居たりするんだな。
「じゃあ、誰がやったんだ?」
まさか日本の誰じゃないよな。
「言われてたからな、対象は皆マークしてたんだ、日本側の怪しい奴は今回は動いていなかった、
実行犯の奴はずっと網にかからなかった、当日あの場所にいきなり現れたんだ」
「と言うことは……」
「後ろにはロシアがいるな」
「ロシア側に何の利益があるんだ?」
「ロシアは満州への野望を諦めていない、アメリカにこれ以上入ってきて欲しくないのさ、だから耳目を朝鮮半島に向けさせようとしたのさ」
なるほどな、しかもその手は間違いなく成功している。
「そして朝鮮半島問題でイギリス・日本との仲を裂くのも狙いなんだろうな」
顔を顰めた俺に本郷少佐は苦笑いで続ける。
「そう嫌な顔をするなよ、今回は完全にしてやられたが、目的としてはうまく行ってるんだろう?」
「まあな、証拠は集めたか?」
「ばっちりさ、国務長官に打ち込まれた弾を犯人の銃は撃つことができない。拳銃の弾ではないからな、あれは小銃の物だよ」
「鑑識が間に合ったのか?」
「ああ、あとSSもな」
俺は今回の事件を想定して警察組織に鑑識の設置を説いていた。後は要人警護の部隊の創設だ。この時期は暗殺事件が多い。
「外務大臣を護った護衛はどうなんだ?」
「弾を3発食らったが、防弾チョッキのお陰で重症で済んだよ」
「それは良かった」
その後本郷少佐は集まった証拠をアメリカにリークしてアメリカの怒りがロシアに向くように工作した。
それは図にあたりアメリカはロシアを信用しなくなった。それは後に重大な事件を起すのだが今は語るべき所ではない。
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