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平賀譲は譲らない  作者: ソルト
3章 昭和編
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104話 其の頃の日本では 1

第三者視点


 欧州で戦争が始まった頃譲は総研の会議室である者たちの訪問を受けていた。


「遂に出来ましたか……」


 集まっているのは東芝、日立、ソニー、日本電気などの電気メーカーの技術者たちであった。彼らはある目的の為に集められ研究をしていたのであった。


「はい、集積回路の方は量産できる所まで出来ております、すでにそれを搭載した無線機や電波探知機などの量産準備も完了しております」


「そしてこれです」


 机の上に置かれたのは小さな長方形の本体に金属の小さな足が多数両側に並んで生えている物体である。


「ついにマイクロプロセッサが出来たか」


「はい! これで電子式卓上計算機が出来ます!」


「計算作業が大幅に短縮できますな」


「それだけではない、あらゆる分野で応用が可能だ、日本の産業に革命が起こるぞ、これも総研から教えてもらった技術情報があればこそです」


「なに、関東大震災で被災した技術研究所で研究していた資料と欧州から集めた資料を組み合わせて今回の技術資料が出来たのです」


 譲はチート能力で手に入れた資料の出所をそうやって胡麻化したがそれには誰も気が付いていない。


「それに豊田君が{カイゼン}運動を頑張ってくれたので日本の産業の業務効率や品質不具合防止などが進みましたしね」


 豊田君とはトヨタ自動車を立ち上げた豊田佐吉の長男で本来の歴史ではトヨタ自動車の創業者となった豊田喜一郎である。


 彼がトヨタ生産方式を部下の大野耐一らと確立したのを知っていた譲が日本の技術力の向上スピードを上げるには彼しかいないと思い{産業改善カイゼン委員会}を設立し彼を三顧の礼で招いたのであった。


 それに応え豊田喜一郎は社長の地位を一族の豊田利三郎に譲り委員長に就任、ジャストインタイム・かんばん・7つの無駄などを掲げ日本の企業を回り指導する役割を担った。それによって日本の各産業は生産性と質の大幅な向上を成し遂げ欧米の企業を上回る総合的な技術力・生産力を身に着ける事が出来たのである。


 もちろんそれに対して譲の方もトヨタには格別の扱いとして未来の技術情報を渡しており、トヨタ自動車の主力車種であるクラウン・ランドクルーザー・コロナ・カローラの名を持つ車種が発売されており北米や欧州にも輸出されトヨタの名を轟かせたのであった。


閑話休題


「このマイクロプロセッサは4ビットですが8ビットの物も視野に入れております。そうすれば一度に処理できる情報が大幅に上がりますからな」


「そうなれば自動計算器コンピュータも夢ではありませんな!」


 技術者たちの興奮にその事を{知って}いる譲は若干苦笑いで応じたのであった。



>>>>>>>>>>>


譲視点


 やれやれ、やっと集積回路の生産の目途が経ったか、転生してから30年以上経った今、それが早いか遅いかは判断が分かれるところだな。


 情報を早めに出したからと言ってすぐに作れるものではないし安定して量産できるようにするにはこの位でも早かった気がするね。


 豊田喜一郎が{産業改善委員会}の会長を受けてくれたのは大きかったよ。


 お陰で製品の品質が向上して欧米の製品の質に追いついた……追い越しているな。


 欧州戦線もソ連には勝っているがドイツ相手は苦戦している、正直フランスにはがっかりだね。イギリスに到着した日本の増援とイギリス軍で何とかしなくちゃならん、本郷中将が行っている工作がうまく行けばだいぶ楽になるんだが。


