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平賀譲は譲らない  作者: ソルト
3章 昭和編
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139話 大統領の焦り

アメリカ合衆国 首都ワシントン ホワイトハウス


 ルーズベルト大統領は焦りを隠せないで居た。満州国を傀儡にして日本を遼東半島から叩き出そうとする策が不発に終わったからであった。満州国内の油田の接収も失敗し良いとこ無しである。


 日本を非難する声明を発表し、大統領令で日本に対して貿易を止めることで経済制裁をしようとすると同盟国イギリス経由で商品が入ってきた。それに文句をつけると貿易の自由が損なわれると経済界より不満が出てきた、規制すれば当然相手からの購買も減る、判りきったことであった。


 日本からの移民を制限したが移民希望者がそもそも少なくなっており余り効果がなかった。東北の開発によって貧しい生活をする者が減った為もあるし移民を受け入れている国は他にもあり其処に行くだけのことであった。


経済政策ニューディールはうまく行っているのに、認めないというのか、民衆は!」


「前大統領が行っていた経済政策に似ている為その物真似に過ぎないとマスコミが酷評しております」


 補佐官が持っているワシントンポストには{大統領は物真似がお好き?}と題したタイトルが踊っておりさらに{どうせならフーヴァー・プラン}も真似するべきとまで書かれていた。


 これは前大統領でハルハ川の敗戦(実際は負けていなかった、ソ連の水増し戦果と損害隠し)の為に大統領選で敗れたハーバード・フーヴァーが唱えた国民皆保険制度である。


 因みに経済政策もこの保険制度もフーヴァーの政策スタッフから提言された物でありその背後にはある組織が付いていたのだが誰もそれに気が付いていない。頼みの政策に目新しさがなく、やる事が裏目に出るため大統領への国民への期待は下がってきており、次期大統領選挙に影響が出そうである。ルーズベルトはその事が頭の痛い問題となっていた。


大統領プレジデント、この状況を打破する事が出来そうな話があるのですが」


 ある政策スタッフが持ちかけた話に藁をもすがる気持ちで乗った大統領であったが、その結果アメリカ合衆国は泥沼の中に叩き込まれるのであった。


>>>>>>>>>


 フィリピン・台湾間 バシー海峡


 この海域では先般から船舶の遭難が相次いでいた。原因は良く分かって居らず操船を誤り暗礁に乗り上げ座礁沈没したとも、荒天で転覆したとも言われているが台湾南端に根拠地を持つ海上保安庁の司令部は異なる見解を持っていた。


「遭難した船は全て単独で航海していた船で国籍は問わずだが一つだけ例外がある」


「合衆国船籍の船だけが被害にあっていない、ですが偶然とも取れますな」


「天候が良くても遭難しているからな、航路に関しても危険海域は開示されているから近づく事はない」


「では?」


「人為的な物である可能性がある、我々も警戒を強めていこう」


実際救助された船の乗員からいきなり爆発が起こり船が沈んだと言う証言もあり魚雷か機雷の可能性も取り沙汰されていた。


 こうして集中的に海上保安庁の巡視艇がパトロール中にそれは起こった。


 >>>>>>>>


 この日バシー海峡を単独で航行する貨物船があった。日本の商社のチャーターした其の貨物船は当初は数隻の船で船団を組み航行する予定であったが途中で機関に不具合が起きて、遅れて海峡に入った。


 彼らも連続遭難の事は知っていたので見張りを増やして対応していた。


「船長、現在の所異常なし、天候の方もこのまま好天のようです」


 航海長からの報告に頷く船長の耳に左舷見張りの悲鳴のような声が聞こえた。


「雷跡一、魚雷です!」


 左舷の見張りは長年海軍に奉職しておりベテランの見張り員であったので気が付いたのであった。


「取り舵一杯! 通信長、SOSを打電! 総員衝撃に備えろ!」


 貨物船は左に舵を切り魚雷をかわそうとしたが間に合わず左舷後部に命中した。貨物船の左後部に閃光が走り衝撃でガラスが割れ、乗員は床に倒れた。


「被害状況を知らせ!」


 船長の指示で直ちに船員たちが被害を確認するが左舷に大きな破口が開き轟々と海水が流れ込み船は左に傾斜していく。船長はバランスを取ろうとしたが傾斜は止まらず機関も停止した。


「カッターを下ろせ、総員脱出せよ!」


 船員たちはカッターを下ろし船から離れていき其の直後に貨物船は転覆して船尾から沈んでいった。 


「畜生! 一体誰が魚雷なんか……」


「船長! 左舷前方に潜水艦浮上! アレはアメリカ海軍の物です」


 報告したのは先ほど魚雷接近を告げた見張り員で元海軍勤務もあって艦船には詳しかった為直に艦を特定できたのだった。


「確かにこの海域で潜水艦を動かせるのは日本とイギリスそしてアメリカくらいだが、戦争でも無いのにいきなり攻撃など気が狂っている」


「戦果の確認の為に浮上したな、畜生!なめやがって」


「船長! 上空に機影が見えます、あれは回転翼機ヘリコプター、日本の機体です」


「地獄に仏とはこの事だ、皆手を振って知らせるんだ」


 飛来してきたのは日本の海上保安庁の回転翼機へりで海上で手を振る彼らに気がついたヘリの通報で巡視船が到着して救助するのであった。


 救助した船長たちから魚雷と潜水艦の事を聞かされた巡視船は潜水艦を追ったが潜水艦はフィリピンのレイテ島に向けて逃げており捕捉する事は出来なかった。


こうして日米の関係がさらに悪化して行くのであった。


ご意見・感想ありがとうございます。

ブックマーク・評価の方もしていただき感謝です。

あくまで娯楽的なものでありますので政治論とかはご返事できないかも…

読んでいただくと励みになります。


※感想返しが遅れております、申し訳ございません。

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