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平賀譲は譲らない  作者: ソルト
1章 明治編
13/231

12話  譲(おれ)の居ないアメリカでその1

※11/22 修正


※3/14修正

「本当にこんなに補助金が出るんですか?」


「ええ、軍と外務省の合同ですからね」


 星一が帰国したため残って日米週報を発行していた安楽の元に平賀の約束した補助金を持ってきたのは本郷嘉明大尉である。今回彼は海軍大尉の身分を名乗っており肩書きは米国大使付武官としてである、もちろん籍だけで勤務実態はないのであるが。


「これだけあれば……来月からでも再開できます!」


「それは有難いですね、あとこれをどうぞ」


 鞄から取り出した書類を安楽に渡す。


「このリストは?」


「アメリカ図書館協会にお願いして置かせてもらえることになった図書館のリストです」


「こ、こんなにですか!」


 1876年にフィラデルフィアで創設されたこの協会は数万の会員を擁しておりここを通じて公私問わずに図書館に定期で置かせてもらえればその影響は計り知れない。


 安楽は国が本気になった結果に驚きを隠せなかった。


「あと、日本から最新の情報を送りますよ、この事業は日本の事をアメリカの市民にもっと良く知ってもらうためですから、協力は惜しみませんよ」


 そう言って本郷は人懐こい笑顔を見せるのであった。


>>>>>>>>>>>>>>>>



 大使館に戻った本郷大尉を待っていたのは金髪碧眼の男であった。


「瀬掘曹長着任しました」


「ご苦労、話は聞いてると思うが君の任務は極めて重要なものだ、君は先祖が小笠原の漂流民だったそうだな」


「はい、難破した船に乗っていました、そして小笠原ボニントウに流れ着いたのです、そのまま土着して現在に至ります」


「そうか、今後も君と同様な任務に付く者たちを送るからな、よろしく頼むぞ」


「了解であります」


 瀬掘曹長を送り出した本郷は大使の青木周蔵のところに出頭した。「本郷君、ルーズベルト大統領は上機嫌だったよ、桂君とハリマン氏の協定が護られたのがよほど嬉しいと見える」


 少し憮然とした表情なのは彼が大陸への利権独占を画策しているグループの一員だからだろう。


「まあ、代わった児玉総理が追認されましたからね、国債を引き受けてくれたヤコブ・シフ氏もハリマン氏に協力して投資をしてくれるのでしょう?」


「だが我が軍が血を流したあの満州を明け渡すのは…」


「金がなければ開発も出来ませんし、借金だらけで金も引っ張れない、借金を減らして投資もしてくれるんですから有難いではないですか」


「それも、そうだが…」


「満州内で探鉱の許可を貰うことが出来ました。石炭か石油でも出れば大もうけできますよ」


「出るのかね?」


「石油はかなりの確率で出るそうです、最もわが国の製油能力は低いので機械も技術もアメリカかイギリス頼みになりますから」


「なるほど、それでアメリカを引き込むのか」


「そういうことです。こちらに移民している日本人もかなりの数になります。それらの権利保護の件よろしくお願いします」


「わかった、それは掛け合おう、そうなるとご機嫌な大統領だとやりやすい」


「本当ですね」


 本郷は後に施行される移民法がアジア人全体を締め出すものになると聞いていたが大使には話さない。大使の頑張りと政策変換がいい方向に向かうのを期待するのみであった。



 最初にでた桂・ハリマン協定とはロシアから得た南満州鉄道を共同で運営しようという協定である(50:50比率)


 中国市場に参入し遅れたアメリカが喉から手が出るほどほしい物で、一実業家のハリマンだけでなく背後には国の意向があるのだ。


(まあ、あいつは大陸にアメリカが来ればロシアを牽制できると言ってたがまあ、そうだろうなあ一度手に入れた利権は手放すのは惜しいからな)


 そう考えた本郷は譲のことを考える。


(全くたいした奴だ。日本を動かすえらいさんたちを高々一技術者が動かしているんだからな)


 そして次の任務のために大使館を出るのであった。

ご意見・感想とか歓迎です。

あくまで娯楽的なものでありますので政治論とかはご返事できないかも…

読んでいただくと励みになります。

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