 とりあえず明日は富士山麓演習場での新型戦車の試作車の試験でその後は直に呉に行って公試に参加しなくてはならん。


 そういえばアインシュタインたちにも見せるものがあるしな。


 相変わらず忙しいままだよ。


>>>>>>>>>>>>>>


第三者視点


 翌日譲たちは富士山麓演習場に来ていた、すでに原乙未生少将が来ており試験を行う部隊に指示を出していた。


「平賀所長、三十五式改と一式砲戦車の準備は出来ております、直に始めてよろしいですか?」


「ああ頼む、どのくらいの物になったか楽しみだな」


「よし、先ず三十五式改より試験を行う、戦車前進!」


 原が無線で指示を与えるとディーゼルエンジンが唸りをあげて戦車を前進させる。



三十五式中戦車改 (開発名チハ改)


全長   9.2メートル


車体長 6.7メートル


全幅  3.2メートル


全高  3.3メートル(車載機銃含む)


重量  35トン


懸架方式 トーションバー方式


速度 54キロメートル


変速機 トルクコンバータ付きオートクラッチ


エンジン 三菱 空冷4ストロークV12気筒ターボチャージドディーゼルエンジン

      650馬力


装甲 砲塔110ミリ 車体前面90ミリ


主砲 零式52口径90ミリライフル砲


 90ミリ砲に換装し(砲塔も新しく大型砲塔になった)攻撃力を増している、さらに装甲を強化したため重量が増したが三菱がエンジンを強化して馬力が上がったため機動力には不安がなくなった。


「砲撃開始!!」


 命令が下ると前進していた二両の三十五式改は停車して的に向けて砲撃をした。


「全弾命中!」


「90ミリ砲もいい感じだな」


「攻守のバランスが良くなりましたな、機動力も維持していますし主力戦車としては十分ですな」


「まあな、次は一式砲戦車だな」


 次に現れたのは足回りは三五式と同じではあるが上面の砲塔を廃して固定式の戦闘室を付け三十五式よりも大きな砲を搭載している戦車であった。


試製一式砲戦車 (開発名ホロ)


全長   9.1メートル


車体長 6.7メートル


全幅  3.2メートル


全高  3.1メートル(車載機銃含む)


重量  38トン


懸架方式 トーションバー方式


速度 50キロメートル


変速機 トルクコンバータ付きオートクラッチ


エンジン 三菱 空冷4ストロークV12気筒ターボチャージドディーゼルエンジン

      650馬力


装甲 砲塔前面120ミリ 車体前面90ミリ 


主砲 一式51口径105ミリライフル砲L7A1


 主砲のL7はイギリスのロイヤル・オードナンス(王立造兵廠)とボフォース・日本製鋼が共同で開発した新型戦車砲である。


 高速徹甲弾を使えば相手が前面装甲を向けていても撃ち抜けない物は無いと思われる強力な砲であった。


「こいつなら待ち伏せなどの限定的運用ですが大概の敵はやれると思いますよ」


「ああ、敵が現状の配備でいるならな」


「それはどういう……?」


 原の問いに譲は鞄より表紙に赤で{極秘}と書かれた書類を原に渡す。


「情報部からの情報だ」


 受け取った原は書類に目を通していくが見る見るうちに険しい表情になっていく。


「まさか! これほどまでとは……」


「次期主力戦車の繰上げ投入……出来るかい?」


「わかりました、増加試作扱いで取り掛かります。三菱の丸子工場でしかジグの関係で当分は作れませんので三十五式改のラインを止めて作ります」


「三十五式改も当分は必要だろう、日立の下松鉄道車両工場に生産依頼しよう」


「お願いします」


 彼らの目の前にある小山の稜線から三十五式よりも車高が低くより丸みを帯びた戦車が顔を出し車体を停止させる、そして前方の標的に向かって発砲し見事に命中弾を出した。


「アドルフ・ヒトラーとフィルディナント・ポルシェを排除した事がこの結果を招くとは……」


 譲の呟きは誰にも聞かれる事もなく風に流されていった。

ご意見・感想ありがとうございます。

ブックマーク・評価の方もしていただき感謝です。

あくまで娯楽的なものでありますので政治論とかはご返事できないかも…

読んでいただくと励みになります。

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