幕間話14話 航空祭と女性進出
※この話は架空戦記創作大会2018冬への投稿用に書かれた物です(第2弾)
(御題2になります)
急遽書いたので誤字脱字等ありましたらお知らせいただければ幸いです
※2/26修正
源田実という軍人(後に政治家)については毀誉褒貶の激しい人物であるという認識が一般的である。その内実には旧来の慣習や不文律などに囚われない合理的な思考と権力掌握に関して貪欲であると指摘があり其れが主に彼を貶す大部分であると考えられている。其の一面で其の合理性が大いに評価された部分がある。この一点のみで彼を褒め称えるのは無理があろうがこの事が世界に与えた影響は決して小さくは無いのだ。 (国連男女機会均等委員会議事録より)
源田実は激しい焦燥感を感じていた。
(航空機搭乗員が足りない!)
航空機搭乗員には適性があり其の適性検査をパスしないとそもそも道が開けない、希望者を募っても其の全てが搭乗員には成れないのだ。其の上空軍にはライバルが存在する。
海軍の空母搭乗員である、洋上を進む空母に離着艦する艦載機乗りは航空機搭乗員の中でも特殊な適性が求められる、当然優先して選抜されていくのだ。そして陸軍でも連絡機や回転翼機の搭乗員を必要としており完全に同じとは言えないが適性が被る部分がある以上当然割り当て人員が減る事になる。欧州が戦争へと進む状況下では余計に急がれた、機体は工場で増産は容易だが、人材を使えるようにするには時間が掛かる。
行き詰まりを感じた彼は机に置かれた新聞に目を留める。従兵が気を利かして今朝届いた朝刊を置いてくれていたらしい。
何気なく記事を見ている其の目がある部分に釘付けになる。
「そうか! これだ! 何を悩む事があるんだ、人口の半分は女性だったのだ」
其処には{日本女性初! 東京から福岡まで単独飛行成功}の文字が躍っていた。
>>>>>>>
源田が其の記事を見てから五年後、霞ヶ浦航空基地
此処では空軍が其の活動を国民に知らしめアピールする場として航空祭が開かれていた。
海軍が観艦式、陸軍が総合火力演習を行っているのを空軍が黙ってみているわけに行かなかったのも原因の一つと言われている、あくまでも空軍の開催理由にはその様な事は触れられていないが。
そこで行われるのは地上での航空機材の展示と実際の離陸と着陸、そして航空教育隊の教官が編成する航空教導団に所属する第十一航空隊による特殊飛行(曲芸飛行)は源田実の名前を取って{源田サーカス}と言われて人気になっていたがこの年に行われた航空祭の目玉は別にあった。
基地のいたるところに設置されたスピーカからアナウンスの声が響き渡る。
「さて、次に登場するのは今年より参加の特務戦技教導団所属の特務第一航空隊による戦技飛行になります」
上空に五機の機体がすべるように進み演技を開始する。其の動きは滑らかで見るものを魅了した。機体後部からスモークを発しながら飛行する其の航跡は大空に五つの輪を幾重にも広げていく。
「綺麗……」
見上げる観客はその光景に言葉を暫し失う。
やがて演技が終わり機体は滑走路に綺麗に着陸していく。そして搭乗席の風防を空けて降り立つのは小柄な飛行服姿の人物たちであった。
そして飛行帽を取ると……
「な・なんと女性が乗っていた?」 「信じられん!」
彼女等をアナウンスが紹介する。
「特務第一航空隊所属の戦技飛行班通称航空電撃少女隊です!」
チームの中にはベテランで少女と呼ぶには無理のある{お嬢様}なお姉さんや鉄火場に居そうなお姐さんがいたのだがそこは触れないアナウンスは気配りの達人だろう。
彼女達のお披露目は新たなるアイドルの誕生となった。其の効果は顕著で航空機搭乗員の募集を行うと例年の三倍の応募があったという。其のうち三分の一が女性の応募であった。
源田は彼女たちを戦場には出さず後方での航空機輸送や試験飛行など以外には使わなかったが、他国ではロシア共和国での{薔薇騎士団}隊の例もあり彼女達から前線勤務の希望も多かった。また例外的に戦闘機の輸送中に敵機と出くわして空中戦、(新聞はキャットファイトと書きたてたが)を戦った例が存在した。
そしてこの事が先例となり女性の社会進出の始まりとなったと言うのが現在の通説となっており、平塚らいてうが{青鞜}の中で『元始、女性は太陽であった』 と書いてからようやく実現した動きだが、軍の都合による物で真の女性解放ではないとの批判も存在した。
航空祭はその後も行われ航空電撃少女隊は{サンダーバード・ウイッチーズ}と改名されて現在でも航空ショーには欠かせない存在となっている。 (国防航空・1992年4月号より)
ご意見・感想ありがとうございます。
ブックマーク・評価の方もしていただき感謝です。
あくまで娯楽的なものでありますので政治論とかはご返事できないかも…
読んでいただくと励みになります。
※感想返しが遅れております、申し訳ございません。