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平賀譲は譲らない  作者: ソルト
3章 昭和編
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132話 ソウルクラッシャー作戦5

発射された誘導弾は24発、うち2発がロケットモーターの不調で落ち、飛び続けたのは22発であった。さらに電波をロストして明後日の方へ飛んだのが3発、残りの19発が電波の発信源に向けて飛んで行った。


「橋の守備隊の様子はどうだ? 発信機には気付いていないな?」


「今の所はのんびりしてますね。電波の発信も問題無しです」


「そうか、作戦通りなら間もなくだな」


「ですが本当に噴進弾が来るんですか?」


「疑り深い奴だな、我が軍が実戦に投入したという事はそれなりの信頼性の元に使われているんだ、全部は来ないが必ず来るはずだ」


「もうすぐ時間です、ぼちぼち……来た!」


 橋の見える場所から観察していた現地工作員たちは橋に向かって次々に飛来する噴進弾を目の当たりにした。


「橋本体には5発命中か、多いのか少ないのかは判らないが目的だけは達したな」


 橋の方は完全に落ちてしまい橋脚も半ば折れていたりするので修復には時間が掛かり、作戦は成功したといえるだろう。残りの噴進弾は周辺に命中してドイツ軍に被害が出た。


「ドイツ軍も踏んだりけったりだな」


「最初の着弾の時電波発信機が壊れたのに後続が命中したのは何故ですか?」


「聞いた話じゃあ目標に近づくと電波誘導のある無しに関わらず針路は固定される仕様らしい、発信機が見つかって破壊される事もあり得たからな」


 工作員たちが引きあげた後には無残に崩れ落ちる橋と右往左往するドイツ軍が残った。


>>>>>>>>>>>


「現地工作員から命中、橋梁の破壊を確認と通信がありました」


 ダンケルクの司令部に最後の目標の撃破の通信が入った。野中隊の攻撃以外には海軍の急降下爆撃隊による爆撃やランカスター爆撃隊の攻撃が行われていたのだった。


「これでルーデンドルフ橋を除いて全ての橋を潰した。そして別働隊はドイツ軍の後方を遮断する。

ライン川まで逃げても橋は無い、身一つで逃げるのが精一杯だろう、この作戦の目的であるドイツ軍の主力を捕捉、撃滅する事でドイツの継戦の意思を奪うという目的は達したわけだ、後は総司令部の予定通りに進めば……」


 永田参謀長は報告書を握り締めた。


「こちらは殿を務める敵軍ドイツの追撃を行っております。向こうは粘り強く遅滞防御を取っておりますが確実にこちらが押しております」


「独立特火連隊に攻撃命令を、火力で防御網を食い破る!」


 反攻緒戦で活躍した特火連隊に再度攻撃命令が下る。


「地対地噴進弾発射態勢に入りました」


「弾頭は気化弾頭を取り付けて居ります」


「よし、撃ち方始め!」


 発射台に乗せられた噴進弾は次々に発射されていくのであった。


>>>>>>>>>


 後退中のドイツ軍のど真ん中に噴進弾は飛来した。着弾する直前に弾頭内の沸騰した液体燃料が噴出し一気に広がったところで爆発した。


 その爆発による爆風で圧死する者、車両の中に閉じ込められたまま蒸し焼きにされるものが続出し被害が続出した。それまで何とか秩序だった後退を続けていた部隊も崩壊し、武器を捨てて散り散りに逃げて行った。


 指揮を執っていたパウルスはこの攻撃で部隊の指揮に支障をきたすようになっていた。手元の部隊以外との連絡が次々に途絶えて行き、司令部の辺りも騒然としてきた。


「何という事だ、我々の最後の足掻きも無駄に終わるというのか……」


 そこに衝撃とともに爆音が響いた。


「何があった!」


「傍に布陣していた武装親衛隊第一装甲師団で爆発です。弾薬庫が爆発したものと思われます」


 パウルスが双眼鏡で観察するとその視野に惨状が映し出された。爆発で吹き飛んだ戦車がひっくり返って燃え上がり弾薬を誘爆させていた。その他にも倒れ伏す兵の姿も見え、すでに部隊としては頼りにならないのが明白であった。


「閣下……」


「ホト達は後退できたか?」


「ライン川近くまではたどり着いたようです」


「そうか……ここまでだな、副官!」


「ハッ!」


「君は軍使として日英軍の司令部に行ってもらいたい」


「閣下!」


「これ以上の抵抗は無意味だ、我々は降伏する」


「閣下……」


 パウルスの苦渋の決断に司令部は沈黙に包まれたのであった。


>>>>>>>>>>


 パウルスの決断の数時間前


 船坂少尉は意識を取り戻した。


(ここはどこだ?)


 目を開けて見回してみると自分が簡易ベッドに寝かされているのが判った。


(どうやらここは野戦病院の様だな、消毒液の匂いや薬特有の匂いがする)


 そしてここがドイツ軍の物である事も。


(捕虜に取ったにしては無防備だな……)


 船坂少尉は不思議に感じたが軍医は全身に傷を負っていた彼が助からないと思い込み、命令に従って最低限の治療をしてほったらかしていたのだった。だが船坂少尉は子供の頃から怪我の治りが早く今回も動けるくらいに回復していた。


「こうなりゃ軍内で暴れ回ってやる!」


 彼は野戦病院を抜け出し歩哨を襲って武器を奪いつつ進んでいく。


「ここは? 弾薬庫か! こいつを吹っ飛ばしてやる!」


 警備兵の死角からにじり寄りナイフを構える。


「グハッ!」


 ナイフで抉り一撃で仕留めると庫内に侵入する。


「これだけあればここいら一帯は木っ端微塵だな」


 爆破する為の細工を始め、仕掛けた後脱出した。まさか敵が紛れている事に気がつかず、前面の日英軍に気を取られていた間の事であった。


 この後船坂少尉はドイツ軍陣地を抜け出して無事に友軍に合流し、その活躍が知られると{不死身の兵士ソルジャー}{人間兵器}と呼ばれ、戦史で個人として名前が記載されるという偉業を成し遂げるのであった。


 パウルス達が降伏したことにより此処での戦闘は終わりを告げた。ホトたちは脱出に成功はしたが戦車や砲は全て遺棄しての後退であった。そして追い討ちを掛ける様にドイツに突きつけられた物があった。


 それは国連決議によるドイツに対しての武力介入への参加を表明したイタリア・オーストリア・スペイン等のドイツへの宣戦布告であった。

ご意見・感想ありがとうございます。

ブックマーク・評価の方もしていただき感謝です。

あくまで娯楽的なものでありますので政治論とかはご返事できないかも…

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