129話 ソウルクラッシャー作戦2
ダンケルク上空
「隊長、護衛対象を視認しました。護衛体制に入ります」
「了解、イーナ達は打ち合わせどおり上に付いて、私とサーシャは脇を固めるわ」
エカテリーナの部隊は無事に弾着観測機の任務を受けた零式司令部偵察機と合流した。そのままドイツ軍の展開している方へ進んでいく。
「観測予定地に到着か……どんな攻撃になるのかしら?」
エカテリーナが見ていると目標とされている地点より北に約千メートルの所に爆発と共に火柱が上がった。
「!」
すると無線機から観測機の通信が聞こえてきた。
「北に千メートルのズレだ、方向は良し!」
その通信から数十秒後又火柱が立ったが今度は目標至近に命中する。
「いいぞ、効力射を開始されたし」
「了解全艦斉射開始する」
その交信を聞いた数十秒後大地が揺れた。
「隊長! あれは!?」
イリーナの声が震えて聞こえた。地表は先ほどとは比べ物にならないくらいの爆発に覆われていた。
「圧倒的な破壊力、これが大反攻作戦!」
エカテリーナはその光景に見入るのであった。
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「第一戦隊全艦統制射撃開始、続いて第三戦隊も砲撃開始します」
「大艦隊第一戦艦部隊も砲撃開始!」
ダンケルク沖に集結している日英艦隊は戦艦部隊が戦隊毎に隊列を組み統制射撃を開始している。同型の16インチ砲を搭載している為に統一した射撃が出来るのも強みであった。
「零式対地攻撃弾の威力は絶大です、あれの直撃を受けて無事な地上目標はありません」
戦艦部隊の旗艦駿河では艦長の猪口敏平大佐が第一戦隊の統制射撃の指揮を執っていた。あらゆる砲撃を極めていると言われる彼は第一戦隊に矢継ぎ早に指示を出していた。
「しかし大西洋に居る日英の16インチ搭載戦艦をすべて使った砲撃とはかくも凄まじい物なのか」
ある参謀が溜息を吐きつつ感想を述べる。
日本側は駿河、三河、紀伊、尾張、霧島、榛名、山城、摂津の八隻と英国側はキングジョージ5世級のうちプリンス・オブ・ウエールズを除く四隻とロイヤル・サブリン級、ネルソン級全隻、そして新型戦艦ライオン級の就役したばかりのライオンとテレメーアが艦列を組んで砲撃をしていた。
「弾着観測機より入電、目標は散開し後退しつつあり、修正座標は……」
「砲術! 弾種変更、一式多目的弾用意!」
猪口の命令で装填されたのはより広範囲の目標を攻撃する多目的弾である、目標に到達すると弾頭が分解して中の子爆弾を広範囲に散らす謂わばクラスター爆弾であった。
その攻撃によりドイツ軍は多大な損害を受ける事となった。
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「224装甲大隊通信途絶、194装甲擲弾兵大隊救援を求めています!」
「敵の砲撃は約40キロ先からの艦砲による物と判明! 着弾多数、我が方の損害は甚大です」
ドイツ軍はいきなりの艦砲射撃によって混乱の坩堝に落とされた。部隊の最後方から攻撃を受けた為中軍は後退も出来なくなり司令部に情報を求めて来るもの、右往左往して後退路を探す者などまるで統制が取れなくなった。司令部は落ち着かせようとするも前線からの報告に凍りついた。
「ダンケルクの日英軍が前進を開始、現在交戦中、増援を請う」
前線に向かうもの、後退しようとするものでドイツ軍は分裂しつつあった。
「こちらパウルス、我々が敵の侵攻を阻止する、そちらの軍団は後退せよ」
「済まん、損耗が激しく防衛線を支えられない、殿は任せた」
最前線で戦っていた第10軍に代わり第6軍が敵に向かっていく。ホトが殿をパウルスに頼むとパウルスは承知する旨を伝えたが同時にこう言った。
「この場合殿は敵を抑えた後、敵に降伏も出来る。だが逃げるのは困難が伴う、君たちの幸運を願っているよ」
こうしてホトの部隊は急速に後退し、パウルスの部隊は敵の足を止めるために前線に留まった。最前線では攻勢に転じた同盟軍がドイツ軍を押していた。
「自走榴弾砲部隊展開完了、砲撃開始します」
三十九式15糎自走榴弾砲がずらりと並べられ砲撃を開始する。車両後方に弾薬補給車を連結し自動装填装置のお陰で毎分6発の連射が可能な為切れ目の無い砲撃を浴びせる。
吹き飛ばされていくドイツ軍だったが戦意は衰えず突撃してきた。
「敵戦車が来るぞ、戦車前進せよ!」
西住中佐が命を下すとエンジン音が高まり戦車が前進していく、戦車第一連隊の四式、三十五式改、三十五式新砲塔戦車が前進していく。
三十五式新砲塔は旧来の三十五式を現地で90ミリ砲に砲塔ごと換装した物で、それに増加装甲を付けた物であるがエンジンは換装されていないため機動性能が落ちている。だが現場の戦車兵からは攻撃力と防御が向上したので歓迎されていた。
「連隊長代理、横合いから第二連隊が仕掛けました。敵戦車隊の隊列乱れます」
「良し! 全車吶喊、敵を食い破れ!」
池田末男大佐の率いる戦車第二連隊が敵部隊側面に回りこみ、その対応の為に側面を向けた敵戦車に砲撃が行われ撃破していく。
さらに戦車隊についてきた機動歩兵たちが前進して敵部隊を掃蕩していく。
こうして前線を押し戻されたドイツ軍は後退しつつ味方を逃がす為に反撃を続け戦いは続くのであった。
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ダンケルク沖 工作母艦明石
「どうやら間に合ったようですな」
鶴岡大佐が安堵の溜息をつく、全速で飛ばしてやっとたどり着いたのだ。途中のUボートの襲撃も駆潜艇部隊の活躍で難無く切り抜けた。我慢強く待ち伏せしていたUボート達であったが対潜哨戒機の誘導を受けた駆潜艇の対潜迫撃砲の攻撃で撃破した。大破して浮上し降伏した艦の艦長があのドイツ海軍のUボートエースであるギュンター・プリーンだと知って驚いたよ。
「艦隊司令部より連絡、補給と修理に入られたし、以上です」
「了解、すぐに取り掛かると返信せよ」
明石に入った通信を受けて船団は動き出す。補給艦は砲弾を射耗した艦に向かい補給を開始し、工作艦は破損した艦の修理を受け持つ事になった。
「摂津、三番砲塔一番砲膅内爆発により破損」
「起重機船を横付けせよ、砲運搬船樫野もだ」
くそ重たい砲身を換えるには巨大な起重機船が必要だ、幸いな事にイギリスでは橋の建設用に大型の起重機船を作っていた。日本からも持ってきていたけど曳航しないといけないので一番足の遅いグループになり未だ此処に着いていない。
「斉射ペースが速すぎたみたいですね、砲身が加熱して強度が落ちたようです」
「揚弾速度を上げたからなあ、砲身の加熱対策が追いつかなかったか」
訓練ではこんなに撃たないからわからないんだよな、司令部に砲身を冷ましながら射撃するように進言して砲身交換作業に入る。
作業を始めてやっと換えの砲身を載せた辺りで総司令部からの発表があった。
別働隊がドイツ軍の後背に回り込み退路を断ったという発表である。
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