11話 譲(オレ)とドレッドノート
※6/21 ジョン・サーストンをジョージ・サーストンに修正
※11/22 修正
※3/14修正
ポーツマス講和会議から半年、学業に励む俺の元にはその後の日本の変革が伝えられ続けた。
最大の驚きは児玉内閣発足後の組織変革だった、俺が指摘した問題点をことごとく潰しにかかっている。
最大の問題点であった内務省は文字通り{ぶっ壊された}文部省、警察省、又警察組織に属していた消防組織が災害対策省として独立した。さらに運輸建設省と国土開発省という国交省を2で割ったような省ができた。後も細々と分けられて「省の中の省」といわれた巨大な権力構造が解体された。
内務大臣兼務はその為だったのだ。
軍も改編された、これまで陸軍省、海軍省に分かれていたのを防衛省にまとめてしまったのである、これは一部で始まっていた陸軍と海軍の乖離を防ぐための布石として提案してあったものだ、防衛省は統帥本部の下に陸軍、海軍、そして空軍が創設された。空軍については将来必要だと説いていたのだがこの機に一気に作ってしまった、ライト兄弟の飛行機が飛んだのが1903年だから滅茶苦茶早い、気球は日露戦争でもロシア軍が観測気球を飛ばしていた、飛行船は実用的なのがすでに飛んでいる。空軍に懐疑的な連中には児玉総理が旅順攻略戦を例に挙げ、空からの観測が出来れば203高地や望台攻略など無理をせずに旅順への砲撃が出来たことを説いて納得させた。
本当に力技だよ。
軍の学校も陸軍士官学校と海軍兵学校が一つとなって防衛士官学校となり、基礎学年2年過ぎてから陸軍、海軍、空軍に別れてから3年経って卒業となる。幼年学校は予備防衛学校に改称して貧しくて進学できない者たちへの門戸を開いた。
また官僚養成学校も作られた、上級学校に行けない貧しい者の救済策である。
「かなり思い切ったな」
「児玉さんは自分の居る間に問題を潰そうとしてるんだろう」
そう、児玉源太郎は1906年7月23日に脳溢血で倒れるのだ。血圧を下げるのが有効なんだが食餌療法位しか今は薬がない、1960年位にやっと一般で薬が出るからな。
「一応医者をつけて健康には注意させているんだ」
俺の言葉に先日イギリスに来た本郷大尉が返事する、説得憲兵の手柄で昇進したらしい。
「当面俺はお前さんとの連絡役だ、色々調べたいこととかあったら言ってくれ」
只者ではないと思っていたが間諜としても有能なようだ。ちなみに姓名は偽名だそうで、俺が書類に書いた山中峰太郎の冒険小説の主人公から名前を取ったに違いない。
そういやまだ士官学校を卒業したばかりだよ山中峰太郎、下手に干渉すると小説家に転職しないかも知れないな…幼年学校>士官学校>大学校卒のエリートだもんな。
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ドレッドノートが進水するとの事で久しぶりにポーツマスを訪れた。起工して半年なんて早くね?今の日本じゃ倍は掛かるかもな。
うろうろとしているとジョージ・サーストンを見つけた。
「やあ、ユズルも進水を見に来たのか、どうだこいつは」
「もう進水なんて早いよなと思ってな、まあこれから艤装があるんだが」
「そうだな、お前から見て気になるところとかあるか?」
「まあこないだの話じゃ駆逐艦対策として搭載されている3インチ(7.6cm)速射砲の配置が主砲の爆風にさらされて砲員に被害が出るような場所だと思うんだが」
「……そういえば、よく気が付いたな」
「あ、ああ今までにない仕様の船だからテストも出来ないんじゃと思ってな」
俺は言い過ぎたかなと冷や汗を流したが、ジョージは気が付いてないようだアブネー。
そういや日本で建造される予定だった戦艦が起工延期になった件でドレッドノートとその後の艦の情報よこせと言ってきたな、うかつに手紙に書いたら情報戦に長けたイギリスにばれそうだな、
本郷大尉に頼むしかないな。
俺は情報をしたためるためにポーツマスを後にするのであった。
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