幕間話13話 富士総合火力演習とマスコットキャラクター
※この話は架空戦記創作大会2018冬への投稿用に書かれた物です
(御題2になります)
ある転生者の奮闘で日本の歴史は大きく転換することに成功した。
イギリスとの良好な同盟関係を維持したまま世界大戦を戦い世界をリードする立場となったが、同じく覇権を目指すナチスドイツや世界革命を目指すソビエト連邦、大国として世界に覇権を確立したいアメリカ合衆国らと争う事となり、第二次世界大戦が勃発する。
ドイツとの熾烈な戦いの末にドイツ軍をダンケルクで蹴散らしドイツとの講和を結ぶことに成功、その後のソビエト軍の侵攻を跳ねのけて勝利したのであった。
ドイツとの講和がなった翌年、中断されていた陸軍の富士山麓演習場での総合火力演習が行われた。
それまでの演習と違うのは一般市民にも公開されたことだろう。理由としては国民に広く陸軍の仕事ぶりを見てもらおうという建前だったが、本音では海軍の観艦式に人気が集まり、さらに{軍艦撫子}での不動の人気に嫉妬した陸軍が挽回しようと打った手の一つであった。
抽選で招待された市民たちはまず会場に並べられた武器を目にすることになる。それらは欧州派遣軍が使用していた物や鹵獲した敵の武器などで皆珍しそうに見ていた。
その中での一番人気はやはり戦車であった。我が国の三十五式改や一式砲戦車などが並ぶ中での一番人気はダンケルクで活躍した西住中佐の乗った四式中戦車(試)であった。
その横には西住車に撃破されたドイツ軍の六号戦車や六号駆逐戦車が並んでおりその姿に皆驚いていた。
「西住中佐はこんな化け物を相手に良く倒したな」
「やはり清正神社のお守りが効いたんだよ」
「それよりこの205と書いてある独軍の戦車、我が軍の戦車を多数撃破したエース車両だって書いてあるよ」
「それを屠ったんだから凄いよな」
そして演習場ではその四式中戦車による射撃演習が行われていた。
「ただ今より戦車小隊による射撃演習を行う。左より二両の戦車が進みながら三〇〇〇メートルの先の的に命中させます」
観客席のそばに置いてあるスピーカーがアナウンスを告げると、招待されていた各国の軍関係者からどよめきが起こる。走りながら発砲する行進間射撃は高度な技でありしかも三〇〇〇メートルもの先に命中させるなど有り得ない事だったからだ。
ディーゼルの爆音を上げて二両の四式戦車が前進しその砲が目標を捉えた。
「各車発砲!」
ドンッと音がして砲口から炎と煙の中高速で飛翔する砲弾が目標に吸い込まれていく。
「全弾命中!」
アナウンスに観客からどよめきが起こる、特に各国の軍関係者はその技術が超絶に難しい物であると知っているから猶更であった。
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演習場や戦車など兵器の展示以外にも屋台等の出し物があったが一部の招待者、特に子供たちに人気の場所があった。
売り出し中の人気漫画家が連載していた〇らくろの展示コーナーである。
簡単に話の内容を解説するならば捨て犬であった野良犬黒〇が猛犬軍団に入隊し活躍するというお話で、その人気を知った陸軍が正式にマスコットとして採用したのである。
その為軍のポスターなどにも登場しており子供たちの人気も上々である。
最新話は欧州派遣軍とのリンク話で豚の国と鷲の国とトロルの国が狐の国と熊の国に攻められているのを助けに行くという話であり、各国の兵士を擬人化した動物に置き換えている物である。
会場には〇らくろや上官のフレンチブル将軍やテリア中隊長らの着ぐるみが闊歩しており、子供たちと握手したり記念撮影に応じていたりした。
大変な人気が出て陸軍は満足する結果を得た。この後富士総合火力演習と名付けられたこの演習は陸軍が戦争の無い時期に国民にアピールする貴重な行事として国民に浸透していく。
マスコットの導入を受けて部隊の記章に主人公の足をモチーフにした物を使ったり戦車等のマーキングに使ったりする物が現れ其れもまた人気となった。
ただ問題点としては、兵営に入った兵が最初に「のら〇ろは何処でありますか?」と上官に質問し困らせるという事件が多発したという記録が残っている。
そして陸軍に入れ知恵したのは総研の所長であるという事が判ったのは世紀が変わってからのことであった。
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