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平賀譲は譲らない  作者: ソルト
3章 昭和編
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135話 戦後の後始末と第二ラウンドの始まり

イギリス・ロンドン


 ドイツで政変があり樹立された臨時政府が講和を申し出てきた。この急展開は日本・イギリス両政府も予想していなかったようで大変な騒ぎになったがその立役者の一人は目の前で優雅に酒などを楽しんでいる。


「ずいぶんと目まぐるしかったが良くクーデターが露見しなかった物だな、いくらハイドリヒやゲシュタポを指揮するシェレンベルグが付いていたからと言ってヒムラーも節穴じゃあなかったはずなんだが」


「まあ、其処はうちもクーデター派に協力者を送り込んでいたんだ、ずいぶんと前からだがね」


「アメリカに工作員を送り込んだときと同時期にか」


「そうだ、そいつらは軍人などになってクーデター派に潜り込んだり、親衛隊に入った者もいるぞ」


 東機関が日本で極秘裏にスカウトした工作員は外見だけなら日本人離れした容姿をしているのでアメリカを始めとして各国に送り込んでいたがドイツの中枢部近くまでいたとは驚きだな。


「クーデターを起こした組織、{黒いオーケストラ}は軍人だけではなく企業家なども協力しているからな、資金は豊富にあるし親衛隊内部の情報をこちらが流してやっているから露見もしなかった。さらにゲシュタポにも協力者を作ったからたとえ情報が流れても握りつぶしてくれたのさ」


「そんな大物を協力者にしてたのか、ラインハルトじゃあ無いのか?」


「流石にそれは無理ってもんだ、だから今回奴が接触して来た時は驚いたよ、まさか親衛隊のナンバー2が裏切ろうっていうんだからな」


「想定外という事か、だが良くナチスを見限った物だな」


「奴と話して判ったが奴は{権力}に興味があるようだ、その為に忠実なナチスの幹部として振舞っていたが、ナチスに価値無しと判断すれば簡単に宗旨替えするというわけさ」


「とんでもない奴だな」


「だが奴のお陰でクーデター計画が早められたのは間違いがない、流石にヒムラーと奴の二人を出し抜くのは骨が折れる、片方がこちら側になってくれて実働部隊を動かすのが楽だったよ」


「確かに、時間が稼げたのは嬉しいな、ソ連の動きが気になる今ドイツから兵力を離せるのは有難い」


「そろそろモロトフも強気になって来ているからな、大分軍の再建が進んでいるんだろう」


 本郷中将の言う通りソ連はフィンランドとポーランドで大敗した後防衛線を下げて守りを固め外相のモロトフを立てて停戦を申し込んできていた。だが内容は強気一辺倒で停戦交渉とは名ばかりの時間稼ぎの場でしかなかったからな。


>>>>>>>>>


 ソ連とポーランド、フィンランドとの停戦交渉は中立国であるスウェーデンで行われた、日本とイギリスを加えた4カ国で交渉をしたいと申し出たフィンランドとポーランドに対して、モロトフは個別の国と交戦状態になったのだから当事国同士での交渉しかしないと宣言した。


 これは日本やイギリスに交渉に加わらせないようにする意図が見え見えであった。


 更に予備交渉として始まった個別の交渉で彼は驚くべき事を口にした。


「領土の割譲に賠償金? 正気ですかモロトフ閣下? 貴国は戦争に勝ったのではなく負けているのですよ?」


「正気を疑うのはそちらの方ですぞ、ソ連は負けてなどは居ません、今は兵士の休暇期間なので戦争を休んでいるのです、休暇が終われば踏みにじられるのはそちらです、謝罪するのなら今ですぞ」


「話にならない、それでは戦闘を再開しても良いのですぞ」


「まあ、今は貴重な休暇期間ですからな無粋な事は止めましょう」


 このように戦闘を再開するというとのらりくらりとはぐらかして戦闘を避けようとし、時には停戦に前向きな発言をしたと思ったら、次回にはそれを反故にするなど時間だけが過ぎていく、フィンランドとも同じような経過だったがこちらはそれに輪をかけて酷かった。


「貴国が不法に占拠しているレニングラードからの撤退を要求します、そうしないと停戦などできませんな」


「馬鹿なことを言ってもらっては困る、撤退すれば又そこに海軍を入れてバルト海で暴れるつもりだろう」


「はて?バルト海は我が内海、我が国の軍艦がどこを進もうが自由でしょう」


「話にならん! 戦闘を再開する」


「まあまあ、せっかく交渉しているのです、もう少し冷静になって……」


「お前が言うな!」


 こちらも時間だけが過ぎていき、ポーランド、フィンランド両国は国連に改めて仲裁と介入を求めた。そしてそれを受けて国連がモロトフに交渉を求めると、本人は病気と称して逃げ回り面会さえも出来なかった。


 そして、ダンケルクで日英軍とドイツ軍が相対していた頃になるとモロトフは強硬な姿勢を見せるようになり、何時戦闘が再開されても可笑しくない状態になってきていた。


>>>>>>>>>>


「後方で編成された部隊が続々とポーランド・フィンランドとの停戦ライン上に送り込まれている、もちろん隠蔽している、こちらが気が付いていないと思ってるようだな」


 本郷中将がグラスの酒をクイッと飲んでにやりと笑う、停戦交渉中は軍の前線への移動は禁じているから完全に停戦交渉での違反だな。


「あれだけやられたのに懲りないのかね?」


「そちらが言っていたT34らしき戦車がウクライナの工場から軍に引き渡されているのが確認された。今度はやれると思ったんじゃないかな? 相変わらずアメリカからの物資が入ってきてるしな」


「では第2ラウンドの開始か」


「そうだな、だが奴らは完全に読み違いをしてるからな、それを思い知ってもらうとするさ」


 ドイツが終わったと思ったら又ソ連か、早く帰りたいのにこちらに居なきゃ駄目なのかな?


 俺は今度の戦いも早く終わって欲しいと願うのであった。



ご意見・感想ありがとうございます。

ブックマーク・評価の方もしていただき感謝です。

あくまで娯楽的なものでありますので政治論とかはご返事できないかも…

読んでいただくと励みになります。

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