161話 ハワイ開放作戦2
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陸軍を指揮する司令部が攻略され降伏したことでハワイの基地は統一した防衛戦が出来なくなった。通信も阻害され状況が判らず同士討ちを始める部隊もいる始末であった。
そしてオアフ島北東部のビーチの沖に連合艦隊司令長官直率のハワイ攻略本隊が到着した。
「長官、航空隊は制空権の確保に成功、敵航空基地は沈黙しました。特戦群は陸軍本部を制圧、司令官は降伏しました」
「上出来だな、揚陸艦に直ちに上陸作戦の発動を命じろ」
「了解しました」
命令を受け強襲揚陸艦から次々と超特大発が降ろされ陸に向かっていく、それらには兵員や車両、重火器などが積まれており次々と上陸していく。回転翼機も往復し兵員を降ろしていった。
これに対して沿岸警備に付いていたアメリカ軍部隊はそれに気が付き増援を求めるも通信手段を失っていた。
「くそっ! 無線が繋がらん、ノイズばかりだ」 「電話も通じません! 」
止む無く伝令を出したがその伝令が味方の下に着く頃には警備隊は壊滅し上陸の方は終わっていた。
「前進せよ!」
上陸部隊は戦闘車両を先頭に前進を開始した。
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連合艦隊旗艦 斐伊
旗艦の艦橋では司令長官の木村を始めとした連合艦隊司令部の面々が控え双眼鏡を使い揚陸する味方を見ていた。
「敵方の抵抗は終わったようです、橋頭保の周りは完全に制圧しました」
副官の報告に頷く木村であったがある一言は忘れなかった。
「上陸部隊には非戦闘員に対する暴力や略奪などは行わないように、捕虜も国際法に準じて丁寧に扱うように」
「はっ! 各部隊に厳命いたします」
「頼みましたよ。まあ何とか被害も無く上陸に成功した。敵の攻撃も覚悟したが先行した特戦群がうまくやってくれたようだな」
「まあ、米軍も我々がハワイ占領までするとは考えていなかったのもありますな」
参謀の一人が言うと他の者たちも頷いた。
「ですが敵からすれば詐欺の被害にあったようなものですな、我々は単冠湾を出た時には僅か二〇隻にも満たない数だったのですから」
草鹿参謀長が首を振りつつ苦笑すると堀栄三参謀が苦笑しつつ答える。
「敵がこちらの陣容を調べているのは判っていましたからな、陸戦兵力を用意していなかったのでハワイは航空攻撃のみと向こうは考えた、その為に島嶼防御が疎かになった。佐伯湾に揚陸部隊が集結していたのでフィリピンへの上陸作戦があると思わせた訳ですよ」
「相手の目をそちらに向けつつ兵力は他所から持って来る訳だ」
木村長官が笑いながら言う。
「作戦を聞いたときは驚いたが合流地点に着いて揚陸部隊が集結していたのには感動したよ」
戦前にあらかじめ建造していたTS型輸送船をカナダに送って置き現地で特設工作艦を使い強襲揚陸艦に改装する。兵員は欧州の第三軍から交代のため日本に戻した事になっている二個師団を当てていた。彼らはカナダ兵を迎えに行くイギリスの輸送船に便乗してカナダに渡った後大陸を横断しバンクーバー郊外で休養・再編を行い待機していたのであった。
その為日本を出た時には旗艦斐伊以下護衛艦十六隻しかいなかった攻略本隊は合流した時には強襲揚陸艦二十隻、護衛空母二隻、大型輸送艦二十隻を含む八十隻を超える大艦隊になっていた。
アメリカは英連邦が当初参戦しないという情報を信じていたためカナダ側の警戒が薄くこの状態には気が付かなかった。
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ハワイの各基地は完全に孤立していた、オアフ島以外の基地も通信手段が失われて居たため動きが取れずにいた所に空襲を受ける事となった。
「どうなっているんだ、敵は何処だ?」
このような会話が各基地で話されていたその時突然通信が復活する。
「こちらはハワイ方面陸軍司令部司令官のウォルター・ショートだ。既に司令本部は日本軍によって陥落した。これ以上の戦闘の継続は無意味だ、戦闘を中止せよ」
「何だ! なんかのジョークか!!」
基地では喧々諤々の騒ぎになった。その中でも通信は続く。
「既に日本軍の主力部隊はオアフ島に上陸しており基地の幾つかは陥落している。制空権も完全に失われ攻撃を受け続ければ基地要員は壊滅的被害を受けるだろう。多くの兵を預かるものとしてそのような事は避けたい。日本軍は人道的な対応をすると約束した。抵抗せずに武装解除に応じて欲しい」
この放送があった後殆どの基地が武装解除に応じた。太平洋艦隊の根拠地であるハワイは後方基地であるとの認識が強く、陸戦兵力の侵攻に対しては対応が不十分であった。要塞はあったがあくまでも敵の艦隊の迎撃用であり懐に入られては無力であったのだ。
その中でもゲリラ戦をしようとする者がいたが密かに監視していた現地工作員たちが行動を捕捉しており鎮圧されて行くことになる。
真珠湾の港湾施設も制圧されてここにハワイは{解放}される事となる。
その間にハワイ近海では艦隊同士で激戦が繰り広げられていた。だがその結果を島の者たちが知るのはもう少し後のことになるのであった。
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