座敷わらしは異世界で夢をみる
「はふ」
心地良い陽射しに眠くなるこの頃、日本の皆さんお元気でしょうか?
わたしこと、座敷わらしは只今遠く日本を離れ異世界で暮らしています。
何故、日本を離れたか。
単純です。
わたしの住んでいた家が、東京に住む持ち主の手により壊されたからですね。
家を壊して地方進出の大型施設に土地を売却するそうです。
今の持ち主は、わたしの住み着いていた家に一度も来たことがありません。
相続で受けとって早々に壊しやがりました。
東京に家の者が出て、祖父、父親と遠くにありながら守って来たというのに、手に入れたニートの自宅警備隊さんは売りやがりました。
仕方がないないので家を出たのですが、今や座敷わらしなど皆さん必要が無いようで、住む場所が見つからず。それならと異世界に旅立つ事にいたしました。
同じ地球だと、日本の情報に触れて寂しくなるのが怖かったからです。
ついでに、旅出つ際にニートさんには今までの恩を返して起きましたので、喜んでくれると思います。
座敷わらしとか、日本の妖怪って祟り神でもあるんですよね。
それで適当に異世界渡り、ブラブラしていたのですがコチラのモンスターさん達は話を聞いてくれません。
モンスターさんは妖怪ではないのでしょうか?
ゲームだと同じ人の敵になることもあると言うのに。
異世界の妖怪である、わたしは仕方無く、モンスターさん達と喧嘩しながら旅を続け。
遂に、素敵な屋敷を見つけました。
石造りの洋館。
異世界でも洋館と言って良いのかは知りませんが、森の奥にその館を見つけました。
人は住んでいません。
二階建ての屋敷の中はとても静かで、家具には埃避けの布がかかっています。
異世界に渡るときにかなりの力を使い、モンスターさんとの喧嘩で力を使ったのでノンビリ出来る場所が見つかったのは嬉しい限りです。
この屋敷には不思議な力がかかっており、モンスターさんは近づいても来ません。
魔法というものでしょう。
そう言えば神通力に似たようなモノがありましたね。アレは、妖怪を寄せ付けない作用でしたがね。
さて、居心地の良い屋敷を見つけて、季節が一巡りした頃でしょうか。
外の騒がしさに目を覚ますと、妖怪だって寝ますよ。
馬車が一台、屋敷の敷地に入って来ました。
馬車からは、青いドレスの少女が一人と侍女さんらしき人が降りて、御者さんと屋敷に荷物を運び入れています。
その後を少女が入りましたが、ここで侍女さんが泣き出しました。御者さんも沈痛な表情です。
少女は、自分よりも背丈のある侍女さんを抱きしめ、宥め、御者さんと一緒に送り出しました。
馬車が去り残されたのは少女一人。
少女は、我慢していたのでしょうか?
馬車が見えなくなった瞬間泣き崩れました。
どうしよう?どうする?
わたしは慌て、ついうっかり少女の前に出てしまいました。
キョトンとした表情の少女と、大慌てのわたし。
「あなた誰?」
う、不味いです。
わたし、完全に不法侵入の不審者です。
「ざ、座敷わらし」
通じるかーい!!
「ザザジキワラジ?」
草鞋ではありません。確かに足元は草鞋ですが、わらし、子供です。
「名前ない」
「そうなの?それは不便ね」
いえ、今、問題はソコではないと思います。
「ミィニア何てどうかしら」
名を貰ってしまいました!!
しかも、妖怪にあるまじき名前です。
「妹の名前なの」
まって、まってください、おまちください、まつでござる。
「妹は、私の五つ下で、貴方みたいに髪を肩で切り揃えていたわ。でも、病気で亡くなったのだけれど。生きていれば貴方くらいだから」
ですからねぇ、何故、話せますか?!
それに問題は解決していません。
「不法侵入者」
自分で自分を指差して云うのも何ですが、最大の問題が残っていますよ。
「あら、それもそうね。でも、別に構わないわよ。どうせこの屋敷は長い事使っていないし、本当なら使う予定もなかったのだから」
解決してしまいました。
「其れよりも掃除を手伝ってくれると助かるわ」
問題が解決してしまいましたので大人しく彼女を手伝いましょう。
そう言えば、彼女に名前知りません。
「何かしら」
彼女のドレスの裾を引っ張ります。
「名前、貴方の名前」
「あら、ふふふ、そう言えば自己紹介がまだでしたね。フェルエナっいうの」
「フェルエナ」
「フェルお姉ちゃんでもいいわよ」
「フェルお姉ちゃん?」
うひゃ!
抱きしめられました!!
何故?
何で触れるのですか!?
