102話 北部戦線異状なし 2 ~白き悪魔~
※ ある人の名前ですが向こうの発音に近いということでそうしました
※ 或るゆるきゃらのファンの人へ ~ごめんなさい~
※ 3/12 内容を修正しました
第三者視点
フィンランド・ラドガ湖北部コッラ川付近
「それじゃあ出かけるとするぞ」
アールネ・ユーティライネン中尉が心底楽しそうに宣言する。まるでピクニックに出かけるような雰囲気で中隊は出撃した。
降雪の為白一色に染まった森の中を進む事一時間、中隊は敵の部隊を見つける。
「戦車が五両に対戦車砲部隊もいますね」
「おお、そりゃあ大猟だな! 食いでがある、中隊配置に着け」
ユーティライネンの命令を受けて部隊は配置に着く。
「配置に着きました」
「おお! じゃあ始めるぞ♪」
こうして中隊の戦闘が始まった。
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「敵襲!」
突然木々の間からの銃撃に歩兵が撃ち倒されていく。
「応戦しろ、戦車で撃ち返せ!」
隊長が指揮を執ろうとすると突然棒立ちになりバタリと倒れた。
「大隊長殿!」
副官が駆け寄ろうとするが同じく急に動きを止めて倒れ伏した。
「ひっ! そ・狙撃兵がいるぞ!」
駆け寄った兵がすでに2人が事切れているのをみて叫ぶ。
「ガッ!」
通信士が。
「ゲェ!」
指揮を引き継ごうとした中隊長が。
「な・何だ? どうなってる?」
指揮系統を担う人物が次々と射殺されていく。
「戦車なら大丈夫だ」
兵たちは戦車の陰に隠れようとしたがその戦車が砲を森に向けたところで砲が突然爆発する。さらに車体に銃撃を受けそれによる弾薬の誘爆で傍にいる者を傷つけた。
「敵兵が迫っています」
「いつの間に撃ち返すん・ガッ!」
指揮を執ることすらできないままに蹂躙されていく。戦車は次々と銃撃を受けて破壊され、対戦車砲部隊はスキーを履いた兵に回りこまれた上でサブマシンガンによって打ち倒されて行く。
こうして大隊規模の部隊は壊滅したのであった。
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「BT-7に対戦車銃は効きますね」
「装甲が厚い所でも15ミリしかないからな、こいつなら20ミリ位は抜けるしな」
フィンランドが自国で生産しているラハティL39対戦車銃が大活躍であった。
「戦車五両撃破、対戦車砲四門破壊二門鹵獲、いやー大猟だったなあ」
戦闘が終わりユーティライネン中尉はご機嫌である。
「戦利品は持ったな? 引き上げるぞ」
中隊の面々は戦利品の武器を隠していた雪上車の引くそりに積んで引き上げ始めた。敵の生き残りは最初武装解除して置いて行くつもりであったが、このまま帰ると敵前逃亡で死刑になるので連れて行ってくれと泣いて頼まれたので荷物運びをさせることになった。
「捕虜を取っても食料が減るだけなんだがな」
「それだけ敵は世知辛いんですね、なんか可哀そうになりますね」
「しゃあない、後方に送っとこう」
身も蓋もない会話をしながら進み途中で大休止をすることになった。
「お湯を沸かして食事にしよう、敵さんはここまでこれないからな」
携帯燃料で雪を溶かしてお湯を沸かして食事を作る、と言ってもカップの蓋を剥がしてお湯を注ぐだけの簡単な作業である。
「しかしこれで三分待てば食えるんだから便利だよな」
「味もいいしな、カップヌードル最高だな」
ユーティライネンも日本が送り込んできた戦闘糧食がお気に入りの様である。
「レトルト食品もいいですな、お湯で温めるだけで良い、しかもこの携帯ストーヴは煙が出ないので敵にも見つかりにくくて便利です」
そういいながら食事を済ませ休息をしている兵の中で銃を磨いている人物の所に向かう者がいた。
「シモ・ハユハ殿でしたか? あの狙撃は驚きました、指揮官を狙い撃ちにした事もですがまさか戦車砲の砲口を狙い撃つとは」
「戦車の砲口は大きいからね、狙いやすかったよ、うまいこと砲弾も誘爆してくれたし」
「……」
ハユハの技量を褒めるその人物であったがハユハの方は淡々と狙いやすいなどと言い絶句させる。
「それにサコ社から送ってきたこの新型銃が良かったのかな? 光学照準器は相手にレンズの反射が見えるので好きじゃなかったんだがトプコンの奴はフードが付いてるからいいね」
「そうなんだ……」
この銃はRK38というフィンランドのサコ社が作った銃だったが元々は日本で設計された物のライセンス生産品である、それに東京光学の光学照準器を付けた物が狙撃兵に渡されていたのであった、その正体は勿論あの知識チートが噛んでおり元の世界ではAK47という名前で世界中に拡散した銃である。
元々設計した人物はロシア革命時に家が富農認定されて市民権を剥奪されるなど迫害を受けていたのでロシア共和国に亡命済みであの国であの銃が作られる事はない。
狙撃銃としてはこれの発展型ともいえるドラグノフも検討されたが歩兵が自動小銃に装備改変する必要があり銃器メーカーの受注が逼迫していたので生産が後回しになっているのであった。
ハユハに話しかけた人物は日本の第五連隊の狙撃兵でこの中隊に増強として付けられた狙撃小隊の隊員である、東北の山中を又にかけて猟をするマタギの出身で腕に自信があったが、世界は広いのだなと思い知らされていた。
(マタギに伝わる野いちご落としやアバラ三枚も凄いがこの人は桁違いだ、第一距離が全然違う)
後に日本に帰った彼らがハユハの事を語ったためハユハは日本で一番知られたフィンランド人となった。その話はハユハの潜伏している森に入った敵部隊は一人も生きて帰らなかったとか、未確認戦果も含めれば800人以上を狙撃で倒しているとか、対抗して狙撃兵の精鋭揃いを送り込んだがすべて返り討ちにしたとか、前線を督戦に来たソ連軍の将軍を狙い撃ったとか、とある丘での戦闘ではサブマシンガンで200人以上打ち倒したとか眉につばをつけるような話も混ざってはいたが彼らは真面目な顔で紹介し{白い悪魔}{死を司る妖精}と仇名をつけた。
後に同じ国の作家がある緩キャラの元祖のような登場人物が出る小説や絵本を発表したが、日本では両者を結びつけるファンが多くて作者が文句を言うという場面があったそうである。
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