9話 譲(おれ)呼び出される
※話数その他間違えておりましたので修正しました 6/7
※11/22 修正
※3/14修正
俺は今ポーツマスに居る、今度はアメリカの方である。呼び出し人の名前は杉山のおっさんだ、どうやらあの書類の件だな。
あれを活用しているのには気が付いていた、日本海海戦までは歴史のままだったのだが樺太攻略辺りから変わってきて、講和全権が伊藤博文になっていたのには驚いた、本来は外務大臣の小村のはずだからだ。
おそらくウィッテとのマスコミへの対応合戦での敗北を重視したと見える。愛想よくマスコミ受けしたウィッテに対して小村は無愛想に機密を盾に喋らなかったので反感を買ってしまったのだ。
まあ元々伊藤博文の予定だったらしいからそこら辺は変えやすかったのかもな。
ここで呼び出されたのはあの書類を作成した張本人として呼ばれたんだろうな。採用されたのはいいんだが知りすぎている俺をこれからどうするのかが気になるなまあ有無を言わさず日本に召還されたわけじゃないから大丈夫だと思うが。
使節一行の泊まっているホテルに行きフロントで取次ぎを頼むと部屋に案内される、ドアをノックするとドアが開き若い男が顔を出した。
「平賀譲君か?」
「はい」
「すぐに入って」
俺が入ると廊下に誰も居ない事を確認してドアを閉める。応対した男は奥の応接室に案内してくれる、観察すると陸軍の中尉のようだ、日本人離れした彫りの深いイケメンである、うん、非イケメンとしてはうらやましいなんて思わないよホンとだよ。
「おお、来たか待ってたぞ」
応接室の中央の応接セットのソファには杉山のおっさんと別に四人座っているどう見ても知ってる人だな…順番に山縣有朋、伊藤博文、児玉源太郎、山本権兵衛だな。特命大使の伊藤博文以外は日本に居るはずの面子である。
唖然として突っ立っていた俺に伊藤博文が声を掛ける。
「まあ、突っ立つとらんで座りなさい」
失礼しますと敬礼をして名乗ってから席に着く。
「物怖じせんとは肝が据わっておるな」
山縣有朋が声を掛けてきた、どうやら観察してたらしい。
「いえ、杉山先生にお渡しした書類はご覧になったかと思いますが」
すでに歴史が変わっている、ここにこれだけの面子が集まっていることが証拠なんだが。
「奉天会戦も日本海海戦も書かれたとおりになったのでな、そこから少しいじってみたのだ、講和会議も相手の機先を制することが出来たからな」
児玉源太郎が嬉しそうに言う、樺太占領作戦の前倒しとウラジオストックを含む沿海州への侵攻(多分見せ掛けだろうが)はこの人の策だな、後、隣の権兵衛と組んで欧州への艦隊派遣も仕掛けたな。
「欧州への艦隊派遣の噂が凄い速さで流れたのですがあれも閣下の仕業で?」
「まあな、皇帝の方には明石君が知らせてくれたよ」
なるほど、流石に単なる戦術家ではないな、情報操作の方法を良く知っている。
「さて、回りくどいことは好かん、単刀直入に聞こうか、お主は何者だ、何を望む?」
ここで埒があかぬと山縣の爺さんが切り込んできた。
上等である、俺はあらかじめ用意していた言葉で彼らに説明した。
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「未来から意識だけがな…信じがたいが信じるほか無い様じゃな」
「そうですな、あの結果をみればそうせざるを得ません」
以外やこの人たちもう少し疑うかと思ったが直に信じてくれたな。
「信じる他あるまいよ、それだけ衝撃だったんじゃ」
「とりあえずこのことはここにおる者だけの秘密となるじゃろう」
「後は陛下位しか知らぬことになるな」
俺はというと日本に呼び戻されると思ったら今はイギリスに居たほうが良いということになった、俺が情報源だとばれないような工作をするらしい。
「連絡役はそこの者にやらせることになるからな」
さっき案内していたイケメンはエライさん以外で唯一俺の事を知る者として連絡や工作などを行う係りとの事だ。
最悪監禁か口封じされることも覚悟したがそれはなさそうで良かったよ。
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第三者視点
案内役に送られた平賀が退室すると児玉が山縣に声を掛ける。
「山縣さん、私に大命が下るように出来ませんか?」
「源太郎、お前それは…」
「桂ではこれから行う改革は実行できんでしょう、講和で賠償金が取れなかった責任を取り辞任してもらいましょう」
「やるのか?あれを?」
伊藤が心配そうに言う。
「ええ、やらなくてはいけません、この身が終わろうとも成し遂げねば」
「判った、何とかしてみよう、だが一人ではない、ここにおる皆が支えよう」
「ありがとうございます」
そして平賀譲がポーツマスを離れた直後に伊藤を除く者たちは密かに帰国するのであった。
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