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平賀譲は譲らない  作者: ソルト
3章 昭和編
121/234

111話  群狼とハンター

※ 若干短くなりました

※ 5/1加筆修正しました。

  北海 オランダ沖


 この海域にはヴィルヘルムスハーフェン軍港から出撃したドイツの潜水艦部隊がオランダに向かう救出部隊を待ち受けていた。


 彼らはすでに小規模な船団を襲撃しており貨物船や小型の客船が沈められていた。


そして今駆逐艦たちに護られた客船たちが襲撃を受けていた。


「ウォーラス撃沈! ヴァルハラ航行不能、トーチ大破炎上中であります」


「客船に被害は?」


「駆逐艦が盾になって護りました、被害船なし!」


「そうか、勇敢なる我が海兵たちに感謝を…」


 司令官の言葉に幕僚が頷きながら声を掛ける。


「司令官、残る護衛艦はこの旗艦ランスを入れて五隻です、このままではとても本国イギリスまでたどり着けません」


「そうか、覚悟を決めねばなるまいな、Uボートは何隻現れた?」


「現在ウォーリスが追っ払っているのを入れて8隻目ですな」


 艦橋から見える遥かな先に味方の駆逐艦が爆雷を投下している、残念ながら撃沈する事は難しいようだ。


「全速で本国に向かうぞ、1ヤードでも近くに行くんだ」


 司令官はそう命じて前を見た、正直全滅するかも知れないと内心では思っていたが、それを口にしない自重はあるのであった。


>>>>>>>>


探信儀アクティブ・ソナーに反応あり、敵性潜水艦(Uボート)と断定!」


対潜迫撃砲スキッド発射用意! 射程に入り次第攻撃」


「射程に入りました」


「撃ち方始め!」


 ヘッジホッグよりも大型の弾体がロケットモーターの力で打ち出され水中に着水する、そして暫く後、爆発を示す水柱が立ち上がった。


「圧壊音確認、撃沈確実!」


「よし! 次行くぞ、再装填急げ!」


 再装填を急ぎつつ次の目標てきに向かっていくのは日本海軍護衛艦隊所属の護衛駆逐艦山桜であった、八重桜・初桜・若桜と隊を組んでおり第101護衛隊と呼ばれていた。


「イギリスさんの部隊は大丈夫でしょうか?」


「ギリギリだが何とかなるんじゃないか、あっちには俺たちより足の速いのが行ってるからな」


 先任参謀が司令に質問すると司令はそう言って空に向けて指を指した。


「狼が群れを生すなら猟師ハンターは討ち取るまでの事だ」


>>>>>>>>>>>>


 あれから3度襲撃を受けた船団は駆逐艦ウォーリスが返り討ちに会い轟沈し、アンソニーが大破して放棄された。難民を乗せた客船もメリー号が魚雷を受けて沈没、絶望感が部隊を支配していた。


「司令、このままでは……」


「そうか、無線での呼び出しは?」


「現在この海域は無線封止中です、呼び出しましたが返答がありません」


 其の会話に割って入ったのはレーダーを扱う士官である。


「レーダーに飛行機の反応あり、こちらに近づいてきます」


「敵か…対空戦闘用意」


 対空戦闘を準備した彼らの前に姿を見せたのは。


「味方です、日本の航空機です」


「フロート付き? 水上機か」


 旗艦の上をフライパスして行ったのは4発の大型水上機であった。


「イギリスの艦隊を確認、手ひどくやられているな、無線封止解除、海に投げ出された難民と乗員の位置を連絡、救助を向かわせろ。当機はそのまま狼狩りを行う」


「了解、打電します」


 無線士が本隊を呼び出している間に水上機{一式飛行艇}は高度を下げ潜水艦の探知を始める。


 川西 一式飛行艇{増加試作仕様}


全幅 38m

全長 30m

全高 9.2m

全備重量 28500kg

発動機 本田RA183 ×4

最高速度 500km

武装 武式20ミリ機銃連装5基 同12.7ミリ4門

爆装 爆弾最大2.5トン (航空爆雷15発、または魚雷2発)


「機長、KMXに潜水艦反応があります、深度80m」


「了解、爆雷投下準備」


「攻撃開始!」


「投下!」


 爆雷が投下され暫くすると大きな水柱が立ち辺りに油や浮遊物が浮かび上がる。


「撃沈確実!」


 さらに僚機も到着し狼たちは狩る側から狩られる側に転落したのであった。


>>>>>>>>>>>>>


「水中爆発音、船体圧壊音確認! U2552と思われます」


「艦長! すでに我が方は二十隻以上やられています、それ以上かも知れません」


 当初オランダ沖に展開していたUボート部隊は三十六隻だったがすでに半数以上がやられてしまったことになる。


「こんな事になるとは……」


 先の大戦を潜水艦乗りとして過ごした歴戦の艦長は半ば呆然としていた。日英の駆逐艦に苦戦させられた戦いを省みて再建された潜水艦隊は新型の装備と機関を搭載し格段に性能を向上させていた。そのため緒戦では互角以上の戦いが出来ていた。


 だがそれも長くは続かない、特に日本軍は何故か此方の先手を打って来ておりその結果がこの有様であった。


「だが、ただでやらせるわけにはいかん、輸送部隊をやるぞ、ヴァルター始動、全速を出すぞ! 水雷長{ツァーンケーニッヒ}を装填」


 ベテラン艦長の為に用意された最新型の潜水艦に搭載されていた非大気依存推進機関であるヴァルター機関が始動する。これは過酸化水素水を触媒で分解して酸素と水蒸気とした物に軽油を加えて燃焼させてタービンを回して推進力とする機関である。

 

 危険な劇薬である過酸化水素水を使うのは狂気の沙汰といわれてもしょうがないが、ドイツは自国の技術に狂的な自信を持っておりためらう事はなかったのであった。その効果もあって水中速力25ノット以上の高速で目標に迫っていく。


 そして音響追尾魚雷{ツァーンケーニッヒ}も試作兵器として投入されておりここで切り札として使うことになったのであった。


「船団の位置は大体で良い、後は魚雷が自分でどうにかする、発射準備出来次第撃て! 」


 艦長は船団の積んでいる物が武器や物資ではなく難民である事は知っていた、だが本国政府の命令には従わなければならない、葛藤を押し殺して命令した。


 魚雷は発射され、撃沈されるまでそれは続き16本の魚雷が放たれたのであった。

 


ご意見・感想ありがとうございます。

ブックマーク・評価の方もしていただき感謝です。

あくまで娯楽的なものでありますので政治論とかはご返事できないかも…

読んでいただくと励みになります。

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