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平賀譲は譲らない  作者: ソルト
3章 昭和編
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93話 欧州各国事情と生産

譲視点


 世界は数え切れぬ程の野望と欲望とほんの少しの希望で動いている、いかに知識チートが頑張っても所詮はたった一人の足掻きである、分かってはいたけどね。


 結局第二次大戦も防ぐ事は出来なかった、後はなるべく大きくなる前に消す努力をするしか無いのが切ないね。ドイツに付くはずだった日本・オーストリア・イタリアは引き剥がしに成功した。日本・オーストリアはともかくイタリアはベニート・ムッソリーニがヒトラーの居ないドイツに興味が無いのが大きかった、ドイツとは防共協定すら結ばなかった、シュトラッサーもヘスも嫌いなようだ。


 スペイン内戦の対応も大きかったと思う、フランコの反乱軍と呼ばれるファシズム陣営と共和国側の共産主義陣営という選ぶのも嫌な二者択一だったのでイギリスなどは史実では中立を選ぶくらいだったのだが、反共産とドイツに介入させない為に東機関を使って非公式にフランコ側に支援を行った、具体的な仕事は共和国側が隠し持っていてソビエトに持って行こうとした莫大なキンを特殊部隊を送り込んで奪取し支援物資に換えてイタリア経由で送り込んだのだ、その為ドイツの介入は排除できたし有償支援のとりっぱぐれをしないで済んだイタリアに恩を売ることに成功した、ドイツは支援したかったようだがフランコは断った、同じファシズムでも方向性の違いのようだ、その為ゲルニカ空爆は無くなった為あの絵は産まれないことになった。


 最終的にはフランコは勝利して政権を奪ったが国内は荒廃して再建が大変だ、その為国外の嵐には無関係でいてくれそうだ、まあ後はイタリアだがここはあの男に任せるとしよう。


>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>


イタリア ローマ


 統領ドウーチェムッソリーニはこの日不本意な来客を迎えていた。


「ジェイムズとか言ったな、エチオピアの時は世話になったな」


「いえいえ、統領ドウーチェもお元気そうで何よりです、今回もお世話になります」


「抜かせ! 国連から遣わされたのが貴様なら碌でもない話であろう!」


「前回の事はさて置き今回の事は貴国イタリアの為になることですぞ」


「さて? どうだかな、信用できんな」


 彼らが会った前回の事とはイタリアがエチオピアに戦争を仕掛けようとしていた件でのことである、以前エチオピアに敗れていたイタリアは報復の機会をうかがっていた、その時国境で紛争が起きてそれを好機としたイタリアは軍事侵攻を企図したが国連が調停を持ちかけた、そのときの特使に選ばれたのが英国貴族籍を持つジェイムズ子爵(本郷)であった、このとき強硬に出兵を主張するムッソリーニに対して国連軍を派遣してでも紛争に介入すると主張、事実日本・イギリス連合艦隊が地中海に展開し日本陸軍の欧州派遣部隊も出動態勢に入った、大戦で勇名を馳せたこの部隊の前に軍事的には劣勢のイタリアは侵攻を諦めたという経緯があったのだ。


「貴様の狙いは察しが付いている、ドイツと同調するなというのだろう?」


「その通りです、同じファシズムを唱える国ということで親近感はあるでしょうが」


「ふん、その事なら断る! ……と言いたい所だがすでに決まってる、我々はドイツとは手を組まん!」


「それはどうして?」


「簡単な事だ、奴らはファシズムと名乗っているが本来のファシズムにはユダヤ人排斥などは入っていない、あの人種主義を崇める奴らは嫌いなのだ、ヘスやゲッペルスなどは特にな」


「それは有りがたいですね」


「忌々しい事だがその点については我々は同じ考えのようだ、それで我が国の為になるという事は何だ?」


「ではこれを見てください」


 本郷ジェイムズの手渡した書類を見たムッソリーニは驚きの顔を隠せなかった。


「我が国にスペイン復興の手伝いをしろと? そしてその費用はスペイン持ちだと?」


「そうです、破壊されたスペインのインフラや町を復興するためには海外からの支援が必要です、幸いその為に使える財源があり、あとはそれを主導する国が必要なのです」


「それを我が国に? どうしてだ?」


「フランコ殿は貴殿を尊敬している、その支援なら喜んで受けるでしょう、そうして貴方はスペイン復興支援を盾にドイツの参戦要求をはねつける事ができる、中立を宣言できる最大の切り札となる」


「そうか……これは受けねばなるまいな」


 彼の頭の中ではこの策は非常にイタリアには有益であるという事だ、フランコには感謝され自国の財布は傷むことなく復興支援景気でイタリアは潤う、対外戦争などより大変な利益である、これは受けねば愚か者のそしりは免れまい。


 こうしてイタリアはスペインの復興支援を名目に局外中立を選んだのであった。



>>>>>>>>>>>>>>>>>>>


ポーランド


「急げ! そいつはそこに置いておけ、エンジン組み付けのラインに回す、組みつけが終わった奴は砲が到着次第作業にかかれるようにしておけ」


 オーストリア連邦から来た貨物列車に積まれていたのは不思議な車両であった、履帯が付いた台形を組み合わせた形をしていて大きな転輪が目を引く、車体前部には覆いが掛けてあった。


「おーい!砲が来たぞぉ、降ろしたら直に取り付けるんだ」


「よーし、クレーン回せぇ」


 ソ連軍の侵攻が迫っている時に少しでも戦車が欲しいポーランドが手に入れたのはオーストリア連邦内のチェコにあるBMM社が同社の軽戦車をベースに作り上げた駆逐戦車ST-1である、だが搭載する砲とエンジンがチェコに無いためエンジンと砲なしの車体を送ってもらい取り付けは此方でする事になったのである、元々譲の前世の世界ではチェコがドイツに併合されてしまったのでドイツ製の砲とエンジンを積んだこの戦車の名前は{ヘッツァー}と呼ばれるはずだったのだ、そして本来の性能とは若干違った物になった。


駆逐戦車ST-1


全長 7.3m


車体長 5.5m


全幅 2.7m


全高 2.2m


重量 18.8t(増加装甲無し)


速度 55キロ(増加装甲無し)


行動距離 200キロ


主砲 ボフォース75mm戦車砲 (45発)


装甲 車体前面上下 70mm

    側面       35mm

    後部       40mm

    底部       15mm

    側面増加装甲 10mm


エンジン ヤンマー製水冷6気筒ディーゼルエンジン350PS


乗員 4名


 砲はスウェーデンにあるボフォース社が以前ドイツのクルップと共同開発していた高射砲を転用した物である、ボフォースがビッカースの傘下にあるために調達できたのだ、エンジンは欧州に漁船と農業機械を売り込むためにヤンマーが進出したポーランドの工場で作られた物で本来は漁船用に開発された物であったが優秀なエンジンだったため超特大発艇にも採用されたエンジンである。エンジンの出力が上がったため装甲も厚く出来、履帯幅も広くして走破性を上げている、又車内も少し広くなり操縦しやすくなったのが一番大きいと思われる。


 こうして組み立てられた車体はさらにサイドに増加装甲を施して軍に引き渡され、直ちに戦地に向かうのであった。

     


ご意見・感想ありがとうございます。

ブックマーク・評価の方もしていただき感謝です。

あくまで娯楽的なものでありますので政治論とかはご返事できないかも…

読んでいただくと励みになります。

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