14話 譲(おれ)帰国が決まる
※3/14修正
あっという間の4年(約)だった……大学も卒業が決まり日本に帰ることになった。
途中でこちらの飯の不味さに涙して日本に帰りたくなったり、何故かフィッシャー卿のお供でドレッドノートやインヴィンシブル等の視察に行ったり、史実にないドイツの造船所めぐりをしたり
機械式計算機が欲しいなとつぶやいたら本郷大尉がどこからか「借りてきた」と言って持ってくるし(しかも返さないでいいって……)それってどこの{ジャィ○ン}なんだよと突っ込みながら計算をしたり卒論にこっそりあることをばらしていたり。医薬品漁りをしたり、本郷大尉に日本に届け物をしてもらったりだ。
ロマンス?そんな物は無いですよ、そんな暇なんか無かったよ、ホンとだよ。本郷少佐(昇進した)はモテモテ(死語)らしいがあれは公務なんだうらやましくは無いぞ!大丈夫だ!俺は日本に帰れば奥さんが待ってるんだ、ちゃんと手紙も出してたし返事も来てたからなそれを見て帰りたくて寝床で泣いたのは秘密だ。
だがこの4年で日本はずいぶんと変わった、主に政府や軍がね。児玉内閣が誕生してから劇的に変わったよ。あの人「内務省をぶっ壊す」と言って本当に解体しちゃったからな、官僚の怨嗟が凄かったろうな、
軍も大幅に変わった。
海軍省と陸軍省が一つになって防衛省(なぜそんな名前に?俺の書類のせいなのか?)という名前になり、その中の統帥本部の下に各軍が置かれることになった、そして大臣は現役軍人不可となった、このために軍が大臣を出さないために組閣が出来ないようなことは無くなった。
さらに憲法の改正まで行ったは吃驚だ、改正されたのは統帥権干犯で問題になった11条と12条だ
どちらも内閣と議会の承認のもとと言う文言がついた。これで軍部の暴走がある程度抑えられるな。
さらに空軍を加えて三軍制にしたにはあきれたよ、まだライト兄弟が飛んでそんなに経ってないのに…ともかく改革に継ぐ改革でそのニュースはイギリスでも話題になってたくらいである、新聞では『児玉首相英断!』『豪腕唸る!』などど書き立てた、もちろん軍からも異論が出たが、大山巌や乃木希典、東郷平八郎など日露戦争の英雄からの賛同の声や、天皇陛下の勅語などで抑えられたのであった。
アメリカでも話題になり詳しい記事を求めて(ジャパン・アンド・アメリカ)の売り上げが急上昇したそうだ、星一の事業拡大で日本に帰ることになった安楽君が引継ぎもあって悲鳴を上げてたと聞いたよ。引き継ぐのは本郷少佐が作ったダミーの会社で今後はそこを隠れ蓑して活動するらしい。諜報機関名は東機関となった、30年前取りしちゃったよ。
「すでに教会の神父に化けさせた部下が情報集めてますよ。」
そんなの当たり前みたいな顔で言われるとどう答えりゃいいんだよ!
残念ながらこれだけの改革を起こした児玉首相だったが、1906年12月8日に現役総理大臣として初の死亡者になった。朝、家人が起こしに行ったときにはすでに亡くなっていたそうだ。その時には改革はすでに殆どが発表着手済みだった、永遠の眠りについたその顔は満足そうに微笑んでいたそうだ。食餌療法をしつつ医者もついて正史より半年も長く生きたからだろう。
本人はすでに覚悟があったため遺書が用意されており、死後後継首班候補は混乱を避けるため伊藤博文か山縣有朋のどちらかにすること、改革は断固として行うことと書かれており、その遺書を受けて明治天皇は異例とも言われる勅語で故人の死を悼み、その偉業を称えて、伊藤博文に臨時組閣の大命を下された。
伊藤博文は直ちに声明を出し、改革を断行する内閣を宣言した。山縣有朋や山本権兵衛もそれを支持する声明を出したのが皆に驚かれた、山縣と伊藤は犬猿の仲で有名であったからだ。内情を知る俺は驚かないけどね。
伊藤博文は閣僚に関しては前内閣を完全に踏襲した。そして、「故人の願いを現実にするのが我が内閣の勤め。」という潔い言動が国民の感動を呼び反対する声を完全に封じ込めた。さて、外交方面がうまくいけばいいんだが……
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大学も卒業して今は欧州の造船所の見学の旅に出ているところだ、それが終わったら日本に帰れる。
「楽しい妄想中すまんが……」
本郷少佐神出鬼没すぎだろう。
「頼まれていた設計図手に入れたぞ、だが約30年も前の機械の設計図が役に立つのか?」
「ふっふっふ、驚くなよ、これは人類が発明したある物の元となる大切な発明だ!これに着目しなかった欧米は30年は損をしているんだ」
「そうなのか、これを日本に持ち帰って研究させるんだな」
「ああ、研究してもらおう」
本郷少佐の持ってきた設計図はチャールズ・バベッジという数学者の考えた階差機関という計算機である、これはコンピュータにつながる発明であった。
(こいつと後こちらの知識があれば……)
コンピューターの開発も進むであろう。
「後は人材だけなんだが、やはりスカウトしてこなきゃいかんかな?」
「誘拐するのか?」
俺のつぶやきに人材の招待まで考え出した少佐を俺は必死で止めるのであった。
番外
本郷 「第一から第十まで招待所は完成してるからな、候補者プリーズ!」
譲 「どこの北の将軍様だよ!(まだ生まれてすら居ないけどな……)
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