122話 決戦!ダンケルク 1
「上から被せられました!」
「急降下で振り切れ! 向かおうとするな!」
バルクホルン中尉の指示で彼の中隊は編隊を解かずに急降下で敵機の襲撃を避けようとしていた、だが彼ら以外は指揮官の判断の遅れから混乱が起きており完全に逃げ惑う羊の群れに過ぎなくなっていた。四式戦闘機はその中搔き分けるように突き進み手当たり次第に落としていく。
機銃の撃ち合いになっても低伸弾道に優れる武式機関砲を持つ四式戦闘機の方が有利なようで落とされていくのはドイツ機ばかりである。結局迎撃に当たった戦闘機隊は爆撃機どころかその直衛に当たっている64戦隊にすら届かなかったのであった。
「流石は日本空軍だ、俺たちも気を引き締めていくぞ、目標以外に落とすなよ」
爆撃隊の指揮官の激に答え爆撃隊のアブロ・ランカスターは嚮導機に従い爆撃コースに乗って攻撃を開始した。
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「被害は? そうか判った、引き続き救助活動を続けろ」
報告を受けていたヘス首相は渋面を隠さずに言葉を吐き捨てた。
「ゲーリングめ! 大言壮語の口先野郎が!」
「ベルリンの被害は国会議事堂とブランデンブルグ門だけでしたがイギリス・日本軍は最初からこの二つしか狙っていなかったようですな、そのため市街地には被害無し、人的被害は最小に止まりました」
内相を兼ねる親衛隊指導者のヒムラーが報告の続きを述べる、その目には何の感情も見られなかったが彼がゲーリングを快く思っていないのは閣僚の間では周知の事実であった為内心では喜んでいるのではと思われていた。
「だが、我が国の威信は地に落ちた、奴らはこう言っているも同然です、{ドイツの政治の中心は破壊した、そしてこの戦争でドイツの勝利は葬った}とね、この事が国民の士気と我が党への忠誠に大きなダメージを与えました、そしてゲーリングの大言がそれに拍車をかける事になりました。この責任はゲーリングに取らせるべきです」
ゲッベルスも相当お冠である、折角フランスとの講和で盛り上がった所に水を刺されたので当然の反応と言えるかもしれない、実際に頷くなどして同意を示す者もいた。
「それもですが同時にルール地方やドレスデン・ライプツィヒにも爆撃が行われております、少数による威力偵察のような攻撃ですが工場に被害が出ております、またユダヤ人の地下組織によるプロパガンダ放送が行われ、国民に避難と軍事工場や軍施設に近寄らないよう事前に警告が流されていました」
ゲシュタポの長官であるラインハルト・ハイドリヒが集めた情報を披露すると僅かだがヒムラーが不快な顔をした。殆どの者が気がつかなかったが気付いていたハイドリヒは何食わぬ顔で報告を続けた。
「ゲシュタポでの捜査の結果強制収容所内にも情報が流れていました、現在首謀者を捜査しております」
「これは由々しき事だとは思わんかね? 親衛隊は何をしていたんだと言われても仕方あるまい」
「ヒムラー長官、責任は重いですぞ」
他の閣僚に非難されながらもヒムラーは表情を変えない。
「反乱分子の捜査は続けている、いずれ捕まえる」
そうい言ってハイドリヒに目配せをするとハイドリヒは別の資料を取り出す。
「奴らの海賊放送局はポーランド・オーストリア・フランスそしてバルト海と北海上にあり、我が国を丁度囲んだ形になります、攻撃をしますか?」
「馬鹿を言うな! 海上ならば海軍か空軍にやらせるが他は……」
ハイドリヒの言葉にヘスは激高するが直ぐに言葉は尻すぼみになる。
「他国へ越境攻撃となりますな、ポーランドは交戦国ですから問題はありませんが問題はフランスとオーストリアです、先程講和したばかりの国と中立を宣言している国ですからな」
「フランスは外交ルートで抗議し取り締まってもらうとしてオーストリアはどうしますか?」
ゲッベルスの指摘とリッペントロップの質問にヘスは力なく答える。
「両国ともに抗議は行おう、後軍部に連絡しろ、ダンケルクを可及的速やかに攻撃しこれを陥落させろ、そうするしかこの局面は打破できない」
こうしてダンケルクへの総攻撃の命令が下されたのであった。
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ダンケルク 同盟軍欧州派遣軍総司令部
「敵軍に動きがあった、後方から新手の部隊が続々と補強されて来ている。どうやら総攻撃を考えているようだな」
「では打合せ通りに動きますか」
「そうしてくれるか、イギリス本土の総軍司令部に連絡してくれ{狐は巣穴より這い出した}とな」
「ハッ!」
この事態を受けて要塞線で抵抗を続けていたベルギーは国内のユダヤ人や脱出を希望する人たちの国内からの退去が終了したため王家と政府はイギリス本土に移動、都市は自由都市宣言を行い軍は撤収してダンケルクに後退した。ドイツはベルギーを接収した後前進しダンケルクを陸上から完全に包囲した。
そしてドイツ軍より軍使が送られダンケルクの部隊に降伏を進めたが、その返答は{言葉にての応酬の時は終わった、ただ流す血の量と鉄の量のみが雌雄を決するであろう}であった。
こうしてダンケルクの戦いは本格的に始まったのであった。
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