114話 帰還
※ 摩擦熱は誤りでしたので修正しました。 5/15
※ 一部修正5/16
「大気圏降下船は予定通り降下軌道に乗りました、現在のところ降下角度に問題なし」
「降下船より降下カプセル切り離し準備、回路問題なし、電源正常、カプセルへの電源供給問題無し」
「カプセル内生命維持装置正常作動、内部温度摂氏22℃、生命反応あり」
管制室は今回の計画の最大の山場を迎えていた。
譲も糸川・ブラウン博士も皆職員の報告を聞き漏らすまいと耳を澄ましている。やがて待ちかねた報告が上がって来た。
「カプセル切り離し成功! 降下速度は許容範囲内です!」
その言葉を聞いた皆が安堵のため息を付く。
「第一関門突破ですね」
糸川が譲に声をかける。
「そうだな、後はカプセルの耐久温度内に空力加熱(断熱圧縮)が収まるかだが……」
「以前の実験では問題ありませんでした、カプセルの温度限界は計算での数値より高めになっております」
「予期せぬ事が起きない限りは大丈夫か……」
その会話をしていると新たな報告が耳に入る。
「カプセルのパラシュートが開きました、減速しています」
「落下軌道の計算による着水予定地点が出ました、回収班に連絡します」
その予想地点は譲たちが理想としていた地点とほぼ同じであった。
「南鳥島の近海か……理想的な場所だな」
「最寄りの回収班はどこだ?」
「海保の{まなづる}の班です」
「ほう、公試で出かけて初物か、縁起がいいな」
「無事に回収してくれればいうことなしですね」
「全くだな」
譲としても{まなづる}の装備の試験にもなるので言う事無しだと思っている、元々の任務が遭難船舶などの救援なのだから丁度良かったわけである。
「あとはあいつらが無事に回収できればいいんだがな……」
そう言って腕組をする譲であった。
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南鳥島近海 海上保安庁 航空巡視船 まなづる
「カプセルの落着位置は判るか?」
船長の質問に電探の担当士が答える。
「電探で追跡できております、本船から北に29キロの海面に落下確認、またカプセルよりビーコンが発信されており追尾できております」
「判った、ヘリを向かわせろ、現物を確認し沈んだりしないか監視させろ、本船が着くまで交代で監視だ」
「了解しました」
「万が一他国の艦船が接近したら警告せよ、軍艦であれば海軍に対処してもらう、海軍さんは一番近くにはだれが居る?」
「第六艦隊の潜水艦救援艦の千早ですね、それに護衛の駆逐艦が一隊ついてます」
「連絡して援護を要請しろ、多分居ないだろうが邪魔する奴は排除してもらわねばならん」
(第六艦隊の艦がいると言う事は潜水艦も居るはずだ、抑止力としては十分だな)
船長は頭の中でそう考え改めて目標へ船を向かわせるのであった。
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海保のヘリが飛び交う下には海面を漂う大気圏突入カプセルが見える、熱で変色しているが、破損はしていないようで沈む心配はないようだ、念のためヘリから要員が降りてフロートを巻きつけているので安心である。
到着したまなづるは慎重にカプセルに接近していき牽引用のワイヤーを接続する。そしてデリックで下ろされている後部の舷側エレベータにカプセルを載せて回収した。
エレベータが上げられて飛行甲板まで運ばれたカプセルは慎重に開封作業が行われる事になる。
「ガイガー=ミュラー計数管での計測では問題無しです」
「ハッチを開けろ」
ハッチが開けられて中の生命維持装置に繋がれたケージが出されて中に居た物たちが出される。
「キューン・クゥーン」
「お帰り、タロウ・ジロウよく頑張ったな」
乗組員に頭を撫でられた2匹のカラフト犬は狭いケージから出してもらえたのと撫でてくれる人間に喜んで嘗め回していた。今回この兄弟が選ばれたのはカラフト犬が極限状態に強い種である事と忍耐強いということが以前行われた南極点探検で確認されていたからであった。
因みにこの兄弟はそのときに参加した犬のタロウの子孫でもあった。
カプセルの回収成功と中に乗っていた2匹の犬の生還によってこの飛行実験は成功と判断されて公開される事となった。
日本では{世界初の快挙! 宇宙へ一番乗り}とか{奇跡の生還タロウとジロウ!}などと書き立てられカプセル回収の様子がニュース映画で全世界に配給されてにわかに宇宙への関心が高まる事となったのであった。
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