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平賀譲は譲らない  作者: ソルト
3章 昭和編
170/231

153話 日の出はどちらに出る?

お断り 昨今小説家になろうにて無断転載される事例が発生しております。


其の為此処にてお断りしておきます。


この作品は 私ソルトが書いたもので小説家になろうにのみ投稿しアルファポリス・ツギクルにリンクが張ってある以外は無断転載になります。








広島県 倉橋島 亀が首試射場


「試製四式対空誘導噴進弾のテストの結果ですが命中率は二式よりも上がっています。発火欺瞞弾フレア使用時には格段の違いがありますね」


 総研の弾薬部門研究員の報告を受けているのは所長の譲である。何時もの如く新幹線で呉までやって来た。欧州からの帰りでさらに飛行機嫌いが強くなったようである。


「問題は量産に載せられるかだな、大規模集積回路の歩留まりが悪すぎる。旧来回路で作ると重量増加で使い物にならんしな」


「メーカーの方でも改良は必死に行ってはいるのですが……尻を叩きますか?」


「いや、止めておこう。現状でも異常な速さでの開発を強いているんだ。そもそも正式採用は1944年なのに三年も繰り上げる事になったら死人が出かねん」


「そうですね」


 研究員も譲の返事にホッとした感じで返答している。


「北千島での試験では対艦誘導弾の方は何とか行けそうか、直ちに大和・武蔵にも搭載させよう。他の艦にも順次搭載だ」


 報告書を繰りながら譲が指示を出すと直ちに決裁書が作成されて担当に回され動き出す事になるのであった。


「此処の試験場を使うのはこれで最後になりますね」


「残念だが誘導弾は瀬戸内海では危なくて使えん、誤射したら大変な事になる」


「射程が長いというのも良し悪しだな、しかし此処まで射程の長い誘導弾が実用化したんだ、大和や武蔵は必要だったのか? 」


 研究員が皆居なくなり二人だけになったところで飛行機で呉に行けなかったのを残念がっていた本郷がポツリと言った。


「あれは保険だ」


「保険?」


「誘導弾が今度の大戦に間に合うかどうかは微妙だった。七十年かかって作り上げた技術を三十年ほどで作ろうと言うのだからな。実際にドイツで使ったのは電波の発振に誘導するタイプが精々だった。そこから赤外線ホーミングの二式が出て来たがこいつはデコイに弱い。其処を改良した四式が早期投入出来ればいいのだが、大規模集積回路の生産の歩留まりの問題が解決していない。情報だけで直にも未来の兵器がぽんぽん作れる物じゃないんだ」


「まあな、それでも三十年ほどでよくぞ此処までと俺も思うよ」


「大和だって16インチ砲12門でも良かったのではないかと言う話もある、だがこの状況を考えれば少しでも攻撃力をと求めるのは間違っていないはずだ」


 そう言って引き上げの準備をする譲たち。彼らは東京へトンボ帰りをするのであった。


>>>>>>>>


「問題解決だって?」


 東京に戻った俺の元へ大規模集積回路の量産に成功したと報告が入っていた。おかしい、いくら何でも早すぎる。


「どうやって解決したんだ? あれはそんなに早くは出来ないはずだが」


「確かにそうですが夜を日に継いで間に合わせたのですよ」


 俺の問いに答えたのは報告に来たメーカーの者たちだった。ソニー・樫尾・早川・日立・日本電気等で起こしたプロジェクトチームの連中だ、皆頬はこけ、目の下に隈がある。


 どうやらデスマーチをやっていたようだ。一体何が其処まで彼らを駆り立てたのだろうか?


「頂いた資料があれば後は作るだけ、それなら何とかなると思ったのですよ」


 彼らを代表して井深が嬉しそうに語る。その笑顔をみて判ってしまった。史実では戦後物作りをしたくても技術情報は手に入らなかった。その為彼らは外国製品をリバースエンジニアリングして仕組みを理解し、再現した。その事から比べれば完成した技術情報があれば作り出すのは簡単というわけだ。


 成程な、彼らの技術者魂を甘く見ていたようだ。俺は心から言葉を発する。


「皆ありがとう、これで目処は立った。礼を言う」




>>>>>>>>


大分県佐伯湾 第三艦隊 旗艦 瑞鶴


「改装終了で船渠から出たばかりなのに瑞鶴の対空兵装の換装なんて」


 艦長がぼやくと司令が苦笑いしながら口を開く。



「急に決まったそうだ、高性能機関砲に換装しなかった両舷スポンソンの機銃座が対象だ。特設工作艦を横付けして行うと通達が来ている。瑞鶴だけではない、翔鶴も護衛の直衛戦隊もだ。どうやら上は本気でアメリカとやり合うつもりだな」


「確かに、欧州から帰るなり空母は全隻船渠行き、搭乗員は機種転換の為に基地に行った。新型の艦も加えてさてこれからと言う所でさらに追加の改装だ、工廠の連中も船渠が空いた端から改装か建造だとてんてこ舞だ」

 

 艦長は瑞鶴の隣に占位している軽巡洋艦を見ていた。新たに加わった偵察巡洋艦利根型一番艦利根である。


「あいつは前衛で偵察部隊を指揮する専用艦だ。ああいうのが出てくると言う事は空母同士の艦隊決戦を企図していると言う事になるのですかな?」


「さて? 欧州でも予想もしない戦い方をしているのでね、予断は許さんな」


 曳船に引かれて近づく真新しい工作艦を見ながら司令官は答える。


 陽光に照らされて真新しい塗装に包まれた工作艦は輝きを放つ。其の光は波間を反射する光と溶け合い辺りを照らしていた。






※この作品の無断転載は禁止しております。


ご意見・感想ありがとうございます。

ブックマーク・評価の方もしていただき感謝です。

あくまで娯楽的なものでありますので政治論とかはご返事できないかも…

読んでいただくと励みになります。


※感想返しが遅れております、申し訳ございません。

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