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平賀譲は譲らない  作者: ソルト
3章 昭和編
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94話 転進

第三者視点


 ポーランドに置かれている国連欧州派遣軍司令部は現在ポーランド国防軍司令部と合同で司令部施設を使っている、これは両者の作戦行動を円滑にする為の措置で以前から有事の際には取り決められていたので混乱は無かった、だがある部署がある電文を傍受した後にいささか少なくない混乱が起きた。


「独軍の暗号電文を解析した所奴らの主攻ポイントが判明しました!」


「どこだ? ポズナン方面、それともグディニャか?」


「それが……我が国ではないのです」


「それはどういう事だ?奴らは我が国に宣戦を布告してきたんだぞ」


「ですが奴らの軍は我が方ではなく西に向かっております、特に機甲部隊が優先的に向かっているのです」


「信じられん……直ちに国連軍司令部と協議せねば」


 ポーランド軍の暗号解読班はドイツのエニグマ暗号を完全に解析しておりこれまでも実績がある、この報告を受けて直ちに長距離偵察部隊を出す事になった。


>>>>>>>>>>>>>>>>>>>


 欧州派遣軍日本空軍の第一航空団第二偵察大隊に所属する偵察機がドイツ上空に侵入し地上を進む部隊を捜索していた。


「千早大尉、街道にドイツ機甲部隊を確認しました」


「方向はどっちに向いている?」


「車両の方向を確認……西です、西に向けて移動しております!」


「司令部に打電せよ、{ドイツ軍西進ス}とな」


「大尉! 敵の戦闘機です、機種はメッサーです」


「よし、逃げるぞ! 反転後、ロケットに点火して全開で振り切る」


餓鬼大将しれいぶこちら琵琶泥棒! 雷親父どいつぐんは西へ移動中、繰り返す……」


 後部座席に座っている偵察員は符丁を使いながら司令部に連絡する、 緊急加速用のロケットブースターを吹かしながら千早大尉の偵察機はメッサーシュミットBf109の追撃を振り切ることに成功した。


 その機体はまだ制式採用がされていない増加試作機であったが期待に応える性能を見せたのだった。試製零式司令部偵察機と呼ばれる機体は本来は1940年に制式採用になるのであったが戦争が近付く事を懸念しとりあえず試作したメーカーがつけたエンジンを積んで運用していた。


試製零式司令部偵察機

全長    11m

全幅    14.7m

全高    3.9m

翼面積  32平方メートル

自重    3367kg

最高速度 640km/h(6000m)

発動機エンジン三菱ハ112(社内名金星)1500HP×2

搭乗員 2名


 名前が零式になったのは1940年制式機として本来ならば四十式であるのだが、その命名法だと1942年の物は四十二シニとなるので縁起がうんぬんという声がありだったらこの年代は下一桁にしてしまおうとなった結果である。


 発動機エンジンは二千馬力級の搭載を検討されておりコンペで決定される予定である、参加しているのは三菱、中島と後幾つかしかいないために番狂わせが無い限り先の二社が選ばれると思われていた。


 暗号解析結果と強行偵察の結果ドイツ陸軍部隊の主力がポーランド国境から去ったのが確認された、そしてこの事はポーランド側とドイツ軍が向かった先にも影響を与えるのであった。


>>>>>>>>>>>>>>>>>>>


ポーランド東部国境地帯


「通信を傍受、ロシア語で{前進}とか{突撃}とか言ってます、始まったようですな」


「了解、全部隊に通達、{暴れ熊がやって来る、これは演習に非ず}以上だ」


「了解、通達します」


 国境付近に置かれた司令部での会話が行われた数分後に遠雷のような音が響いてきた、それがすべての始まりであった。


 この日ソビエト連邦はソ連・ポーランド不可侵条約を一方的に破り攻め入って来た、総兵力80万がウクライナとベラルーシから二手に分かれて侵入、対してポーランド軍は動員していた部隊で応戦することになった。


 ポーランド軍のエドヴァルド・ルィツ=シミグウィ元帥は中央に待機していた部隊の東部転進を命令、ドイツ軍の西進により西部の国境は守備隊のみで大丈夫と判断してのことである。


>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>


首都ワルシャワ郊外 軍臨時集結地


 ここでは前線に送られる予定の部隊や物資が集まり臨時の鉄道貨物駅から逐次出発して行っていた。


 スタニワフ・マチェク少将の 第10自動車化騎兵旅団 もその中にいた、彼の部隊が一番錬度も高く戦車の数も纏まっていたので切り札として待機していたのである、戦車は三十五式、十四式戦車、二十二式砲戦車、ST-1駆逐戦車で構成されており、増強部隊として砲兵旅団と機械化歩兵旅団、機械化偵察連隊が付けられて居り規模的には師団規模になっていた。


「戦場近くまでは鉄道で輸送してそこからは自力だな」


「敵の航空部隊が問題ですな」


 マチェクの話に参謀長が問題を提起する、ポーランドは陸軍の増強が精一杯で空軍機は戦闘機が少なく殆どが練習機であった、現在それらは訓練と機体の受け取りの為に殆どイギリス本土にいるからだ。


 空からの攻撃に鉄道ではなす術もなくやられてしまうだろう。


「空の方は日本空軍が来てくれることになっているから問題はない」


「彼らはやってくれるのでしょうか? イギリスはともかく我々とは軍事同盟を結んではいませんが」


「国連の戦争停止命令を破ったソ連は安全保障理事会より武力介入対象国になったからな、それが日本の介入の根拠になっているのだ」


「なるほど」


「それに我が国には日本の企業が欧州向けの工場を置いている、そこの資産と自国民の保護も大義名分にしているそうだ」


 それは自国にほん向けの日本政府の名分でありそのほうが国民の理解を得やすいからだとマチェクは聞かされていた、それに……


「嘗てロシア革命の折にシベリアで行き場を失っていた我が国の孤児たちを助けてくれたのは日本だけだ、彼らはきっとやってくれる」


 次々に貨車に積み込まれていく戦車を眺めながらマチェクはつぶやいた。


>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>


ポーランド東部国境地帯 上空


 ソ連軍の侵攻が始まってから何度目かの空戦が始まろうとしていた。ソ連軍は戦闘機I-16にツポレフSB爆撃機を擁し鉄道沿線に設けられた物資集積地を攻撃するのが目的である。


 その行動はレーダーで捉えられており迎撃部隊はすでに上空で待ち構えていた。


「第一、第二中隊はSBに向かえ、第三中隊はI-16を抑える、いいか! 爆撃をさせない事が最優先だ、撃墜数を競うんじゃないぞ!」


「「「了解しました!」」」


 迎撃に上がっている飛行64戦隊の戦隊長加藤少佐は常日頃から個人プレーを戒め無線を活用した集団戦法でソ連の空軍機を圧倒していた、勿論三七式戦闘機の性能が敵機よりも優れているのもあるのだが撃墜対被撃墜比率キルレシオは80:3で日本側の圧勝であった、だが機体性能と搭乗員の技量の低さをソ連は圧倒的な数で押し切ろうとしており予断を許さない状態は続くのであった。



ご意見・感想ありがとうございます。

ブックマーク・評価の方もしていただき感謝です。

あくまで娯楽的なものでありますので政治論とかはご返事できないかも…

読んでいただくと励みになります。

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