156話 誤算
※5/13 一部付け足しました。
※ 再修正しました
お断り 昨今小説家になろうにて無断転載される事例が発生しております。
其の為此処にてお断りしておきます。
この作品は 私ソルトが書いたもので小説家になろうにのみ投稿しアルファポリス・ツギクルにリンクが張ってある以外は無断転載になります。
太平洋艦隊旗艦 ノースカロライナ
日本が宣戦布告した同時刻キンメルの座乗する戦艦ノースカロライナは僚艦であるワシントンやペンシルバニア・アリゾナ等の戦艦を中心とする艦隊を編成しハワイから西方に離れた海域に居た。
「日本は予定通り侵攻してくるのか?」
キンメルの問いに参謀がフリップを持って答える。
「日本艦隊が択捉島の単冠湾に集結しているのは確認されています。正規空母6隻と戦艦部隊が其処から出航した事も判明しております」
「同時に九州にも大規模な艦隊の集結が確認されています。こちらはフィリピンに向う部隊かと思われます」
「そしてハワイ攻撃部隊はこの海域に出現すると言うわけだ」
「流石に日本本土からハワイは遠い、燃料の問題もあり奴等の航路も絞られて来ます。もし迂回をするにしてもハルゼー提督の機動部隊が網を張っていますので問題はありません」
「うむ、各員の日頃の訓練を生かせば我が方の勝利は間違い無い、やつらは我々が真珠湾を出てここに居るのを知らないのだからな」
キンメルの自信も頷ける。彼の指揮する太平洋艦隊は戦艦8隻航空母艦6隻が配備され補助艦の数は200隻を超えるのである。彼は勝利を信じて疑ってはいなかった。
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水平線が白み始め夜が明けつつあった。
「索敵を厳にせよ、レーダーから目を放すなよ」
レイモンド・スプルーアンスはハルゼーの指揮する艦隊に属する第5巡洋艦戦隊の司令官として重巡洋艦ノーザンプトンに将旗を揚げていた。重巡洋艦4隻の小部隊であるが艦隊の前面に展開して守りを固めていた。
「索敵機上空を通過します」
見張員の報告に頷きながらスプルーアンスは自分の進言が採用されたのを感じて満足していた。それはハルゼーが世間で言われているような粗野な人物でなく部下の進言を取り上げる人物であると以前から知っている自分だから得られた確信である。
「これで敵を先に見つけることが出来れば……」
幸先が良いのだがとスプルーアンスは一人ごちた。
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「何も見えないか」
SBDドーントレス爆撃機が単機で西へ向けて進んでいく。ハルゼーの命により偵察任務に就いている彼らは海上を睨み見落としがないか丹念に調べていた。
「む! あれは?」
彼らの努力は報われた。雲の間から見える海面に複数の航跡を見つけたのだ。
「輪形陣の中心に空母が6隻、傍を進んでいる駆逐艦と比較すると200メートル超の大きさだ。正規空母に間違いない!」
「急いで打電しろ、追手が来ないか後ろに気を付けろよ」
こうして両軍の内先に敵を見つけたのは米軍であった。
「敵偵察機電波発信中、見つかったようです」
「そうか、GF(連合艦隊司令部)に連絡だ、{見つかった}とな」
「直掩機に追わせますか?」
「無論だ、此処まで来て何も無しではかえって怪しまれるだろう、発見されたんだからね、{落としても構わん}と言っておけ」
「はっ!」
偵察機の見つけた空母の艦橋ではこのような会話が行われていたのであった。
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合衆国海軍 空母レキシントン 艦橋
「提督! 偵察3号機が{敵機動部隊発見、正規空母6隻確認}との報が届きました」
「場所や距離は判るか?」
「判ります、敵の戦闘機に追われているとの通信の後途絶しましたが」
「直ちに攻撃隊を送れ! ジャップの奴等も此方に気がつくぞ、先手を打つんだ」
指揮官のハルゼーの命を受け艦橋が慌しくなる。
「先手を打てば我々の勝ちだ。飛行長に敵レーダーに注意する事だけは伝えよ」
「はっ!」
攻撃隊発進の命を受けて艦隊は風上に向けて進路を変更する。発艦ももう直である。
同時刻
最後に飛び立った偵察機は先ほど発見報告を行った偵察機より北に200キロ離れた場所を飛んでいた。これは先ほどスプルーアンスが見上げた機体である。
「こちらの方向には居ないんじゃないか?雲も出始めてるしな、引き返すか?」
「もう少し……予定地点までは……待ってください! 航跡が見えます!」
雲を避ける為に回りこんだ先には大艦隊が見えた。
「空母が6隻居るぞ、こいつが本命だ、引き上げる! 場所を報告しろ!」
直ちに反転し来た道を戻り始める。
「おかしい、通信が出来ない、ノイズばかりだ」
「クソッたれ! 無線機が壊れたか! 整備兵めポーカーばかりやってるからだ!」
悪態を吐きながら操縦士は帰路を急ぐ、敵が来ないことを祈りながら……
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