166話 ハワイ沖海戦その5
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この作品は 私ソルトが書いたもので小説家になろうにのみ投稿しアルファポリス・ツギクルにリンクが張ってある以外は無断転載になります。
巡洋艦 ノーザンプトン
「提督、一次攻撃隊の回収終わりました。二次攻撃隊との会合ポイントに向かいます」
「判った。どのくらい収容できた?」
「戦闘機5機、爆撃・雷撃機6機のみです」
「少ないな……」
スプルーアンスは海上に不時着する機体と其処から脱出した乗員たちを救う為に動き回る駆逐艦を眺めていた。
レキシントンなど母艦にたどり着いた機体は戦闘機15機、爆撃・雷撃機が3機なので出撃した約160機の内帰還したのはそれだけなのだ。
「ほぼ全滅といって良いかと」
「実際の状況はどうだったのだろうか? マクラスキー大尉?」
スプルーアンスは濡れたフライトジャケットを着替えたクレランス・マクラスキー大尉の方を見やった。
「戦場は地獄でした……我々攻撃隊は敵迎撃機の的確な迎撃を受けました。恐らくレーダーで探知していたのでしょう、戦闘機隊は迎撃機と戦闘になりましたが新型のF6Fをしても彼らの機体の能力は高かった。ですが彼らの技量は高くなかった、そのお陰で辛うじて迎撃網に穴を開け攻撃隊を通すことができたんです。ですが……」
「敵の対空砲火が?」
「そうです、輪形陣に入った途端に味方が落とされて行きました。砲による物ではありません、ロケットです」
「ロケット弾に? 確かにロケット弾は脅威だが……」
「唯のロケットではありません! 奴は追って来たんです! 狙われた機体が旋回するとそれに付いてきてやられるんです」
「自動追尾型なのか!」
「はい、それに多くの攻撃機達がやられました、そしてその後は高射砲です、それも正確に炸裂し味方の損害も……」
「まさか、近接信管!」
参謀長が顔を青褪めさせて口を挟む。
「我が軍も完成間近だと聞いていたがもう実用化していたか……」
呟く様にスプルーアンスが口を開くとマクラスキーはさらに口を開いた。
「それだけではありません、援護のために戦闘機隊が機銃を打ち込もうとした時、敵の機銃座からの射撃が……あれは火の滝でした」
「日本軍は近接戦闘に自信があったのだな、迎撃機の技量が低くとも戦えると踏んで居たんだ」
「恐らくは」
艦橋は異様な沈黙に包まれる。
「恐らくは二次攻撃隊も……」
短いが永遠にも感じられる沈黙を破る。
「搭乗員の救助が終わり次第二次攻撃隊の収容ポイントに向かう」
毅然としてスプルーアンスは命令を発する。
「我々はベストを尽くす、ただそれだけだ」
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空母レキシントン
「ヨークタウンより入電! {敵攻撃隊見ゆ} 以上です」
その通信が届いた時、司令部の誰もがヨークタウンが最後を迎えたのを確信した。
「艦隊に防空陣形を取らせろ、迎撃機はすべて発進! 迎え撃て!」
「各航空隊へ! こちらの示す方位に向かえ! 敵編隊がいる」
レーダーで探知した敵編隊に迎撃に向かう様に無線で指示が送られた。
「敵の規模は判るか?」
ハルゼーの問いにレーダー担当仕官は困ったような顔をする。
「飽くまでも編隊規模から推測になりますが200機近いとだけ」
「そうか、済まなかったな」
報告を聞いて指揮官席に深く座りなおしたハルゼーは傍らの参謀長に尋ねる。
「迎撃機は何機飛ばせたのだ?」
「78機です、他にSBDが24機TBDが18機です、これらは迎撃ではなくハワイ島へ避難させます」
「そうか、よくやった」
「始まったようです」
迎撃機が敵編隊と接敵した。
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「始まったな」
前方の上空で戦闘機同士の戦闘が始まった。絡み合うように飛び交う機体の中から煙や火を噴いて落ちていく物が出始める。
「第四艦隊の連中と一緒にするなよ。此方はソ連やドイツと散々やり合って来てるんだ、錬度が違うんだよ、錬度が」
比較的低空を進む艦上攻撃機部隊を率いる友永丈一少佐はそう一人ごちた。
彼の所属する第三艦隊の航空隊は欧州で戦った搭乗員で占められており機種転換訓練を日本に戻って受けており、機材・人材供に海軍最高峰の錬度を持っている。
「隊長、発射予定地点に達しました。各機安全装置解除、発射準備完了です」
「よし、発射始め」
「撃ッ!」
機体下部に吊り下げられていた新型の三式対艦誘導噴進弾(先行量産型)が切り離される。僚機も次々に同じ様にしていき切り離された噴進弾はロケットモーターに点火され、炎と煙を引きながら目標に進んでいく。
「各機反転、母艦に帰投せよ、当機は戦果確認の為に接近する」
反転していく機体をよそに友永機は噴進弾が進んで行った方へ進んでいく。その上空には援護の戦闘機がいつの間にか四機も付いていた。
「どうだ、見えるか?」 「まだ…なにも…! 前方に閃光と爆炎が見えます! 命中! 命中しました!」
変針した機体の窓から見つめる友永の向こうでは、命中の閃光が次々に見えたのであった。
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