わたし、妖怪ですよ。
「フェルお姉ちゃん、また泣いている」
あ、魔力持っているのか。
魔法使えるのかな。
「あら、ふふふ、ミィニアに変な所を見せてしまったわね。さ、掃除を始めましょう」
フェルエナは誤魔化すように立ち上がりました。
彼女に何が起こったのでしょうか。心配ですが、今は彼女を手伝って掃除を始める事にしました。
フェルエナと暮らし始めて十日余り経ちました。
掃除したのは、寝室一つと厨房にお風呂。
食事は数日に一度、フェルエナが来た時に送ってきた馬車が運んで来ます。
侍女さんも来て必ず泣いています。
フェルエナが御者さんと少し話し、袋を貰います。
中は硬いパンと干し肉にチーズ。
フェルエナはどう見ても良い所のお嬢様なのに、この扱いは何なのでしょうか?
物凄く気になるので、正直、深入りするつもりはありませんでしたがさせてもらいます。
深夜、妖怪の本来の時間。
フェルエナは何時もうなされています。
「ごめんなさい」
フェルエナの夢の中に侵入します。
夢の侵入などは、座敷わらし本来の力では無いですが、毎夜、コレだけうなされていますいれば問題なく侵入出来るはずです。
『私ではありません!!ウソをつくな!!・・様、フェルエナ様は悪くありません、私が悪いのです!!・・は優しいな、それに比べ貴様は!!フェルエナ様、謝って下されば私はそれで!!ですから、やってもいない事は謝れません!!おのれ、この女狐め!!』
「へぇ~、ふぅ〜ん、そうか」
つまりは馬鹿が四人。いや、馬鹿三人とビッチかな。
まぁ、政敵に敗れたと言えば、それまでなのかも知れないけれどね。
「それなら、それでね」
座敷わらしとして出来ることはあるね。
「ね、ミィニアさん」
フェルエナを挟んで反対を見れば、オカッパ頭の女の子が一人。
わたしをこの屋敷に招き入れたであろう、フェルエナの本当の妹さん。
フェルエナの未来を予測していたのかな?
まぁ、いいや。
「馬鹿三人とビッチには、退場してもらいましょう」
そして、フェルエナには座敷わらしの祝福を上げるね。
「お嬢様!!」
朝早くから何台もの馬車が屋敷にやって来て、あの泣き虫侍女さんはやはり泣きながら出迎えたフェルエナに抱きついている。
「フェルエナ!」
「フェルちゃん!!」
フェルエナ似の少し老けた女性と太ちょのオジサンもかけてくる。
「お父様!!お母様!!」
「晴れたんだよ!君の疑いが!!」
フェルエナは両親に抱きしめられて、困惑している様子だね。
慌てるフェルエナも可愛い。
「晴れたとは?本当なのですか?」
「あぁ、あの馬鹿王子と取り巻きとビッチは、王家の宝物に手を出したばかりか、諌めようとした者に罪を擦り付けようとして失敗し国王陛下が直接調べられ。君の罪もビッチが丁稚上げた事が判明したんだよ」
「因みにビッチの家の不正も判明し、我が家に掛かっていました容疑も晴れましたのよ」
「ですので、お嬢様は晴れて自由の身です」
「だってさ」
屋根の上から眼下で繰り広げられているハッピーエンドを眺めている。
横に立つミィニアを見れば嬉しそうだ。
「さ、帰りましょう」
お母さんに手を取って貰いフェルエナは立ち上がる。
バイバイ、フェルお姉ちゃん。
「お待ちください!!連れて行きたい子がいるの」
おや?
「ミィニア!!ミィニア、出ていらっしゃい」
おぉ、でもね。
フェルエナ。
座敷わらしは家に付くんだよ。
「フェルエナ、ミィニアとはどう言うことだ?!」
「私と一緒に住んでいた女の子で、名前がないと言っていましたので、ミィニアの名前を上げたのです」
「浮浪者?孤児?」
失礼な。孤児はまだしも浮浪者とは。
妖怪だもん。
でも、ここでお別れ?!
「うきゃん!!」
何?
ミィニアに突き落とされた?!
「ミィニア!風よ!!」
フェルエナの優しい風の魔法が、わたしを包む。
「ミィニア、もうお転婆すぎよ!!」
「ほうこの子がフェルエナと一緒に住んでくれていたミィニアか、本当にミィニアに似ておるな」
お、おぉ?
オジサンに抱っこされるが、わたしは戸惑っていた。
どうして見えるの?
どうして触れるの?
フェルエナ以外に魔力なんて感じないのに!!
て、体があるよ!!
本物の体。
人の体。
あぁ!!もしかして!!
慌てて、屋根上のミィニアを見る。
「おれい、がんばってね。みぃにあ」
「あなた」
「うむ、ミィニアうちの娘に成りなさい」
「お父様、お母様」
妖怪が人間に体を与えられるなんて信じられないよ。
フェルエナたちに揉みくちゃにされながら、わたしは叫びたい。
どうすればいいの?
誰か、教えてよぉぉぉぉ!!!!