105話 其の頃の日本では 2
譲視点
呉に向かう特急「安芸」の車窓から瀬戸内海を眺めている。
すでに三原を過ぎ山陽新幹線から呉線に乗り入れている、「安芸」は前世で言う{ミニ新幹線}で在来線を島安次郎に標準軌化させたので軌間可変電車を作る必要がなくなったので簡単に乗り入れが出来る、呉は軍港がある街だから新幹線があってもいいけど在来線もないと市民生活が困る事になるが両方別に作るのは無駄になりそうなのでそうなった、但し広島呉間は立体交差をつけて踏み切りをなくしたり高速運転できるように複線化と線形改良で高速で走れるようにしてある、呉・三原間は新設だったので基本高架で駅間の距離以外は新幹線に近い仕様である。
乗り換えの必要もなく東京から来れるのは便利である、飛行機の方が早いが少し怖いのだ。それに今回自分の乗っている「安芸」は通常の編成では無いと言う事もある。
そして今回のイベントのある場所に到着する。
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第三者視点
呉海軍工廠
「戦艦{大和}と命名する」
天皇陛下が艦名を読み上げると軍楽隊が{軍艦}を演奏し船渠に海水が注入される。
会場には政府と軍の高官が集まり、各国の大使などが参列している。テロを警戒して国民は会場には入れないが会場の近くに列を成して見物しそれでも入りきらない人たちは近くの高台に上って見物した。
「おい、大和が引き出されていくぞ、でかいなあ」
「向こうに見える長門型が巡洋艦に見えるぞ」
観客が感想を述べている、先ほどの艦は現在連合艦隊旗艦を勤める陸奥であった。其の陸奥よりも引き出された大和は一回り以上大きいのである、驚くのも無理の無い話しであった。
「向こうには{比叡}もいるよ」
「明日大神で二番艦の進水式があるので陛下はあれに乗られて行くんだろう、この場に{御召専用艦}が来るのはそういう意味だな」
民衆の間では比叡は陛下の御召しには必ず使われると認識されており海軍の方もそれを意識してか近年欧州派遣艦隊に属したことは一度もないという徹底ぶりである。
無事に進水式・命名式が終わり陛下とその御一行は比叡に乗艦して大神に向かうのであった。
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比叡艦内 貴賓室
ここには人払いがされており中にいるのは陛下の他は譲とその素性を知る者たちだけであった。
「やはり欧州は独逸が問題か?」
「残念ながら本郷中将からの報告ではフランスなどに向かった部隊に確認されています」
斉藤実が譲に尋ねると彼は残念そうに答える。
「三十五式改と一式砲戦車でなんとかなると思ったのだが……」
鈴木貫太郎侍従長がうめくように言葉を発すると陛下が譲に尋ねた。
「繰り上げ生産の四式で何とかなるのか?」
「予断は許しません、最悪次の準備はしておきます」
「空の方も気になるがそこは大丈夫なのか?」
「すでに新型機の方は配備が始まっています、エンジンの方も強化されてますし、万一敵がジェットを出しても対応策はできています」
「なるほどな、となると序盤が大事というわけだ」
「その通りです、いかにフランスに攻め込む独逸の攻撃をしのぎ切るか、それがその後を決めることになるでしょう、その為にはいかなる手も惜しむべきではありません」
「平賀よ承知した、東条には朕からも話しておこう」
非常事態に予算を使うにあたって財政を一手に引き受けている東条大臣に陛下が話をすれば忠義に篤い彼ならうまくとりはかってくれるだろう。
「後は我が国にいる獅子身中の虫共についてですが……」
その後も情報の交換と対策は話し合われたのであった。
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大神工廠 第三船渠
ここで大和型戦艦二番艦{武蔵}が建造されているのは国民に広く知られている。建造中にも度々マスコミの取材でニュース映画や新聞等に掲載されており国民は新たに加わる戦艦に期待を掛けていた、又各国にとっても軍縮条約終了後に作られた戦艦の性能は非常に気になるところで表裏両方で探りを入れてきていた。
こちらの方も無事に命名式が終わり{武蔵}は無事に船渠を出た。
「それで、裏付けは取れたのか?」
「残念ですが確たる証拠は手に入りませんでした」
「それだけ機密保持が厳しいのだろう」
「巧みにぼかされていましたが長崎と横須賀で建造予定が入っている艦があるそうです」
「過去の例でいえばそこで三番艦と四番艦が作られる公算が大きい」
「もうすこし確実な情報が欲しいな」
「では{ストロウ}に確認させますか?」
「もちろんだ。あれは我々にとっての切り札だ、まさか日本も権力の中枢の近くに我らの息のかかった者が居るとは思うまい」
進水式に招かれたアメリカ大使とその部下は洋上に浮かぶ{武蔵}を眺めながら会話していた。彼らにとって知りたいことはこの大和型戦艦が今後も建造されるかどうかであった。
普段であれば名代が進水式などには派遣されるのであるがこの両艦に関しては陛下自ら臨んでおり国としての期待が高いのが窺えるのであった、それは日本が今後も戦艦を海の主役として扱うことを意味するのか?本国から与えられた指令に彼らは更なる情報収集を進めるのであった。
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