162話 ハワイ沖海戦その3
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この作品は 私ソルトが書いたもので小説家になろうにのみ投稿しアルファポリス・ツギクルにリンクが張ってある以外は無断転載になります。
ハワイ島が混乱の最中にある頃キンメルの艦隊も敵艦隊を捕捉した。発進した偵察機が戦艦を含む艦隊を発見したのだ。
「偵察機によると敵艦隊の戦艦は6隻でその中には例のヤマトとか言う新型が2隻居る、後は重巡8隻と駆逐艦多数に支援部隊らしき小艦隊が後ろに居て軽空母が1隻確認できた」
「戦艦9隻を擁する我が方が圧倒的に優勢ですな、新型のヤマト級が気になりますがこちらにもノースカロライナとワシントンが居ますし補助艦艇も数的に勝っております」
参謀たちの発言を聞いていたキンメルは決断を下す。
「敵艦隊と距離を詰めるぞ、砲戦で雌雄を決する」
「敵の別動隊が我が方の背後に回り込む可能性があります、索敵は引き続き強化しましょう」
「うむ、そうしてくれ、ここを突破してハワイ島に到達しても陸軍航空隊も居るし我が方の要塞もある。飽くまでも主力の戦艦を叩けば奴らの攻勢は潰える、敵の機動部隊が気になるがハルゼーなら何とかするはずだ」
「未だ通信が無いのが気になりますが……」
憂い顔の通信参謀にキンメルは殊更明るい声で応じる。
「無線封止しているからだろう、電波を出して此方の正確な位置を知られたくないんだ、オアフ島の連中も此方に気を遣って電波を出してこないんだろう」
そこで話は終わり艦隊は戦闘準備を進めていく、その頃オアフ島で起こっている事を知る由も無いままに、そしてハルゼーたちの方も決断を迫られていた。
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「何だと! 機動部隊がもう一セット居るだと! 馬鹿な、空母の数が合わないではないか! 情報部の話では日本国内には正規空母は6隻しかいない筈だ」
通信が途絶していた偵察機が帰還した事で混乱が生じていた、追加で送り出し偵察部隊が戻ってくる偵察機と遭遇したのである。偵察機は無線機の故障で通信を送れなかったと報告していたが、後続と出会う頃には回復し敵艦隊遭遇の報告を上げてきていた。その中身である敵艦隊には正規空母6隻が居るという情報は司令部を混乱させた。
ハルゼーが叫ぶと、情報参謀が資料を持って答える。
「所在が判っている限り正規空母は欧州に2隻、これは旧式のアカギ級です、そして欧州から帰ってきたショウカク級が2隻、そして国内に残っていた2隻と新たに竣工した2隻で6隻だと情報にあがってきておりますが……もしかすると」
ちなみに国内に残っていた2隻とは海保のまなづるで米海軍はこれを空母と誤認していた。
「もしかすると?」
「別情報で、日本海軍はショウカク級を量産しているとの情報もありました。それかもしれません」
「だが幾ら何でも総勢12隻になるまで作れまい。どれだけの建造能力が必要になるのだ?それに奴らは未だ2隻のヤマト級とその後継艦も作って居るのだろう?ありえない」
参謀たちの意見は割れた。ハルゼーは信頼できる人物に意見を聞くことにした。
「恐らくはどちらかの艦隊がフェイク(ニセモノ)なのではないでしょうか?」
「フェイクか……」
ハルゼーの質問にスプルーアンスは澱みなく答える。
「敵は我々の攻撃を分散させることを狙っていると思われます、攻撃の的を絞らせず、自分たちの被害を少なくし、攻撃で最大の戦果が出るようにしている、悔しいですが理にかなっています」
「では新たに見つかった部隊は無視し最初の艦隊に2次攻撃隊を送るのか?」
「それも愚策です、後からの艦隊が本物であれば我々は一方的に攻撃を受ける、2次攻撃隊は後からの艦隊に送るしかありません、我々にできる選択肢は非常に少ないのです、1次攻撃隊収容後艦隊はハワイに全速で向かいます、ハワイの防空圏内に入り陸軍航空隊の支援を受けられれば敵を撃退する事も出来ますし、何より奇襲にならないので敵は不利を悟って引くはずです」
「無念だ」
「不利な時に無理をしては傷が大きくなり取り返しのつかないことになります。ここが我慢のしどころですぞ」
「判った。貴官の判断に従おう」
こうして2次攻撃隊は新たに見つかった艦隊に向けて放たれたが其れを見上げながらスプルーアンスは不安を感じていた。
(もしもどちらもが偽物ではないとしたら、我々は……)
その頃合いを見計らったように敵機発見の報告が入るのであった。
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飛鷹戦闘機部隊隊長兼子大尉は列機が落伍無しで後に続いているのを確認し直して前を飛ぶ2式艦偵が翼をバンクさせるのを見た。それは前方に敵がいる事を意味している。
「前方同位に敵迎撃機だ、行くぞ!」
そう言ってスロットルを開き機体を加速させ増加タンクを切り離す。彼の動きに後続の味方機も続き戦闘が開始された。
戦闘機が米軍の戦闘機部隊と交戦を始め、空いた防空網から艦上爆撃機が侵入する。
「敵空母視認!」
敵戦闘機を突っ切った先には対空砲火が打ち上げる砲弾の爆発による大きな花が咲いていた。
「突っ込むぞ!」
突撃する爆撃隊を視界の隅に置いて兼子大尉は敵機を追い求める。
(未熟者ばかりの航空隊だ、無理はするなよ)
飛鷹型で構成される第4艦隊の搭乗員はまだ新人が多い。
(それでもやらねばならん、せめて犠牲は最小限に……)
纏わりつく敵機を落としふと見ると爆撃機たちは機体下部に下げていた物を切り離していた。離れたそれは細長い筐体後部からロケットの噴射を行い敵艦隊に向けて飛んでいく。
「戦闘機隊は、離脱する爆撃機を援護しろ!」
空対艦誘導噴進弾が命中したのは彼らが離脱を開始した後であった。
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