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平賀譲は譲らない  作者: ソルト
3章 昭和編
110/231

103話 北部戦線異状なし 3 ~フライング・フィン~

※ フライング・フィンは本来の用法ではありません


※ 修正しました 傾聴

第三者視点


 フィンランドとソ連の戦いが始まって空の方でも激戦が続いていた。フィンランドは当初オランダのフォッカーD21を輸入して配備していたがこれは性能的にも不満があるものであった。


 それでもルーッカネン中尉のL戦闘機隊はアールネ・ユーティライネンの弟のエイノ・ユーティライネンらが活躍して戦果を挙げていた。


 だが数と機体の差は歴然であり早めの手当てが必要とされた。当初はイギリスからスピットファイアが送られるはずであったが生産が追い付かないということで同じマーリンエンジンを積んだ川崎のpääskynenツバメが配備される、又偵察機や爆撃機も送られて来てここに反攻の準備が整ったのであった。


「傾聴! ソ連軍の物資集積所の場所が航空偵察で判明した。ここを叩けば奴らは燃料や弾薬を前線に送れなくなる、奴らをこの極寒の地で氷詰めにしてやれ!」


 出撃した攻撃隊は偵察機haukka(日本語名 鷹 零式司令部偵察機のフィンランド名)に先導されて進んでいく、迎撃に上がってきたソ連軍機は戦闘機隊に打ち負かされる。


「目標視認! 爆撃隊進路そのまま!」


 先導機からの連絡に爆撃隊が目標上空に侵入し爆撃を開始する。


「爆弾槽開け! 爆撃用意!」


「照準よし! 爆撃開始!」


 開かれた爆弾槽から爆弾が投下され地上の物資に落着する。


 穀物を積んだ貨物車が爆弾の爆発で引き裂かれ中身をぶちまけ、燃料を積んだタンクが爆発で引火して被害を拡大させる、地上の人員は消火どころではなく逃げ惑うばかりである。


 そして弾薬運搬車に命中したのか一際大きい爆発が起こる。


 その爆発は辺りに飛び火していき最終的にはこの一帯の物資の殆どを焼き尽くしたのであった。



>>>>>>>>>>>>>



「後方の補給基地がやられただと! 補給担当は何をしておったのか! 連れてこい」


 連れてきて任務怠慢の罪で処刑してやると息巻いている司令官に幕僚が冷静に答えを返す。


「担当者は襲撃で死亡しました、爆弾が直撃したそうで…爪の先程も残っていないそうです」


「防空隊の司令は? それに防空戦闘機部隊の司令は?」


「防空隊の司令も戦死しました。こちらは機銃で撃たれたとかでハチの巣です、防空戦闘機部隊の司令はその……」


「どうした?」


「行方が知れません、戦闘後基地の連絡機で飛び立ったそうで……無線も通じません」


「なんてこった!」


 司令官は忌々しそうに舌打ちをした、この失態を償うべき関係者がことごとく居ないのでは、粛清のとばっちりがこちらに来そうである。


(このままでは政治委員あいつに密告されかねん、どうする?)


 幕僚たちの向こうにいる政治委員をにらみながらどうするか考える。


 だがその考えを纏めることは必要なかった。


 司令部の建物の上に爆弾が命中して彼らを吹き飛ばしたからだ、司令官と幕僚たちとそして目の敵であった政治委員と共に。



>>>>>>>>>>>


「命中しました!」


「あそこが司令部で間違いないんだな? 打電するぞ、{我敵司令部に爆撃成功セリだ}」


 爆撃をしたのは偵察機haukkaの両翼に爆弾投下用パイロンを付けて爆装した機体である。


「爆撃は成功した、後は逃げるだけだ……」


 そこに地上から対空砲火が打ち出されてきた。


 機銃弾がいくつか機体に命中する。


「エンジンや燃料タンクは無事なようだな」


 そのまま何事もなく基地まで飛んできたが着陸するときにそれは起こった。着陸脚が滑走路に着いたときに片脚が折れて胴体着陸になったのだ。


「あーあ、やったか?」


「流石{ついてないカタヤイネン}だわ」


 見守っていた基地の整備員たちがため息を漏らす。操縦していたのは操縦技術は良いが搭乗すると必ず機体に何らかのトラブルが起きて事故を起こす{ついてないカタヤイネン}ことニルス・カタヤイネン軍曹であった。彼はそのトラブルメーカーぶりから戦闘機から降ろされて偵察隊に回されていたのであった。


 彼はその後戦闘機パイロットに嘆願の末復帰するが相変わらずトラブルに巻き込まれた、しかしその他の部分ではフィンランド空軍のエースパイロットとして活躍して戦後は公務員になり天寿を全うした。その事から彼は戦友たちからはそれだけの不運にもかかわらず生き延びたので「とてもついているカタヤイネン」だといわれることになった。


>>>>>>>>>>


ミッケリ フィンランド軍司令部


「制空権はこちらがほぼ取れているようだな、イギリスと日本の機体のおかげで助かった」


「地上部隊も楽になりますし、空から敵の補給線を圧迫できればソ連軍を領内から叩き出すことも出来そうです」


「奴らもこのまま損害が大きくなれば手仕舞いを考えてくれればいいが、あのスターリンがあきらめるとは思えないしな」


「では……」


「考えていても仕方がない、今は向かってくるソ連軍を叩き続けるだけだ、それにな、戦っているのは我々だけではない、戦局を変える場面は必ずやって来るさ」


 こうしてフィンランド方面は攻めるソ連軍がフィンランド軍に叩きのめされるという情勢になってきている、その戦局が変わるのは確かにここ以外の場所から起こるのであった。



ご意見・感想ありがとうございます。

ブックマーク・評価の方もしていただき感謝です。

あくまで娯楽的なものでありますので政治論とかはご返事できないかも…

読んでいただくと励みになります。

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